社会•事件
活動実態のない宗教法人が、脱税やマネーロンダリングなど犯罪に悪用されるケースが後を絶たない。全国に約18万ある宗教法人のうち、活動実態のない「不活動宗教法人」が2024年末で5000以上あるが、宗教法人は公益性の観点から税の優遇措置があり、売買やマネロンの対象になりがちなのだ。 特定の宗派や教団に属さない「単立宗教法人」で活動実態がない場合は、特に不正に利用される恐れが高く、約500法人に上るとされる。活動が続かない背景には、地域の人口減少や後継者不足など構造的な問題もあるが、不正対策は急務となっている。所管する文化庁は今後、不正利用の実態調査に乗り出す方針を固めた。 ■文化庁が不正利用の実態調査 ガイドライン策定へ 文化庁は今後の不正利用の調査結果を踏まえ、包括的な対策につなげるためのガイドラインを策定する見通しだという。 宗教法人の場合、寄付やお布施などの宗教行為によって得た収入は非課税だ。さらに、物品販売や駐車場運営など営利性のある収益事業にかかる税率も、一般企業よりも低く設定されている。 日本の活動実態のない宗教法人は世界的にも問題視されており、マネロン対策を担う国際組織「FATF(金融活動作業部会)」はかつて、宗教法人も含めた日本の非営利団体が、テロ資金供与に巻き込まれる可能性もあると指摘した。 不活動宗教法人は、犯罪の悪用のほかに外国資本に買われるリスクもある。文化庁が今後行う調査で、どのような実態が明らかになるのか。そして、対策に向けたガイドラインにどれほどの実効性を持たせていけるのか。文化庁の覚悟と本気度が試されている。 (桜田亮)
大阪に行った際に招待券をもらっていたので初めてバレーボールを観に行ってみた。会場は南海堺駅の近く、大浜だいしんアリーナ。対戦は現在7位のホーム新日鉄堺ブレーザーズが首位を独走中のサントリーサンバース大阪を迎える大阪決戦(3月5日)。 堺駅を降りてからグーグルマップに任せて15分ほど西に歩いたのだが、どうにも人がいない。信号待ちでも歩道橋にも大浜公園に入ってからもほんの数人しか人と出くわさない。開催日を間違えたのかなと不安になりつつもナビの言う通りに歩を進めると公演の一角が急に明るく照らされているのが目に入った。良かった、開催日は間違っていなかった。とはいえ、人がほとんどいないので会場内はガラガラなのではないかと不安になった。初めてのバレーボール観戦で客席がほんの数名だけのところに放り込まれると地獄だ。入場口を通過して体育館内に入ると驚いたことに超満員。立ち見の人たちもいるくらいだ。通路は立ち見の観客が連なっている状態。当然、客席も観客で埋め尽くされている。想定外の状況で呆気にとられたが気を取り直して観戦開始。 応援は入口で頂戴したハリセンを打ち鳴らすスタイル。サッカーや野球やバスケットボールに比べて少し地味で静かではあるがコートと客席が近いことからひしひしと臨場感が伝わってくる。応援のリズムは昔流行った湖池屋のCM「スコーン、スコーン、こいけやスコーン」と同じように「ゴー、ゴー、ブレイザーズ」とテンポよく繰り返す。同点に追いついたりすると「わっしょい、わっしょい」に変わったりもする。大阪対決とはいえブレイザーズの応援が会場の7割以上を占めている。この時はまだ知らなかったのだがサントリーサンバースは29連勝中だったそうだ。この日はブレイザーズの2名の助っ人外国人の活躍が目立った。特にマシューアンダーソン選手は見た目もすごい。初代スーパーマンのクリストファーリーブそっくりだ。見た目もプレイもスーパーマン級だったマシュー選手の活躍もあってブレイザーズがサンバースの30連勝を阻止した。ブレイザーズのユニフォームを着てスーパーマンに変身したマシュー選手がクリプトン星に帰ってしまわないことを祈ろう。(坂本雅彦)
2026.03.13
相次ぐ警察の不祥事の中でも、公権力の執行への信頼を失わせる悪質な事件といえるだろう。神奈川県警が交通違反の取締で約2年半にわたり不正を繰り返していたことが明らかになった。取締対象の車を覆面パトカーで追尾した際、距離を水増しして反則切符に記したり実況見分調書を立ち会わないまま作成したりしたなどとして、県警第2交通機動隊の7人が虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで書類送検されたのだ。 不正の中心だった元巡査部長は県警の調べに対し、「悪質な違反を取り締まって排除したかった」と釈明したが、違法な手続きが正当化されるはずはなく、言語道断の不正だ。「間違った正義感だった」と供述しているようだが、当然だろう。 今回の事件を巡り、2022年3月から2024年9月に神奈川県警が取り締まった約2700件の違反が取り消され、反則金約3400万円がドライバーらに返還される。 対象者は38都道府県に及び、各方面への影響は極めて大きい。対象の運転手にとっては、警察は信用できない「犯罪集団」にも映りかねない。 他県警で同様の不正はなかったのか。警察庁は全国的に厳格な調査を実施するべきだろう。今回の神奈川県警の不祥事によって警察不信は高まり、交通取り締まりに協力しないドライバーもでてきかねず、影響は甚大だ。 交通違反を取り締まる不正は過去にも起きており、神奈川県警の不正は氷山の一角ではないかという批判も噴出している。背景には、ノルマ主義があったとの指摘もあるが、ノルマを達成するために不正を正当化していいはずはない。 交通警察において最も重要なのは、事故抑止だろう。重大な事故につながるような悪質な運転こそ厳正に取り締まる必要がある。反則切符をでっちあげる暇があるなら、事故防止に向けたパトロールにでも精を出してほしい。 (桜田亮)
2026.03.12
故ジャニー喜田川氏による性加害や元SMAP中居正広氏の問題など、近年は様々な性絡みの不祥事が相次いで発覚している放送業界では、いまだにハラスメントに対する認識が浸透していないことの裏付けとも言えそうだ。東京大学大学院と一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」が放送業界のハラスメント実態について調査したところ、「性的な関係の誘い」を受けたとする回答が女性の中で約4割にも上った。「性的な冗談やからかい」については女性の約7割が経験したといい、業界全体の人権意識が大きく問われる事態だ。 中居氏による性加害事案を受け、フジテレビなどが設置した第三者委員会は調査報告書の中で、セクハラやパワハラなどハラスメントといった人権課題について、「メディア・エンターテインメント業界における構造的な課題」だと指摘した。個別企業の対策ではなく、業界全体で横断的な調査や対策が講じられていない点も、女性の人権を軽視するようなセクハラが横行している要因とみられる。 今回の東大大学院などによる調査は、2025年5月から今年1月まで、匿名のウェブ・メール方式で行われ、ハラスメントの被害経験や職場環境の実態などについて回答を募集した。その結果、放送局で勤務経験のある183人(女性119人、男性62人、その他2人)から回答を得ており、中には大手民放放送局やNHKも含まれ、フリーランスは約40人だったという。 回答結果によると、「性的な冗談やからかい」を受けたとする女性は84人(70.6%)、男性は20人(32.3%)。「不必要に身体を触られる」は女性53人(44.5%)、男性4人(6.4%)。「性的接待要員にあてがわれる」と回答したのは女性17人(14.2%)で、男性はゼロ人だった。 女性の1割は、性的な関係について「強要された」とも回答しており、ハラスメントが幅広く起きている実態に加えて、立場の弱いフリーランスの女性などが泣き寝入りせざるをえないような実態も浮き彫りとなっている。 放送業界全体で大きな改革が不可欠であり、各社が知恵を出し合いながら、実効性の高い対策を打ち出すことが急務だ。(桜田亮)
2026.03.11
1984年に滋賀県日野町で酒店経営の女性が殺害された「日野町事件」で、強盗殺人罪で無期懲役が確定した阪原弘さん(2011年に病死)について、最高裁が再審開始を決めた。戦後に死刑や無期懲役で確定した事件で、元被告の死後に裁判がやり直される「死後再審」は初めて。今後、大津地裁で再審公判が開かれ、無罪となる公算が高い。ただ、元被告は救済も名誉回復もされることなく服役中に死亡しており、検察や裁判所には二度と同様の事態を引き起こさないような対応が求められる。 ■警察が自白を強要か 阪原さんは事件発生から3年後に自白して逮捕され、公判では「警察に自白を強要された」と一貫して無罪を主張したが、1、2審と最高裁はいずれも有罪と判断。2000年に無期懲役が確定した。阪原さんは生前の2001年に再審を請求したが、服役中の2011年に75歳で病死している。 事件では、遺体の遺棄現場を案内する阪原さんの写真が有罪の決め手となったが、後にその写真に不自然な点があることが発覚。検察が開示した証拠のネガフィルムには、警察官が阪原さんを誘導したかのような画像が残っていたのだ。 ただ、ネガの存在が判明したのは、阪原さんの死亡後で、重要な証拠にもかかわらず、長年にわたり開示されてこなかった。早期に証拠が開示されていれば、もっと早く阪原さんの再審開始が決まり、生前に逆転無罪を勝ち取ることもできていただろう。 ■再審法改正に影響必至 今回の死後再審決定は、現在議論されている再審法改正に影響を与えるのは間違いないだろう。1966年の静岡県一家殺害事件など、他の再審請求事件でも、再審無罪に結びつく重大証拠の開示まで20~30年も要しており、速やかに証拠を開示する仕組みが不可欠なのは明らかといえる。 阪原さんが失った時間は帰ってこない。今後の再審で無罪となり、汚名がすすがれたとしても、無垢の人が「無期懲役囚」のまま死亡した現実は極めて重い。再審の迅速化に向けた制度改革は急務だ。 (桜田亮)
2026.03.10
百貨店業界を俯瞰すると大きくは「呉服屋系」と「電鉄系」に分かれる。そしてこの両者を比較すると総じて優勢「呉服屋系」とジリ貧「電鉄系」に色分けされる。呉服系の代表は堅調な業績で推移する高島屋だ。 高島屋の総額営業収益(旧会計基準の売上高相当)は、2020年2月期の9191億円から、コロナ禍の影響から翌年度には6809億円まで減少したが、その後回復し、25年2月期には17年ぶりに1兆円を突破した。同期には新宿店が初めて売上高1000億円を達成している。 同じく呉服屋系の三越伊勢丹ホールディングスも好調で、伊勢丹新宿本店の24年度売上高は前年比12.1%増の4212億円と単独店としてはトップの規模を誇る。 対する電鉄系百貨店の業績は芳しくない。小田急新宿店本館の跡地には、高さ260メートルの高層ビルが建つ予定だが、低層階に小田急百貨店が出店するかは未定となっている。出店しても大幅な規模縮小となるらしい。 そもそも小田急百貨店は他社ほど多店舗展開していないため閉店がさほど目立たないが、業績が悪化している。小田急電鉄の百貨店業売上高は15年度の1537億円から18年度には1428億円となり、20年度はコロナ禍で863億円まで落ち込んだ。 東急も23年に閉店した渋谷本店跡地には、百貨店は再出店せず、地上36階地下4階、高さ164.8㍍の複合施設が出現する予定だ。 西武百貨店は03年にそごうと合併し、09年から23年までの間、セブン&アイ・ホールディングス傘下で営業を続けたが、縮小の一途をたどり、地方や郊外で閉店が相次いだ。 電鉄系ではないが、そごうも同様に店舗を相次いで閉鎖。柏、八王子、川口、徳島店などが対象となった。そごう・西武は現在、米ファンドのフォートレス傘下にあり、西武池袋本店の不動産はヨドバシホールディングスに売り渡された。 呉服系は富裕層やインバウンド需要を取り込んだため業績悪化を免れることができた。そもそも呉服屋系は大都市圏に集中しており、一等地に店舗を構える高島屋や三越伊勢丹HDなどは集客に有利なことが奉功した。 勝者組は富裕層向けの強化を進めている。新宿高島屋では高級ブランドフロアの改装や、ゴルフ売場の拡大などを進めた。24年には富裕層の運用助言会社を買収した。三越伊勢丹HDは22年に「外商統括部」を新設。伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店で分かれていた外商部門を統一し、品ぞろえや営業体制を強化した。 一方で西武のように郊外が主軸の電鉄系は富裕層を取り込めず、中間層離れによって、業績が長期的に低迷した。 高島屋や三越伊勢丹、新生・西武池袋などは庶民にとっては知らない高級ブランドばかりになった。ハードルが高すぎクン!(梛野順三)
休憩時間も労働時間とみなした労働基準監督署の判断は極めて適切といえそうだ。 2018年に自殺したとされる玉川学園(東京)小学部の教諭・佐藤馨一さん(当時39歳)について、八王子労基署が原因を長時間労働などによる精神障害を発症したことだと認定し、労災を認めていたことが明らかになった。 ▼休憩時間を労働時間と判断 教職員の長時間労働が深刻な社会問題化する中で、今回の労災では、休憩時間を生徒の見守りにあたる労働時間と判断しており、他の類似事案に与える影響も想定される。 関係者などによると、佐藤さんはから小学1年生の担任を務めていたが、始業時刻前から働いたり自宅に持ち帰って残業したりする日々が常態化し、児童の見守りで休憩時間を十分に取れていなかった。さらに、保護者からのクレームにも悩まされて精神を患い、2018年7月に行方不明となった後、遺体で発見された。 当初、遺族による労災申請は認められなかったが、遺族が国を相手に起こした訴訟の中で、労基署が再調査した上で一転して労災を認定。休憩時間も児童の見守りで働いていたとみなし、時間外労働時間を上乗せする形で判断したという。 ▼持ち帰り残業も横行 教職員を巡っては、部活動や授業の準備、持ち帰り残業による長時間労働が横行しており、今回の労災認定はその一端が浮き彫りとなった形といえそうだ。 生徒たちに様々なことを学ばせる学校は、労働者の心身や人権を守れるような職場環境であるべきなのは言うまでもないだろう。民間企業で進む働き方改革を教育業界でも推進させるべく、政府は文部科学省を中心に長時間労働の抑止に向けた抜本的な対策を強化させる必要がある。 (桜田亮)
2026.03.08
SNSを通じて犯罪被害に巻き込まれる子どもが相次いでいる。警察庁のまとめでは、2025年にSNSをきっかけに犯罪被害に遭った小学生は、全国で167人と過去最多に上った。SNS利用の低年齢化が進む中、子どもたちが犯罪被害などに遭わないよう、利用制限する「フィルタリング」の活用も含め、保護者らによる適切な見守りが不可欠となっている。 警察庁によると、小学生で被害に遭った167人のうち11歳が最多の71人で、12歳が57人と続いた。罪種別では、不同意わいせつ罪や児童ポルノの被害が目立っている。2015年の被害児童数35人と比較すると、この10年間で約5倍にまで被害が増加しており、深刻な事態だ。 小学生の場合、インスタグラムやティックトックに加え、オンラインゲームをきっかけに相手から接触されるケースが多いという。身近に利用できるオンラインゲームには、犯罪リスクがあることを学校や家庭でしっかりと学ばせる必要があるだろう。 また、小学生も含めた18歳未満の子ども全体では、SNSを通じて犯罪被害に遭ったのは2025年、計1566人(前年比80人増)で、中学生が最多の758人、高校生は579人だった。 生成AI(人工知能)を悪用した子どもの性的偽画像などによる被害も相次いでおり、警察への相談や通報が増えている。 海外では、オーストラリアなどを始め、子どものSNS利用を規制する動きが広がっている。日本も犯罪やトラブルに歯止めがかからない状況が続くようであれば、国による本格的な規制に向けが議論も求められるだろう。 (桜田亮)
2026.03.07
ここに東北大学未来型医療創成センターのN特任教授による某団体から寄せられた質問状に対する回答書のコピーがある。この回答書は質問者に今年1月8日に記され発せられた。この回答書はA4の用紙18枚に及んでいる。そのどのページもびっしり文字が詰まっていて一見すると質問状に対して丁寧な回答をしている(但しそれは回答の内容の濃淡ではない)。ちなみに東北大学未来型医療創成センターというのは2018年3月に設立された指定国立大学(東北大学は2017年6月に指定されている)による未来型医療拠点として設立された研究拠点で同センターのHPによるとゲノム医学を中核とした研究を推進している組織だということだ。今、東北大学医学部において起きている問題の震源地はここである。 またN特任教授は同センターの特任教授という立場にある。N特任教授が寄せた自己紹介文がある。 東北大学大学院医学研究科にて博士号を取得し、大手製薬会社にて研究企画や新規技術評価、製品の企画、国内外の大学やベンチャー会社の目利きと連携推進を行う部門で働き、産学官によるいくつかのゲノム創薬スタートアップの企画や経営等にも携わり、その間MBA(ファイナンス専門職)を取得しました。その後東北大学から、首席URAとして新たな組織を立ち上げることを拝命し、大型研究予算の獲得やプロジェクトマネジメントの支援に携わっています。また、内閣府のCSTI事務局に上席フェローとして兼任し、科学技術・イノベーション基本計画の企画立案に従事しました。 この自己紹介文に〝その後東北大学から、主席URAとして新たな組織を立ち上げ雨ことを拝命し〟とあるが、ここで言われている主旨で立ち上がった組織が、東北大学未来型医療創成センターである。N特任教授は同センターにおいて非常に重要な地位にあることがわかる。ちなみにURAというのは、University Research Administratorの頭文字をとったもので、『大学などの研究組織において研究者および事務職員とともに、研究資源の導入促進、研究活動の企画・マネジメント、研究成果の活用促進を行って、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化を支える業務に従事する人材のこと』(※RA協議会HPより抜粋引用)だそうだ。 さて、肝心の質問状とそれに対するN特任教授の回答をこれから検証していくことにしよう。(ルポライター 廣田玉紀)
海上自衛隊が世界で初めて実戦配備したリチウムイオン電池搭載潜水艦は日本の防衛技術の到達点を象徴する存在である。なかでもおうりゅうは、従来の鉛蓄電池に代えて大容量のリチウムイオン電池を主蓄電池として採用した初の艦として、海外の専門家からも高い関心を集めた。 従来型の通常動力潜水艦は浮上してディーゼル発電機で充電する必要があり、潜航時間や行動の自由度に制約があった。これに対し、リチウムイオン電池はエネルギー密度と充電効率に優れ、急速充電が可能である。結果として潜航持続時間の延伸や静粛性の向上が期待され、対潜戦や監視任務における作戦柔軟性は飛躍的に高まる。こうした特性はインド太平洋の海洋安全保障環境が厳しさを増す中で日本にとって大きな戦略的意味を持つ。 海外の軍事専門誌や防衛アナリストはこの動きを「通常動力潜水艦の世代交代」と位置づける。原子力潜水艦を保有しない国々にとってリチウムイオン電池は能力向上の現実的な選択肢となり得るからだ。実際、韓国や欧州諸国でも同様の技術導入を視野に入れた研究開発が進むとされ日本の先行は国際的な技術競争を刺激している。 もっとも、評価は賛辞一色ではない。リチウムイオン電池は高性能である一方、発熱や発火リスクを伴う。軍事用途では極限環境下での安全性確保が絶対条件であり、厳格な品質管理と冗長設計が不可欠だ。日本が実戦配備に踏み切った背景には長年にわたる安全対策の蓄積と技術的裏付けがあるとみられるが、運用実績の積み重ねが国際的評価をさらに確かなものにするだろう。 日本のリチウムイオン潜水艦は単なる装備更新ではなく、通常動力潜水艦の概念そのものを進化させる試みである。世界が注視するのは、その性能だけでなく、安全性と持続的運用能力をいかに両立させるかだ。技術立国としての信頼を保ちつつ、地域の安定に資する防衛力整備を進められるか。リチウムイオン電池搭載潜水艦の技術開発は長年の試験研究に基づく技術的なブレイクスルーであり、たとえ設計や思想を他国が摸索したとしても容易く模造することはできないはずだ。2020年3月「おうりゅう」が就役して以来、2025年10月の「そうげい」まで既に7艦が就役している。日本が実戦配備し続けることが世界各国に及ぼす影響は少なくない。実戦配備できているのは日本だけ。オランダやインドは試験段階、欧米各国と中国は研究段階。韓国は自国での設計を模索中。 (坂本雅彦)
2026.03.06











