政治•経済 中国による債務帝国主義 ネパールのケース
中国による債務帝国主義 ネパールのケース
政治•経済

2025/12/23

近年、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」は、途上国へのインフラ支援を通じて多大な影響力を及ぼしている。しかし、その実態は「債務の罠」とも揶揄される「債務帝国主義」の側面を色濃く反映している。南アジアの内陸国ネパールは、この中国の戦略に直面し、国家の自立と経済的持続可能性の岐路に立たされている。

ネパールにおける債務帝国主義の象徴的な事例として挙げられるのが、ポカラ国際空港の建設プロジェクトである。この空港は、中国輸出入銀行から約2億1600万ドルという巨額の融資を受けて建設された。2023年に華々しく開港したものの、現在に至るまで定期的な国際便の運航はほぼ皆無という、極めて深刻な不採算状況に陥っている。

このプロジェクトの背景には、不透明な契約形態とコストの不自然な膨張が指摘されている。2025年に入り、ネパールの反汚職当局は、建設に携わった中国企業とネパール政府高官らが共謀し、工事費を不当に吊り上げたとして大規模な訴追に踏み切った。政府の見積もりを大幅に上回る額で発注され、その差額が一部の利権に流れた疑いが持たれている。その結果、ネパール国民は便益の乏しい巨大インフラと、それに見合わない膨大な借金だけを背負わされる形となった。

中国の融資は、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)といった国際機関の融資と比較して、金利が高く返済期間が短い傾向にある。さらに、資材や労働力の調達を中国企業に限定するという条件が付帯することも多く、融資された資金の多くが実質的に中国国内へ還流する仕組みとなっている。これが、現地の雇用創出や経済循環を阻害し、債務だけが累積する構造を生み出している。

ネパール政府は現在、同様の「罠」を避けるため、一帯一路に関連する新たなプロジェクトにおいて、融資ではなく無償援助(グラント)を強く求める姿勢に転じている。しかし、中国側は戦略的投資としてのリターンを重視し、安易な無償化には応じていない。スリランカのハンバントタ港が債務不履行の結果、中国企業に99年間の運営権を譲渡せざるを得なくなった前例は、ネパールにとって他人事ではない。

一国の主権は、経済的な自立の上に成り立つ。ネパールの事例は、甘い言葉で提示されるインフラ支援が、一歩間違えれば国家の首を絞める鎖へと変貌することを示している。債務帝国主義という現代の新たな植民地主義に対し、国際社会の透明な監視と、受け入れ国による冷静なリスク管理が今、かつてないほど切実に求められている。

(ジョワキン)

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