政治•経済
3月8日投開票の埼玉県議会議員補欠選挙が想定外の事態に陥っている。投票日の前日に国民民主党が公認候補者である西澤さとし氏の公認を取り消したことが混乱を招いた。既に期日前投票も実施されているし、ポスター掲示板に貼られた西澤氏のポスターも国民民主党公認と明記されたままである。南第二区に配布された選挙公報においても西澤氏は国民民主党の公認候補となっている。国民民主党が公認を取り消したことを知る術はSNSや党のHPなどに限定されている。これでは到底有権者に周知することはできない。案の定、3月8日に投票に行った有権者の多くが、西澤氏が国民民主党の公認候補者だと信じ切っていたことが取材にあたった報道機関によって明らかにされている。西澤氏の経歴を見ると国民民主党所属の参議院議員で元埼玉県知事である上田清司氏の公設秘書と明記されている。西澤氏は埼玉県内で圧倒的な知名度の高さを誇る国民民主党の上田清司の元秘書なのだから国民民主党の公認候補であることは当然のこと。国民民主党の支持者の多くは疑うことなく西澤氏に投票したことだろう。西澤氏が公認を取り消されたのは投票日の前日であるからそれまでの選挙運動は国民民主党の候補者として行っている。 結果的に西澤氏は自民党候補に次ぐ24594票(得票率29.7%)を獲得し当選してしまった。この結果を受けて西澤氏は翌日に議員辞職を表明している。国民民主党は西澤氏を公認するにあたり候補者選定に影響する重要な事実を隠ぺいしたことを理由に公認を取り消したとしている。重要な事実とは2018年に西澤氏が児童福祉法違反容疑で神奈川県警に逮捕された件を指す。(https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/39835?page=1#)西澤氏は事件から7年が経過し刑の効力が失われており履歴書に前科を書く義務はないと弁解している。だが、その結果、国民民主党は何も知らずに公認し、その後、事件を知る多くの人たちから党に情報が寄せられ公認を取り消すこととなり、当該選挙に著しく混乱を招いている。SNSやAIが普及した昨今では義務はなくても重要な情報を隠し通せる可能性は低い。 国民民主党の公認候補者の選定には多くの有権者が疑義を持ちつつある。2024年には東京第15区の公認候補者の高橋まり氏の公認を取り消し、後日、高橋氏は自ら命を絶っている。2024年の衆院選で大阪第8区から立候補し国民民主党の比例枠で復活当選した平岩征樹氏は偽名で不倫していたことが明らかとなり離党している。2025年7月の衆院選で比例南関東で当選した岡野純子議員は公選法違反容疑で書類送検されている。この岡野議員にパワハラを受けたと訴えて国民民主党千葉県連所属の多くの地方議員が一斉に離党している。最近では2月に行われた衆院選の東京第7区から立候補した国民民主党公認の入江伸子氏が公選法違反(買収)で逮捕されるに至っている。そういえば党首の玉木雄一郎氏本人も2024年の衆院選直後に不倫が発覚して役職停止3か月の処分を受けている。あまりにも問題発覚が多いことから国民民主党は今一度ガバナンスを再考する必要があろう。一部の幹部たちが自身の想いのままに判断する体制になってはいないだろうか。 (坂本雅彦)
2026.03.15
米軍とイスラエル軍による攻撃でイランの最高指導者ハメネイ師が死亡し、後継者に任命されたのが、ハメネイ師の次男、モジタバ・ハメネイ師だ。トランプ大統領は彼を認めず無条件降伏を要求した。さらにベネズエラのように最高指導者はアメリカの承認が必要だと豪語。いまだ解決の糸口は見えていない。前回石油をめぐる問題に簡単に触れたが、イスラエルとの間に根強い対立が続いていたことも原因の一つだ。今回はそのイスラエルとの問題について語っていく。 直近でのいざこざは、ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏がイスラエルによって暗殺されたことに端を発する。ハメネイ師はハニヤ氏と親しかったため、「必ず復讐する」と語っていた。ハマスはイスラエルから見るとテロリストであるが、パレスチナにとってはイスラエルの攻撃に抵抗しているため、支持する人も少なからずいた。イスラエルからするとハメネイ師はハマスを支援する敵だということになる。 しかし、イスラエルは以前からパレスチナを攻撃し、領土を拡大してきたので、ハマスは口実にすぎず、自分たちの国を建国することが目的であったことはその歴史から明らかだ。もちろんその建国に対する熱い思いは迫害から逃れるための希望からきている。ナチスのホロコーストだけでなく、「ポグロム」という虐殺を体験している。 こうした迫害に耐えてやっと自分たちの国ができると安堵したユダヤ人。彼らの最終目的は約束の地「カナン」に神殿を再建することである。ところが再建の地とされる「神殿の丘」には、現在イスラム教の重要な聖地「岩のドーム」が存在するため、神殿再建は困難な状況だ。イスラエルにとってイスラム教の国、イランは自分たちの妨害者であり、異端者だ。そのため、イスラエルの神のために異端者を殺害することはユダヤ教的には正義である。彼らにとってこの戦いはハルマゲドンそのものなのだ。次回、ガザ地区をめぐる問題を掘り下げていきたいと思う。(早見慶子)
2026.03.14
2026.03.14
中東の要衝、オマーンが中国による経済的侵略の最前線と化している事実は、国際社会におけるチャイナリスクの新たな死角となっている。オマーンは伝統的に親欧米の外交姿勢を保ち、ホルムズ海峡の出口を抑える地政学的な重要性を有してきた。しかし近年、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の荒波がこの静かな国を飲み込みつつある。その象徴的な舞台が、アラビア海に面したドゥクム経済特区である。 中国はドゥクムにおける工業団地建設に対し、100億ドルを超える巨額投資を約束し、港湾整備やエネルギーインフラの主導権を握ろうとしている。一見すると、石油依存からの脱却を目指すオマーンへの善意の支援に見えるが、その裏には極めて戦略的な意図が隠されている。中国にとってドゥクムは、インド洋における「真珠の首飾り」戦略を補完する軍民両用の拠点となり得る場所であり、米軍も利用するこの要衝に食い込むことは、中東における米国の影響力を根底から揺さぶることを意味する。 この経済的浸透がもたらす最大の懸念は、いわゆる「債務の罠」による国家主権の侵害である。オマーンは原油価格の変動に脆弱な経済構造を持ち、財政難に直面する局面も少なくない。そこにつけ込む形で提供される中国の融資は、返済が滞ればインフラの運営権を長期にわたって譲渡せざるを得なくなるリスクを孕んでいる。スリランカのハンバントタ港が中国に99年間貸与された前例は、決して対岸の火事ではない。経済的な依存が深まれば、外交や安全保障においても中国の意向を無視できなくなり、国家の意思決定が実質的に北京に支配される経済的侵略が完遂されることになる。 さらに、中国の進出は現地の労働市場や産業構造にも歪みをもたらしている。中国企業によるプロジェクトは、資材から労働力に至るまで自国調達で完結する傾向が強く、オマーン国内への技術移転や雇用創出の恩恵は限定的だ。むしろ、安価な中国製品の流入とインフラ支配により、地場産業が育つ機会が奪われ、中国なしでは国が立ち行かなくなる構造的な従属状態が作り出されている。今後の動向が懸念される。 私たちは、目に見える軍事的衝突がないからといって、この事態を看過してはならない。チャイナリスクの本質は、経済という柔らかな手段を用いて他国の喉元を締め上げる、その狡猾な浸透力にある。オマーンが直面している危機は、中東全体の安定を脅かすだけでなく、エネルギー安全保障を通じて日本を含む世界経済に直撃する可能性を秘めている。今こそ国際社会は、この「死角」に光を当て、経済協力の名を借りた主権侵害に対して厳しい監視の目を向けるべきである。 (ジョワキン)
2026.03.14
活動実態のない宗教法人が、脱税やマネーロンダリングなど犯罪に悪用されるケースが後を絶たない。全国に約18万ある宗教法人のうち、活動実態のない「不活動宗教法人」が2024年末で5000以上あるが、宗教法人は公益性の観点から税の優遇措置があり、売買やマネロンの対象になりがちなのだ。 特定の宗派や教団に属さない「単立宗教法人」で活動実態がない場合は、特に不正に利用される恐れが高く、約500法人に上るとされる。活動が続かない背景には、地域の人口減少や後継者不足など構造的な問題もあるが、不正対策は急務となっている。所管する文化庁は今後、不正利用の実態調査に乗り出す方針を固めた。 ■文化庁が不正利用の実態調査 ガイドライン策定へ 文化庁は今後の不正利用の調査結果を踏まえ、包括的な対策につなげるためのガイドラインを策定する見通しだという。 宗教法人の場合、寄付やお布施などの宗教行為によって得た収入は非課税だ。さらに、物品販売や駐車場運営など営利性のある収益事業にかかる税率も、一般企業よりも低く設定されている。 日本の活動実態のない宗教法人は世界的にも問題視されており、マネロン対策を担う国際組織「FATF(金融活動作業部会)」はかつて、宗教法人も含めた日本の非営利団体が、テロ資金供与に巻き込まれる可能性もあると指摘した。 不活動宗教法人は、犯罪の悪用のほかに外国資本に買われるリスクもある。文化庁が今後行う調査で、どのような実態が明らかになるのか。そして、対策に向けたガイドラインにどれほどの実効性を持たせていけるのか。文化庁の覚悟と本気度が試されている。 (桜田亮)
今日、世界はトランプ大統領による「力による平和」がもたらす、かつてない激震に見舞われている。1月に電撃的に実行されたベネズエラへの軍事介入とマドゥロ政権の事実上の解体に続き、2月28日、米国とイスラエルはイランへの大規模な空爆作戦「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」を断行した。この電光石火の攻撃により、長年イランの絶対権力者として君臨してきた最高指導者アリ・ハメネイ師が死亡したという報は、単なる一国の大統領の死を超え、第二次世界大戦後に築き上げられた国際秩序の終焉と、剥き出しの覇権主義への回帰を象徴する歴史的転換点となった。 トランプ政権が掲げる、敵対勢力を対話ではなく物理的破壊によって屈服させる弱肉強食の外交姿勢は、国際法の枠組みや同盟諸国との協調を軽視し、自国の利益と圧倒的な軍事力を直結させる極めて危うい賭けである。ベネズエラでの成功に味を占めたワシントンは、次なる標的として中東の火薬庫であるイランを選んだ。トランプ氏はハメネイ師の死を「イラン国民が抑圧から解放され、祖国を取り戻すチャンスだ」と称え、テロ支援国家の心臓部を撃ち抜いたことを自身の偉大な功績として喧伝している。しかし、その背後にあるのは、米国内での支持率低迷や、経済政策を巡る司法との対立といった内政上の苦境を、劇的な対外勝利によって塗り替えようとする冷徹な政治計算に他ならない。 現在、ハメネイ師を失ったイラン国内は、建国以来最大の混乱に陥っている。首都テヘランでは軍の一部が蜂起し、最高指導者の次男であるモジタバ師を中心とした体制維持派と、混乱に乗じて自由を求める民主化勢力が衝突を繰り返している。トランプ政権はこの混沌を「民主化への産みの苦しみ」と呼び、親米政権の樹立に向けた工作を加速させているが、指導部を失った巨大な軍事国家が予測不能な暴走を始めるリスクは無視できない。中東全域に展開する親イラン武装組織による報復テロや、原油供給網の遮断、さらには核開発施設の暴発といった懸念が、世界経済を暗雲のように覆っている。 この一連の動きは、かつて機能していた多国間主義が完全に形骸化し、強者が弱者を食らう「ジャングルの法則」が国際政治の表舞台に復帰したことを示唆している。トランプ大統領は「目標が達成されるまで攻撃を緩めることはない」と宣言し、次はどの国家が標的になるのかという恐怖を世界に植え付けている。暴力による一方的な現状変更が、果たして真の安定をもたらすのか、あるいはさらなる憎しみの連鎖と混沌の序章となるのか。ベネズエラ、そしてイラン。トランプ氏が仕掛けるこの「弱肉強食のチェス」は、今後世界をいっそう不安定なものにするだろう。 (ジョワキン)
2026.03.13
中国共産党は軟弱な日本・保守勢力ごときに対処できる相手ではない。元官房副長官補の兼原信克氏と前駐中国大使の垂秀夫氏との共著『中国共産党が語れない日中近現代史』(新潮新書)によると、台湾有事に関して中国側の侵攻政策は3つに分けられているという。1「武力侵攻」、2「平和統一」、3「グレー作戦」だ。 3は海上封鎖やサイバー攻撃などが想定されるが、最も懸念されるのは、2の平和を装う「平和統一」で、これはザックリ言うと「香港方式」。スパイ工作活動によって台湾を内部から崩壊させるステルス侵略であり、もっとも怖い統一だ。 台湾が相対するのは中国・人民解放軍による武力侵攻だけではない。1万人の「台湾ヤクザ」という厄介な存在を内包しているという難儀な問題を抱えている。 中国共産党は台湾ヤクザ、とくに日本にも進出していた「竹聯幇(ちくれんほう)」を統一戦線活動に取り込み、台湾の民主主義制度を弱体化させる工作に利用していることは広く知られている。 昨年、台湾のテレビチャンネル「民視讃分」が、台湾における「第5列」の活動を制作したが、なかでも「白狼」と呼ばれる張安楽にインタビューし注目を浴びた。 「竹聯幇」の幹部張安楽は、台湾における「中国統一促進党(CUPP)」という政党の創設者でもある。CUPPは、香港の自由民主活動家が台湾に応援に駆け付けた時に暴力で妨害したことでも有名だ。 CPUUは、「一国二制度の下で、中華人民共和国と台湾は平和的統一し、共存しよう」と呼び掛けている。このような香港が陥ったワナに共鳴する台湾人が実に3万人もいる。 また中国共産党は過去より、台湾の三合会(中国の秘密結社)を統一戦線に組み込み、統一に向けた草の根の支持を広げる工作を行ってきた。 台湾の三合会は、中台統一の政策を追求するために、頼清徳総統政権を弱体化させ、政権に内部圧力をかけようとした。頼総統は、2025年3月の国家安全保障に関する演説で、中国共産党による「内部から分裂、破壊、転覆」の取り組みのリストにこれら犯罪組織を挙げている。 台湾では中国のスパイ摘発が、昨春にも報じられ、総督府関係者、外交部長(外相)秘書官、民進党(与党=反中)事務局や立法院事務局などの職員が摘発された。現在も70件前後のスパイ関連裁判が進行中だという。 日本でもスパイ防止法制定を求める声が上がっている。だが、これを阻止する動きもある。阻止したいのはスパイ自身か、その賛同者であることは明白だ。だから先の総選挙では、スパイ防止法制定を阻止しようとする勢力は一掃された。国民はもう平和を装い、外国勢力を招き入れる左翼のプロパガンダには騙されなくなったのだ。(梛野順三)
2026.03.12
近年、保守的な主張を前面に出した政党の躍進が顕著である。参政党や日本保守党がそれにあたる。かつては自民党が保守的な政党の代表格のような印象であったが400人以上も国会議員を抱える大政党ともなると左寄りの議員も現れる。石破茂氏や岸田文雄氏や河野太郎氏らとその周辺にいる議員は紛れもなくリベラルと呼ばれる勢力だ。自民党左派による誤った歴史観や貨幣観、地政観によってちぐはぐな国家運営を繰り返してきたことが国民にとってフラストレーションとなっていたのだろう。そのストレスのはけ口となっていたのが参政党や日本保守党であったが、世論に押される形で遂に自民党内でも左派を抑える勢力が生まれた。それが高市早苗である。考えてみれば、保守的な与党としての自民党、それに対する中道改革連合、れいわ新選組、共産党などの野党が存在する形が国民にもわかりやすいし政治的にも進めやすいはず。参政党や国民民主党、日本維新の会、日本保守党などは与党の補完勢力にしか過ぎないのかもしれない。そうだとすればあまり存在意義がない。 さて、保守的な政党の多くが外国人の受け入れ、つまり移民を抑制する、もしくは厳格化する政策を掲げている。確かにEU諸国をはじめ多くの移民を受け入れ来た国は治安の悪化やナショナリズムの低下、社会保障の負担増など深刻な状況を招いている。日本は特定技能制度などを用いて実質的に多くの移民を受け入れてきたが欧州ほどの深刻な状態には今のところなっていない。経済界や産業界からは人手不足や賃金高騰などの理由で移民の受け入れ拡大を与党は要請されている。自民党は主要支持団体である経団連の意向を無視することは容易ではない。そこで気になっていたことを調べてみた。日本は少子高齢化が進み、労働力が減少している状況にあるのは紛れもない事実だが、労働力を外国人で補わなければこの国は本当に行き詰ってしまうのだろうか。少子化が進む国は世界に数多ある。少子化が進んでいるにも関わらず移民を受け入れることなく経済成長を遂げている国はないのか。実はけっこうあるようだ。 代表的な国が台湾である。台湾は移民に極めて厳格で実質的に受け入れていない。出生率は1.0前後。それでも実質的な経済成長を維持している。その原動力となっているのが半導体(TSMC)を中核とする圧倒的な産業集中と高度技術に特化した超高付加価値モデルの構築にある。労働力の量ではなく技術独占力で稼ぐ構造が台湾の経済成長を支えている。 もうひとつはお隣の韓国である。出生率は世界最低水準。移民を完全に排除しているわけではないが、社会として受け入れには消極的である。比較的排外的であるにも関わらず経済成長を維持できているのはIT業界の成長にある。韓国では電子機器やIT事業が効率的かつ高収益を生んでいる。 移民問題について日本の姿勢は決して定まっていない。来年からは外国人労働者が転職したり家族の呼び寄せが可能になる育成就労制度が新たに始まる。一方、一部の地域で外国人による治安悪化が懸念されたり、外国人コミュニティと日本人との間でのトラブルも頻発している。 減少した労働力は外国人で補うしかないのだろうか。日本の経済や産業の得意分野を特定し特化して革新的な生産性の向上を生むことはできないのだろうか。人手不足で困っている今こそ技術革新が生まれる好機でもある。 (坂本雅彦)
2026.03.11
2026年3月現在、中東情勢はイラン指導層を標的とした大規模な軍事攻撃や、それに伴う地域全域への戦火の拡大により、かつてない激動のさなかにある。この深刻な事態に対し、中国は「責任ある大国」としての外交的地位の確立と、自国の経済的利益の保護という二つの側面から、極めて計算高いスタンスを貫いている。 中国政府は、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動に対し、一貫して「主権の侵害」であるとして強い非難を表明している。王毅外相は、サウジアラビアやイラン、さらには欧州諸国の外相と相次いで電話会談を行い、いかなる理由があろうとも民間人を巻き込む無差別な武力行使は受け入れられないと強調した。中国にとって、中東の安定は単なる平和への願いではなく、国家戦略である「一帯一路」構想の要所を守るための必須条件である。そのため、軍事行動の即時停止と対話による解決を強く求め、中東問題に関する特別特使を現地に派遣するなど、調停者としてのプレゼンスを急速に高めている。 しかし、中国の動向を読み解く上で欠かせないのが、冷徹な経済的リアリズムである。中国はイラン産原油の最大の買い手であり、ホルムズ海峡の封鎖やエネルギーインフラの破壊は、自国の経済成長に直結する。特に、AI開発のためのデータセンター増設に伴う電力需要が急増している現在の中国にとって、中東からのエネルギー供給の途絶は致命傷になりかねない。興味深いことに、中国はイランへの政治的支援を口にする一方で、実際の行動においてはサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸諸国との連携を強化している。これは、イランの既存の権力構造が揺らぐ中で、リスクを分散させ、どの勢力が台頭しても自国のエネルギー調達ルートを確保しておこうとする全方位外交の表れといえる。 さらに、中国はこの混乱を米国のリソースを枯渇させる絶好の機会とも捉えている。米国が中東の泥沼に足を取られ、高価なミサイルや弾薬を消費し続けることは、米国の視線がアジア太平洋地域から逸れることを意味する。中国のメディアやシンクタンクからは、米国の軍事力が中東という「二次的な劇場」で消耗されることを歓迎するような論調も見え隠れする。 中国は現在の中東情勢を、自国の外交的影響力を誇示する舞台として活用しつつ、実利面では最大限の自制を保っている。米国を「混乱の元凶」として非難し、自らを「平和の推進者」と定義することで、グローバルサウス諸国からの支持を取り付ける狙いがある。だが、その根底にあるのは、戦火が自国のエネルギー安全保障を脅かさない範囲で、米国が疲弊していくのを静かに見守るという、極めて戦略的な静観の姿勢である。 (ジョワキン)
2026.03.10
百貨店業界を俯瞰すると大きくは「呉服屋系」と「電鉄系」に分かれる。そしてこの両者を比較すると総じて優勢「呉服屋系」とジリ貧「電鉄系」に色分けされる。呉服系の代表は堅調な業績で推移する高島屋だ。 高島屋の総額営業収益(旧会計基準の売上高相当)は、2020年2月期の9191億円から、コロナ禍の影響から翌年度には6809億円まで減少したが、その後回復し、25年2月期には17年ぶりに1兆円を突破した。同期には新宿店が初めて売上高1000億円を達成している。 同じく呉服屋系の三越伊勢丹ホールディングスも好調で、伊勢丹新宿本店の24年度売上高は前年比12.1%増の4212億円と単独店としてはトップの規模を誇る。 対する電鉄系百貨店の業績は芳しくない。小田急新宿店本館の跡地には、高さ260メートルの高層ビルが建つ予定だが、低層階に小田急百貨店が出店するかは未定となっている。出店しても大幅な規模縮小となるらしい。 そもそも小田急百貨店は他社ほど多店舗展開していないため閉店がさほど目立たないが、業績が悪化している。小田急電鉄の百貨店業売上高は15年度の1537億円から18年度には1428億円となり、20年度はコロナ禍で863億円まで落ち込んだ。 東急も23年に閉店した渋谷本店跡地には、百貨店は再出店せず、地上36階地下4階、高さ164.8㍍の複合施設が出現する予定だ。 西武百貨店は03年にそごうと合併し、09年から23年までの間、セブン&アイ・ホールディングス傘下で営業を続けたが、縮小の一途をたどり、地方や郊外で閉店が相次いだ。 電鉄系ではないが、そごうも同様に店舗を相次いで閉鎖。柏、八王子、川口、徳島店などが対象となった。そごう・西武は現在、米ファンドのフォートレス傘下にあり、西武池袋本店の不動産はヨドバシホールディングスに売り渡された。 呉服系は富裕層やインバウンド需要を取り込んだため業績悪化を免れることができた。そもそも呉服屋系は大都市圏に集中しており、一等地に店舗を構える高島屋や三越伊勢丹HDなどは集客に有利なことが奉功した。 勝者組は富裕層向けの強化を進めている。新宿高島屋では高級ブランドフロアの改装や、ゴルフ売場の拡大などを進めた。24年には富裕層の運用助言会社を買収した。三越伊勢丹HDは22年に「外商統括部」を新設。伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店で分かれていた外商部門を統一し、品ぞろえや営業体制を強化した。 一方で西武のように郊外が主軸の電鉄系は富裕層を取り込めず、中間層離れによって、業績が長期的に低迷した。 高島屋や三越伊勢丹、新生・西武池袋などは庶民にとっては知らない高級ブランドばかりになった。ハードルが高すぎクン!(梛野順三)










