政治•経済 イランにとっての最大の脅威はイスラエルではない!そのワケとは?
イランにとっての最大の脅威はイスラエルではない!そのワケとは?
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2025/07/01

 イランとイスラエルの対立は、中東情勢を語る上で欠かせないテーマだ。両国は長年にわたり
、核開発や地域覇権を巡って緊張関係を続けてきた。イスラエルはイランの核計画を「生存の脅
威」とみなし、空爆の可能性を度々示唆。一方、イランはイスラエルを「シオニスト政権」とし
て非難し、代理勢力であるヒズボラやハマスを通じて対抗する。この敵対関係は一見、イランに
とって最大の脅威がイスラエルであるかのように思わせる。しかし、実際にはイラン政府にとっ
て最も深刻な脅威は、外部の敵ではなく、国内の国民の不満である。
 イランは1979年のイスラム革命以来、シーア派の宗教指導者による厳格な統治体制を維持して
きた。しかし、この体制は特に若者層を中心に強い反発を招いている。イランの人口の約6割が30
歳以下であり、若者は経済的困窮や社会の閉塞感に不満を抱いている。失業率は高く、特に若者
の失業問題は深刻だ。さらに、国際的な経済制裁によりインフレが進行し、生活必需品の価格が
高騰。こうした経済的圧迫が、国民の政府への不信感を増幅させている。
 過去の事例からも、国民の不満が爆発する様子が見て取れる。2019年11月、ガソリン価格の高
騰をきっかけに全国規模の反政府デモが発生。政府の発表では数百人が死亡したが、実際の死者
数は千人を超えるとも言われる。このデモは、単なる燃料価格の問題を超え、体制そのものへの
不満の表れだった。さらに、2022年9月には、22歳のマフサ・アミニさんがヒジャブの着用ルー
ル違反を理由に道徳警察に拘束され、死亡した事件が全国的な抗議運動を引き起こした。「女性
、命、自由」をスローガンに掲げたこの運動は、若者や女性を中心に広がり、体制変革を求める
声が高まった。政府は武力でデモを鎮圧したが、国民の不満は収まっていない。
 こうした国内の動揺に対し、イラン政府はイスラエルへの敵視を強めることで、国民の不満を
そらす戦略を取っている。イスラエルを「共通の敵」と位置づけることで、国民の団結を促し、
体制批判をかわそうとしているのだ。最高指導者ハメネイ師は、イスラエルを「悪の象徴」とし
て非難し、国民の愛国心を煽る演説を繰り返す。また、ヒズボラやイエメンのフーシ派への支援
を通じて、反イスラエル・反米の姿勢をアピール。これにより、国内の経済や社会問題から目を
そらし、体制の正当性を訴える狙いがある。
 しかし、この戦略は限界に直面している。ソーシャルメディアの普及により、若者は政府のプ
ロパガンダに懐疑的だ。インターネットを通じて海外の情報に触れ、自由や経済的安定を求める
声が強まっている。特に、ヒジャブ強制のような宗教的統制は、若い世代にとって時代錯誤と映
る。2022年のデモでは、ヒジャブを燃やす女性たちの映像が世界中に拡散し、体制への抵抗が可
視化された。こうした動きは、政府のイスラエル敵視策では抑えきれないほど根強い。
 さらに、経済制裁の影響でイランの経済は疲弊している。原油輸出は大幅に減少し、外貨準備
も枯渇。政府は国民の生活を支える余裕を失いつつある。若者たちは、イスラエルとの対立より
も、雇用の創出や生活水準の向上を求めている。政府がイスラエルを「最大の脅威」と喧伝する
一方で、国民の多くは国内の圧政や経済難こそが真の脅威だと感じているのだ。
イラン政府にとって、イスラエルとの対立は外交や軍事上の問題であると同時に、国内統治の道
具でもある。しかし、国民の不満が高まる中、この戦略は効果を失いつつある。若者たちの抗議
は、体制の基盤を揺さぶる力を持ち、イスラエルへの敵視では抑えきれない。イランにとって真
の脅威は、外部の敵ではなく、国民の怒りと変革への渇望なのである。

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