連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.81『ネックピロー』
連載•小説
2026/01/26
先日、羽田から京急に乗った時のことである。ドアが開くと、これから空港へ向かう客と入れ替わりに、俺はフライトの疲労感で沈むようにシートに座った。
ふと見ると、前の席が一か所空いており、そこにネックピローが置いてあった。
そういえば俺が乗った瞬間、慌てて降りた中年の男がいた。一瞬だったが、男から何か飛び出たように見えた。そうか、あれはネックピローだったのか。
しかし、車内では忘れ物だと認識している人は少く見えた。吊革の人たちは、ネックピローの横に座っているオジサンの私物に見えているかもしれない。このオジサンも「これは俺のじゃないよ」という表情でみんなにうったえているようにも見えてきた。
忘れた男はこの先、何時間のフライトなのだろう。見れば、高級そうなネックピローだから、海外に行こうとしていたのかもしれない。ネックピローありきの旅程が崩れ去った男の絶望感を想像しただけで、俺の方が先に首が痛くなってきた。
TIMES
連載•小説






