迫られた辞任か否か――争点① さてこれまで、第三者委員会の報告書だけではなく、設置前後の動きまでが問題視されるという、注目の裁判について触れてきたが、果たしてどういった経緯でここまで事がこじれるようになってしまったのだろうか。 それは三栄建築設計という東証プライム上場企業に反社条例による勧告が行われるという、前代未聞の事態の裏で何が起こっていたのかという経緯を振り返ることなくしては語れない問題でもある……。 事の起こりは2022年9月12日、三栄建築設計本社などに警視庁による家宅捜査が入ったことに始まる。 容疑は会社法違反(特別背任)。三栄建築設計の子会社が外部の業者に発注した都内2カ所の解体工事の支払いを巡り、小池、元社員S、指定暴力団のS組長ら関係者が共謀し、最終的にはS組長に水増しした工事代金の金が流れるよう利益供与を行い、会社に損害を与えたというものだった。小池にとっては寝耳に水だったが、抗議の声が聞き届けられることがないまま事態は推移していく。 そんな声がやっと世間に届いたのは、小池がしぶしぶ会社を手放さざるを得ないところまで追い詰められ、23年10月に三栄建築設計がオープンハウスの傘下に入った後だった。「指示も了承もしていない」と朝日新聞の取材に応じて応えている(23年11月23日付け記事)。 その朝日新聞の記事によれば、S組長から紹介された業者が解体工事に入り込んでいたことを知ったのは、工事が既に20年12月に終わっていた21年1月のことで、当初は知る由もなく、つまり「共謀」が成立するはずがないという。また訴状によれば、この間の事情はもちろん経営陣に説明してあったものの、結局、最終的に聞き届けられることはなかったという。 そうして聞き届けられることがないまま、むしろ追い立てるようにして22年11月1日、小池は代表取締役を辞任する。まさに企業トップそのものに特別背任の嫌疑がかけられていることが露見すれば、反社条項違反となって銀行融資がストップし、会社に多大な損失が生じる。その時点では仕方のない選択だった。 そしてこの間の辞任を巡る攻防のやりとり、とりわけ社外取締役の池内稚利とのものが、「執拗に要求」(訴状より)されたものだったというのが今回の訴訟で争われている4争点のうちの①だ。 いかに執拗なものだったのか。原告側の準備書面によれば、22年10月25日の取締役会で、「(警視庁の家宅捜索について)既にNHKの記者が嗅ぎつけてきている。原告(小池)がメルディアの(代表)取締役を辞任しないのであれば、私(池内)が社外取締役を辞任して記者会見を行い」事実を公表すると迫ったのだという。 だがこの時点で、小池は今後の社内調査の結果いかんで進退を判断することは、役員、顧問弁護士から賛同が得られていたという。だからその後の12月20日に、その池内を委員長とし、弁護士2人を含む計6名からなる社内調査委員会が設置されるのだが、つまりこの段階では確実に推定無罪なのだ。 ところがこのように池内は小池に辞任を迫った。もちろん警視庁の家宅捜索の事実を公表すれば、会社は甚大な被害を受けるわけで、果たしてそうまでして辞任を迫ることが適正だったのか。独立社外取締役としての善管注意義務や、池内の本業である弁護士としての守秘義務などが問われている。 またこの小池の〝シロ・クロ〟を巡る対立これが後々まで尾を引き、現在の訴訟の4争点の2つ目につながる。そして2つ目の争点での被告に名前が上がっている社外常勤監査役の五藤誠一は、社内調査委員会の副委員長だった。・・・・・・⑤に続く (本誌・第三者委員会問題追及班)