政治•経済 中国による債務帝国主義:パラオのケース
中国による債務帝国主義:パラオのケース
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2025/12/27

 太平洋に浮かぶ美しい島国パラオが、今、巨大な地政学的な荒波にさらされている。中国が発展途上国に対して巨額の融資を行い、返済が滞った際に港湾などの戦略的拠点の権益を掌握する「債務の罠」という手法は、スリランカやアフリカ諸国で顕著に見られてきた。しかし、パラオの事例は単なる資金貸付に留まらず、観光資源という「経済の生命線」を掌握するという、より巧妙かつ多角的な「債務帝国主義」の変奏曲を呈している。

パラオは台湾と正式な外交関係を維持する数少ない国の一つである。中国はこの関係を断絶させるべく、まず経済的果実を餌に接近した。2010年代半ば、中国は大量の団体観光客をパラオに送り込み、現地経済を急速に中国依存へと塗り替えた。観光業がGDPの4割以上を占めるパラオにおいて、中国人観光客の爆発的な増加は、一見すると空前の好景気をもたらした。しかし、これこそが「依存」という名の罠の始まりであった。

2017年、パラオが台湾との断交を拒むと、中国政府は突如としてパラオへの団体旅行を禁止する措置に出た。ホテルやレストラン、航空業界は一転して深刻な不況に陥り、中国資本による開発プロジェクトは中断され、多くの建築物が廃墟のように取り残された。中国は経済的な打撃を意図的に作り出すことで、「中国に従わなければ、この損失を埋めることはできない」という無言の圧力を突きつけたのである。

さらに、中国は現地の政治家や有力者に対し、投資や寄付を名目に接近し、内部からの切り崩しも画策している。巨額の債務や経済的損失を抱えた国に対し、その解決策としてさらなる融資や投資を提案し、引き換えに台湾との断交や米軍のアクセス制限を要求する手法は、国家の主権を実質的に買い取る行為に他ならない。

パラオのウィップス大統領は、こうした中国の経済的威圧に屈せず、民主主義の価値を共有する日本や米国、台湾との連携を強化する姿勢を鮮明にしている。しかし、小国が巨大な経済力を持つ帝国主義的な攻勢に立ち向かうには、一国の努力だけでは限界がある。パラオのケースは、自由で開かれたインド太平洋を維持するために、国際社会が経済的な盾となり、安易な依存を許さない支援の枠組みを構築すべきであることを強く示唆している。

(ジョワキン)

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