政治•経済

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分裂するアメリカの保守派とトランプ後のアメリカ
分裂するアメリカの保守派とトランプ後のアメリカ

 1月にアメリカの世論調査は、トランプ政権の支持率が過去最低を記録したと伝えており、支持率と不支持率の差が広がり、このままでは11月の中間選挙で共和党の大敗が予想されている。   トランプの支持者には、Qアノンのような極右的な陰謀論者が多く存在する。彼らは、トランプを米国の政治家やメディアを操っている悪の組織『ディープ・ステート』を倒す為に神から遣わされた救世主だと信じてきたのだ。    ところが、セレブ相手に少女買春組織を運営、少女への性的暴行や人身売買容疑で逮捕され、拘置所内で謎の自死を遂げたジェフリー・エプスタイン事件の記録『エプスタイン・ファイル』に対するトランプ政権の不明瞭な対応が、トランプの岩盤支持層MAGA派を動揺させ、トランプ政権に疑義を挟む者が増えている。    またエプスタインがユダヤ系だったことから、反ユダヤ感情やユダヤ陰謀論が、アメリカの保守派に広がりつつある。ディープ・ステートは、ユダヤ人に操られた政治家やメディアのことであり、トランプもまた、その片割れだと思われたのだ。    親イスラエルとされるアメリカのキリスト教右派も、最初からユダヤ人に好意的だったわけではなかった。アメリカのキリスト教徒にも、ヨーロッパのキリスト教徒と同様に根強い反ユダヤ感情があったのだ。    ウッドロウ・ウィルソンが大統領だった1915年8月16日、白人少女のレイプ殺人事件で有罪判決を受けたユダヤ人が減刑されたのに腹を立てた暴徒が、刑務所から後にえん罪とされた被疑者を拉致してリンチした「レオ・フランク事件」が起きた。同事件は、反ユダヤ主義に対抗する「名誉毀損防止同盟」(ADL)が創立される契機となっている。   白人少女のレイプ殺人容疑で裁かれたユダヤ系アメリカ人・レオ・フランク    アメリカ人の親イスラエル感情は、ユダヤ系メディアの宣伝活動の賜だった。イスラエル政府の支援で映画『エクソダス』(Exodus)が1960年に制作され、ユダヤ人は「自由と独立のために戦う勇敢な市民」、イスラエルは「ホロコーストの惨禍から不死鳥のように蘇ったリベラルな民主国家」のイメージを広めた。 映画「栄光への脱出」(1960)    だが、ガザの惨状や、ヨルダン川西岸のパレスチナ人の土地を浸食する入植者の存在が認識されるようになった結果、そうしたイメージは修正されつつある。イスラエルは、リベラルな民主国家から、アパルトヘイト(人種隔離・差別政策)国家のように見られるようになった。   トランプの政策に大きな影響を与えるユダヤ系のスティーブン・ミラーが、白人至上主義に同調し、国際法よりも弱肉強食の論理を主張するのは、世界が弱肉強食のルールで支配されれば、パレスチナ問題も目立たなくなるからだろう。    だが、トランプ政権には、大統領就任式でナチス式敬礼をして物議を醸したイーロン・マスク元大統領上級顧問や、副大統領のジェームズ・ヴァンスのように、ユダヤ系に警戒心を持つ者もいる。   彼らをまとめているのがトランプだが、トランプ後にアメリカの保守派が分裂すれば、アメリカの政治は今以上に予測の付かない情勢になる。

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2026.01.26

トランプにグリーンランドの買収を勧めた人物
トランプにグリーンランドの買収を勧めた人物

「グリーンランドをアメリカ領にするから売却しろ」 NATO加盟国のデンマークに強談判するバンス副大統領やルビオ国務長官らトランプ政権の面々。アメリカ史に名を残したいトランプ大統領の個人的野心とされているが、トランプにグリーンランド領有を勧めてきた人物がいる。    それがトランプの古くからの友人で、支援者でもあるロナルド・ローダー氏。1944年2月26日に化粧品メーカーのエスティ・ローダー社の創立者であるユダヤ系実業家エスティ・ローダーの息子として生まれたロナルド・ローダーは、美術品収集家として名高く、2007年から『世界ユダヤ人会議』の会長、1989年にニューヨーク市長選挙に出馬するなど政治活動家でもある。    なぜ、ローダーがトランプにグリーンランド領有を勧めたのか? その理由として希土類等の地下資源の存在や、軍事的重要性が挙げられているが、どれも決定的な要因とは言えないようだ。  西側諸国の一員であるデンマークとは、アメリカは平和的な交渉による資源開発は可能だし、トランプが理由としてあげた安全保障面も、ウクライナとの戦争で手一杯のロシアは、グリーンランドに目を向ける余裕などないし、中国も北大西洋のグリーンランドにまで軍事的に進出する計画はないだろう。    ちなみにセリウム(Ce)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)などの元素が、髪の成長促進、フケの防止に利用され、特にセリウムは、その特性から日焼け止め化粧品の原料になる。しかし、だからといって化粧品メーカーを経営するロナルド・ローダーがグリーンランドを必要とするというのは無理がある。   そこで囁かれているのが、2007年6月からローダーが会長を務めてきた世界ユダヤ人会議やシオニズム運動との関係である。彼はイスラエルの為にグリーンランドをアメリカ領にしたいのではないか、というのだ。   約1千万人のイスラエル人口のうちユダヤ系は74%、200万人余は1948年の独立戦争後もイスラエルに残ったパレスチナ系のイスラム教徒と、キリスト教徒やドゥルーズ教徒である。これにガザの200万人とヨルダン川西岸地区の300万人余のパレスチナ人を加えれば、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は拮抗しており、出産率からパレスチナ人が将来多数派になると見込まれる。ガザやヨルダン川西岸地区をイスラエル領に編入した場合、そこに住む500万人余のパレスチナ人に選挙権を与えたのでは、イスラエルはユダヤ国家からパレスチナ国家になってしまうのだ。   それ故、ネタニヤフ政権を支持するイスラエルの右派は、パレスチナの土地は必要としても住人は必要としないとする。しかし、500万人余のパレスチナ人を強制移住させる土地がない。そこでグリーンランドが目をつけられたのではないか、と言われているのだ。   だが、グリーンランドにパレスチナ人を追放するなど、実現不可能な計画であることは一目瞭然だろう。グリーンランドは日本の6倍近い218万平方キロの広さがあるが、島全体の8割は厚い氷床に覆われる。近年の温暖化で、氷が溶けて陸地が増えているとは言え、本来の居住人口が6万人足らずのグリーンランドに、数百万人のパレスチナ人を移住させるなど、無理がある。  ヨーロッパのユダヤ人をアフリカのフランス植民地に追放しようとしたナチスの『マダガスカル計画』よりも荒唐無稽な案と言えよう。   トランプがグリーンランド領有を主張すればするほど、NATO加盟国とアメリカの亀裂は深まる。それで利益を得るのは、中国やロシアであり、ガザの人道危機やヨルダン川西岸の入植地問題が注目されずに済む、イスラエルのネタニヤフ政権だ。    世界ユダヤ人会議とローダーは、ナチスに殺されたユダヤ人財産の返還訴訟をスイス銀行に提訴したり、バーニー・エクレストンF1会長に辞任を求めるなど、反ユダヤ主義の動きに目を光らせる。このため欧米メディアでは、彼を非難することはタブーとなっている。   ちなみにデンマークは、第2次大戦のナチス占領時代に国内に住むユダヤ人を逃がしたことで知られる。有名な『アンネの日記』のオランダでユダヤ人の7割以上がホロコーストの犠牲になったのに対し、デンマークではホロコーストの犠牲者数は極めて少なかった。   ユダヤ系のローダーが、デンマークからグリーンランドを奪うのは、日本的表現なら「恩を仇で返す」だが、デンマーク語では「At være utaknemmelig」 や「Tak for lort」となる。    だが、トランプ政権で国土安全保障を担当するスティーブン・ミラー大統領次席補佐官は、無理筋と思われるグリーンランド領有計画を、トランプ政権にやらせようとしている。    アメリカが、ベネズエラのマドゥロを拘束した際には、「法の支配」と「民主主義の回復」を尊重するとした高市総理は、民主主義国であるデンマークへのトランプ政権の強要に対して、どのように対応するつもりか?   (青山みつお)     中立国スウェーデンにユダヤ人を逃がそうとするデンマーク漁船

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2026.01.26

高市自民党が衆院選で勝利すると財務官僚が歓喜するのか
高市自民党が衆院選で勝利すると財務官僚が歓喜するのか

 高市早苗首相が衆議院を解散して総選挙を行うが、内閣支持率が高いだけでなく自民党支持率も上昇し32%を超えている。参政党や日本保守党などの少数政党が出現する中での32%なのだから非常に高い水準だ。自民党に次ぐ支持率の立憲民主党が7%であることからも自民党の支持率が如何に高くなっているかがわかる。 このまま高市自民党が高い支持を維持して総選挙投票日を迎えることができれば自民党が単独過半数の議席を回復する可能性も高い。そうなれば高市氏の目論見通りで御の字だと思われそうだが実はそんなに甘くない。各小選挙区の有権者はそれぞれの自民党候補者が保守なのかリベラルなのか、積極財政派なのか緊縮財政派なのか見極めずに一律で自民党に投票する可能性が高い。旧岸田派や旧森山派あたりの議員はリベラル且つ緊縮財政派であることが多い。自民党が大勝することで岸田政権や石破政権時代の自民党に逆戻りする可能性も否定できない。そうなると高市内閣で事実上棚上げしたプライマリーバランスの黒字化や積極財政予算、安全保障政策などへの対抗勢力が与党内に築かれることになる。いわゆるリベラル系議員が与党内に増すことは野党の攻撃を受けるよりも厄介なことになる。少なくとも財務官僚は一人でも多くの自民の族議員を懐柔し、日本を30年以上衰退路線に追い込んだ古典的貨幣観を復活させ、財政危機論を騒ぎ立て国民に過剰な負担を更に強いろうとするだろう。併せて、日本の歴史や伝統、文化を鑑みず理念なき国際化を推し進めようとする者の覇権が復活する可能性も否定できない。 自民党が大勝することで高市内閣が進めてきた方針に対する党内抵抗勢力の威力ばかりが増してしまう恐れがある。そうなると必要な歳出に躊躇しないとした骨太の方針が瓦解することもありうる。自民党には裏金問題で2024年の衆院選で落選した議員が28名もいる。この前議員達をどのように処遇するのか、公明党が離脱したことによる創価学会票をどのように補うのか、選挙によって年度内成立が厳しくなった予算に対してのどう説明するか、民主主義に反して議員定数削減(議員立法)を迫る維新との距離感をどのようにするのか、それなりに選挙に係る課題はある。自民党が議席を伸ばしたとしても行き過ぎた大勝は逆に高市氏にとって不利益になりかねない。よって、自民党の単独過半数が危ぶまれる程度の勝ち方が政権運営上、理想的なのではないかだろうか。 (坂本雅彦)

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2026.01.25

二代目“暗黒の君”のスティーブン・ミラーとは?
二代目“暗黒の君”のスティーブン・ミラーとは?

  トランプ大統領の次席補佐官(国土安全保障担当)のスティーブン・ミラーは、二代目の“暗黒の君”(The Prince of Darkness)と呼ぶにふさわしい人物だ。   初代の“暗黒の君”は、ブッシュ政権の国防政策委員会委員長としてイラク・アフガニスタン戦争を主導したリチャード・パールである。  パールがネオコンと呼ばれる思想集団に所属していたことは知られている。ネオコン(Neo-conservative)」とは、新保守主義を意味し、アメリカの外交・安全保障政策において、民主主義の普及と法の支配を掲げ、必要であれば軍事力行使だって辞さない強硬な介入主義を主張する勢力を指した。その起源は、アメリカ共産党を追放されたトロツキストに遡る。スターリンの一国社会主義に対し、世界革命(永続革命論)を主張、労働者階級による民主主義的社会主義の実現を目指したグループで、彼らの多くがユダヤ系の元社会主義者だった。  ネオコンの創設者は、ネオコンのゴッドファーザーと呼ばれたアーヴィング・クリストル(1920年1月22日 ~2009年9月18日)。リチャード・パールの師匠は、アメリカ合衆国の核戦略研究家として知られるシカゴ大学教授のアルバート・ウォルステッターで、二人ともユダヤ系だ。  ミラーは、極右、反移民、白人至上主義とされるが、パール、クリストル、ウォルステッターと同じユダヤ系。彼の先祖は、ロシアのポグロムから逃れるためにアメリカに移民したアシュケナージ・ユダヤ人である。  本来、ユダヤ人の白人至上主義者など、自己矛盾に等しい。なぜなら、ユダヤ系もアメリカの白人社会で差別されてきており、それ故、ユダヤ系アメリカ人には、リベラル派が多い。KKKのような伝統的な白人至上主義団体には、黒人と同様、ユダヤ系も入会できない。ユダヤ系にして白人至上主義者であるミラーは、在日右翼のような存在と言えよう。  スティーブン・ミラーが、「国際的な礼儀についてはいくらでも語れるが、私たちは力と強さによって支配されている」と自己の信念を口にしたように、世界は弱肉強食であり、強い者が弱い者より優先されるのは当然といった考えだ。  初代“暗黒の君”パールでさえ、民主化や自由化といった名分を使っていたが、そうした体裁すらしない。まるでヨーロッパのユダヤ人を虐殺したナチスのアドルフ・ヒトラーのように、むき出しの力を誇示している。  アメリカとの付き合い方を考える上で、トランプ政権を裏で操ると言われるミラーが、こうした思想を持つに至った背景を分析しなければならないだろう。 (青山みつお)         ミラー米大統領次席補佐官の妻がX(旧ツイッター)に投稿                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

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2026.01.24

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