政治•経済

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激化する中東情勢 中国はどう捉えているのか
激化する中東情勢 中国はどう捉えているのか

 2026年3月現在、中東情勢はイラン指導層を標的とした大規模な軍事攻撃や、それに伴う地域全域への戦火の拡大により、かつてない激動のさなかにある。この深刻な事態に対し、中国は「責任ある大国」としての外交的地位の確立と、自国の経済的利益の保護という二つの側面から、極めて計算高いスタンスを貫いている。 中国政府は、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動に対し、一貫して「主権の侵害」であるとして強い非難を表明している。王毅外相は、サウジアラビアやイラン、さらには欧州諸国の外相と相次いで電話会談を行い、いかなる理由があろうとも民間人を巻き込む無差別な武力行使は受け入れられないと強調した。中国にとって、中東の安定は単なる平和への願いではなく、国家戦略である「一帯一路」構想の要所を守るための必須条件である。そのため、軍事行動の即時停止と対話による解決を強く求め、中東問題に関する特別特使を現地に派遣するなど、調停者としてのプレゼンスを急速に高めている。 しかし、中国の動向を読み解く上で欠かせないのが、冷徹な経済的リアリズムである。中国はイラン産原油の最大の買い手であり、ホルムズ海峡の封鎖やエネルギーインフラの破壊は、自国の経済成長に直結する。特に、AI開発のためのデータセンター増設に伴う電力需要が急増している現在の中国にとって、中東からのエネルギー供給の途絶は致命傷になりかねない。興味深いことに、中国はイランへの政治的支援を口にする一方で、実際の行動においてはサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸諸国との連携を強化している。これは、イランの既存の権力構造が揺らぐ中で、リスクを分散させ、どの勢力が台頭しても自国のエネルギー調達ルートを確保しておこうとする全方位外交の表れといえる。 さらに、中国はこの混乱を米国のリソースを枯渇させる絶好の機会とも捉えている。米国が中東の泥沼に足を取られ、高価なミサイルや弾薬を消費し続けることは、米国の視線がアジア太平洋地域から逸れることを意味する。中国のメディアやシンクタンクからは、米国の軍事力が中東という「二次的な劇場」で消耗されることを歓迎するような論調も見え隠れする。 中国は現在の中東情勢を、自国の外交的影響力を誇示する舞台として活用しつつ、実利面では最大限の自制を保っている。米国を「混乱の元凶」として非難し、自らを「平和の推進者」と定義することで、グローバルサウス諸国からの支持を取り付ける狙いがある。だが、その根底にあるのは、戦火が自国のエネルギー安全保障を脅かさない範囲で、米国が疲弊していくのを静かに見守るという、極めて戦略的な静観の姿勢である。 (ジョワキン)

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2026.03.10

百貨店業界 V字回復の「呉服屋系」とジリ貧「電鉄系」で明暗
百貨店業界 V字回復の「呉服屋系」とジリ貧「電鉄系」で明暗

 百貨店業界を俯瞰すると大きくは「呉服屋系」と「電鉄系」に分かれる。そしてこの両者を比較すると総じて優勢「呉服屋系」とジリ貧「電鉄系」に色分けされる。呉服系の代表は堅調な業績で推移する高島屋だ。  高島屋の総額営業収益(旧会計基準の売上高相当)は、2020年2月期の9191億円から、コロナ禍の影響から翌年度には6809億円まで減少したが、その後回復し、25年2月期には17年ぶりに1兆円を突破した。同期には新宿店が初めて売上高1000億円を達成している。 同じく呉服屋系の三越伊勢丹ホールディングスも好調で、伊勢丹新宿本店の24年度売上高は前年比12.1%増の4212億円と単独店としてはトップの規模を誇る。 対する電鉄系百貨店の業績は芳しくない。小田急新宿店本館の跡地には、高さ260メートルの高層ビルが建つ予定だが、低層階に小田急百貨店が出店するかは未定となっている。出店しても大幅な規模縮小となるらしい。  そもそも小田急百貨店は他社ほど多店舗展開していないため閉店がさほど目立たないが、業績が悪化している。小田急電鉄の百貨店業売上高は15年度の1537億円から18年度には1428億円となり、20年度はコロナ禍で863億円まで落ち込んだ。 東急も23年に閉店した渋谷本店跡地には、百貨店は再出店せず、地上36階地下4階、高さ164.8㍍の複合施設が出現する予定だ。 西武百貨店は03年にそごうと合併し、09年から23年までの間、セブン&アイ・ホールディングス傘下で営業を続けたが、縮小の一途をたどり、地方や郊外で閉店が相次いだ。 電鉄系ではないが、そごうも同様に店舗を相次いで閉鎖。柏、八王子、川口、徳島店などが対象となった。そごう・西武は現在、米ファンドのフォートレス傘下にあり、西武池袋本店の不動産はヨドバシホールディングスに売り渡された。 呉服系は富裕層やインバウンド需要を取り込んだため業績悪化を免れることができた。そもそも呉服屋系は大都市圏に集中しており、一等地に店舗を構える高島屋や三越伊勢丹HDなどは集客に有利なことが奉功した。 勝者組は富裕層向けの強化を進めている。新宿高島屋では高級ブランドフロアの改装や、ゴルフ売場の拡大などを進めた。24年には富裕層の運用助言会社を買収した。三越伊勢丹HDは22年に「外商統括部」を新設。伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店で分かれていた外商部門を統一し、品ぞろえや営業体制を強化した。 一方で西武のように郊外が主軸の電鉄系は富裕層を取り込めず、中間層離れによって、業績が長期的に低迷した。 高島屋や三越伊勢丹、新生・西武池袋などは庶民にとっては知らない高級ブランドばかりになった。ハードルが高すぎクン!(梛野順三)

高市内閣が国内での原薬製造基盤の構築を推進
高市内閣が国内での原薬製造基盤の構築を推進

 2月27日の衆議院予算委員会で中道改革連合の伊佐進一議員が重要供給確保医薬品の確保ついて高市早苗首相に質疑した。伊佐議員の供給確保医薬品の国内での製造体制構築の要望に対して、高市首相もかねてからそのことに関して懸念を抱いていたとして、取り組みに意欲的な答弁を行った。新型コロナウイルス禍は日本の医薬品供給体制の脆弱性を浮き彫りにした。マスクやワクチンのみならず、日常診療を支える基礎的医薬品の供給が海外の生産停止や物流停滞に左右される現実が明らかになったからである。とりわけ原薬(API)を特定国に依存する構造は、国家の医療安全保障上の重大なリスクである。たとえば、β-ラクタム系抗菌薬であるペニシリンGやセファゾリンは手術時の感染予防や肺炎治療などに不可欠な基幹抗菌薬だ。さらに重症感染症に用いられるメロペネム、MRSA治療の切り札であるバンコマイシンも同様である。これらの原薬は中国やインドなど海外依存度が高いとされ、供給停止が生じれば医療現場は即座に機能不全に陥る。感染症流行時に抗菌薬が不足すれば、救命率の低下は避けられない。高市首相が経済安全保障担当相であった在任中に抗菌薬については予算を執行して国内での製造体制を構築した。しかし、この問題は抗菌薬に限らないという指摘を伊佐議員はしている。局所麻酔薬アナペインや透析患者に使用されるレボカルニチンのように日常医療を支える薬剤でも原薬依存が指摘されている。平時には価格競争力を優先し海外生産に依存する構造が合理的に見えても、有事には供給途絶という形で国民の生命に跳ね返る。コロナ禍の教訓は明白だ。医薬品は単なる商品ではなく「戦略物資」である。国内に一定規模の原薬製造基盤を維持し、複数国調達や備蓄体制を組み合わせたサプライチェーンの多元化を図ることが不可欠だ。短期的にはコスト増を伴うが供給断絶による社会的損失と比較すればその投資は保険料に等しい。平時からの設備投資支援、長期購入契約による需要保証、技術者育成、こうした政策を通じて「国内で作れる力」を保持することが医療安全保障の核心である。危機は忘れた頃に訪れる。だからこそ、危機の記憶が新しいうちに備えを制度化しなければならない。 (坂本雅彦)  

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2026.03.08

イランに米軍が爆撃でハメネイ師を殺害―アメリカとイスラエルの目的①
イランに米軍が爆撃でハメネイ師を殺害―アメリカとイスラエルの目的①

 トランプ大統領はイランを襲撃することを計画。イスラエルとの協力関係のもと、爆撃した。その結果イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害。側近にもスパイがおり、情報を流していた可能性が高い。今回のイランへの攻撃はイスラエルにとって脅威であったイランを破壊し、親米政権に変えていくことが目的だ。 今年の初頭、ベネズエラを爆撃し、マズーロ大統領を逮捕したことは記憶に新しい。このベネズエラは原油の宝庫でもある。イランも石油の算出国であり、多くの国に輸出している。しかし、どのように対立していったのか、簡単に歴史を見ていこう。 このイランの地下にはエネルギーとして利用できる石油が眠っていたが、この石油を発見したのはイギリスだ。アングロ・イラニアン石油会社が設立され、その利益の大半をイギリス、アメリカ、フランス、オランダで分割してしまう。イランの人たちは過酷な労働だけを強いられていき、石油の豊かさが分け与えられることはなかった。この現状を改善しようとしたのが、モハンマド・モサデクだ。彼は石油施設を国有化し、自分たちの土地でとれたものが、自分たちの国民の利益になるように尽力した。 ところが、このことをよく思わない英米は、CIAとイラン軍の一部が結束して、クーデターを起こす。その後、英米の息のかかったパーレビ国王による支配が続いていく。この傀儡政権に終止符を打ったのが、シーア派であるホメイニ師によるイラン革命である。ここで、再度国有化政策が打ち出された。さらにイスラム文明を復興させ、西洋文明を排除していく。 これに対し、アメリカはイラクにお金を貸し、戦争けしかけていく。イラン・イラク戦争の始まりだ。こうした経緯もあり、アメリカとイランは険悪な関係が続いている。今回の攻撃で石油利権を支配することも視野に入れ、石油のドル決済維持により、ドルの価値を守れることも攻撃の一因であったことは間違いない。(早見慶子)  

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2026.03.07

前江東区長に給料1000万円返還命令 公選法違反有罪
前江東区長に給料1000万円返還命令 公選法違反有罪

 2023年4月の江東区長選を巡り公職選挙法違反(買収など)で有罪が確定した木村弥生・前区長(60)に対し、東京地方裁判所は2月26日、同区が木村氏に支払った給与約1000万円を返還するよう命じる判決を出した。首長が公選法違反に問われた後、自治体から給与返還を求められた異例の裁判だったが、東京地裁は区の請求をほぼ全面的に認めた形だ。 ■買収 江東区長選を巡る公選法違反事件では、木村氏は陣営幹部に報酬を支払ったなどとする買収罪などに問われ、2024年6月に執行猶予付きの有罪判決が確定。当選が無効となっていた。このため、区が木村氏に給与の返還を求めたが、拒まれたとして2025年5月に返還を求めて提訴していた。 給与返還請求訴訟では、木村氏側は区長としての業務によって区は利益を受けており、返還の必要はないなどと主張したが、東京地裁判決は「区長の職務は選挙で選ばれた有効な地位の者によって行われるのが前提。有罪が確定して当選無効となっており、返還義務を負う」とみなした。 ■区政に混乱 首長としての自覚は? 木村氏は23年4月の区長選で当選後、数か月で疑惑が浮上。東京地検特捜部による強制捜査に発展した。木村氏は事件を受けて23年11月に辞職したが、事件によって当選後間もなく区政に混乱を招いたことはもちろん、改めて区長選が開かれたことで多額の税金が無駄になった事実は極めて重い。 返還請求に応じない木村氏には、区民に多大な迷惑をかけたという自覚がないのだろうか。自身の刑事責任だけではなく、民事的な責任を負うべきなのは言うまでもないはずだ。 (桜田亮)

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2026.03.06

イランにおける女性規制は宗教の名を借りた人権の抑圧である
イランにおける女性規制は宗教の名を借りた人権の抑圧である

 今月に入りイラン政府が長年の懸案だった女性へのオートバイ免許の交付を解禁した。イラン国内では政府に対する不満からデモが頻発している。今回の措置はイラン国民の政府への不満を受けての対応であることは想像がつく。女性の自動車の運転は認められていたがオートバイは免許の交付対象になっていなかった。テヘラン市内は交通状態することが多く女性のオートバイ免許取得の需要は高まっていた。イランでの女性に対する規制は単なる服装規定や文化的慣習の問題ではない。国家権力による宗教解釈を通じた女性の身体、行動、人生の選択を制度的に管理する構造的な人権制限である。象徴的なのが公共空間でのヒジャブ着用義務だ。頭髪を覆わなければならないという規定に違反すれば拘束や再教育の対象となる。服装の自由が奪われているだけでなく女性の身体そのものが国家の監視下に置かれていることを意味する。これは信仰の自由ではなく信仰の強制である。規制は外見にとどまらない。公共の場での男女の接触、女性の歌唱や踊り、混合イベントへの参加など日常的な表現や交流が厳しく制限されている。女性が単独で歌うことが禁じられている現実は表現の自由の否定にほかならない。法制度に関してはより深刻な不平等が存在する。結婚や離婚、親権、相続において女性は明確に不利な立場に置かれ、裁判での証言価値も男性より低く扱われる分野がある。海外渡航や就労に家族の同意が必要とされる場合がある点は女性が法的に主体性を認められていないことの証左である。さらに、スポーツ観戦や政治的発言といった公共的領域からの排除も続く。女性活動家や記者は特に拘束のリスクが高く、SNS上の投稿すら摘発対象となる現状は沈黙を強いる統治の手法と言わざるを得ない。2022年以降、女性の尊厳を求める抗議運動は世界の注目を集めた。しかし、取り締まりの緩和と再強化が政権判断で繰り返される状況は問題の本質が未解決であることを示している。宗教や文化を理由に個人の自由と尊厳を恒常的に制限する体制は国際社会の理解を得られるものではない。イランの女性が求めているのは特権ではない。基本的人権としての自由と平等である。その声に耳を塞ぎ続ける限り体制の正当性は揺らぎ続けるだろう。 (坂本雅彦)

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2026.03.04

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