2026/02/19
総合商社の中でも“ザ・商社”と称されてきた三菱商事に異変が起きている。中西勝也社長の肝入りだった国内洋上風力発電の政府公募案件においては、想定以上の建設コスト上昇などを理由に2025年8月に撤退を表明した。
さらに26年3月期の純利益見通しは7000億円にとどまり、伊藤忠商事(9000億円)、三井物産(8200億円)の後塵を拝し、業界3位に転落する見通しだ。
そんな三菱商事は1月16日、米国でシェールガス事業を手掛けるAethon(エーソン)を子会社化することを明らかにした。同社の純有利子負債23億ドルの引き継ぎを含めた買収総額は約1.2兆円と、同社で過去最大の投資案件となる。
「エーソン社」は主に米テキサス州とルイジアナ州にまたがってシェールガス権益を保有しており、液化天然ガス(LNG)に換算すると年間約1500万トンの持ち分生産量を有する。この生産規模は全米10位で「日本の年間LNG輸入量の4分の1に匹敵」する巨大な権益だという。
「エーソン社」はメキシコ湾岸の産業集積地までのガスパイプラインの使用権を確保しており、三菱商事はここから欧州やアジア向けの輸出も検討している。
三菱商事は、25年4月に公表した経営戦略で「約3兆円以上の拡張・新規投資を計画する」と公表しており、このうちのかなりの部分を天然ガスに投入する決定を下したわけだ。
これまで同社は半世紀以上にわたり、エネルギー事業に携わってきた。ここにきて、LNGにさらに大きく舵を切った理由とは何だったのか。
天然ガスは高い収益性に加え、周辺事業へ広がる余地が大きいことが理由に挙げられるが、それに加え、「米企業」を選んだ理由は、以下の2点だ。
まず天然ガスは、輸送のためにマイナス162°Cまで冷却し液化してから輸送する必要があり、そのため天然ガスとLNG、また地域ごとに価格や市場が分かれている。三菱商事は安価で安定したアメリカの天然ガスを手に入れ、競争力を持つことで、付加価値創出を狙っているのが一つ。
さらに特筆すべきは、昨今のAI・データセンター急増による米国内の電力需要を取り込むなど、市況に応じて「米国内販売」か「輸出」かを最適に振り分けられるオプション(選択権)を自社で握ったことにある。
中西勝也社長は記者会見で、「ガスの生産から輸送・販売までを一貫体制で手掛ける『自社販売型』の案件」と強調し、27年度時点で営業収益キャッシュフロー2700億~3000億円、連結純利益700億~800億円が見込まれることを明らかにした。
しばらくは伊藤忠商事や三井物産に純利益で後塵を拝することになるが、巻き返しも視野に入る伸びが期待できそうだ。(梛野順三)
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