社会•事件
2025.07.29
東京都心の地下鉄で猛毒のサリンがまかれ、14人が死亡、約6300人が重軽傷を負ったオウム真理教による地下鉄サリン事件は、発生から30年がたったが、事件は今も終わったとはいえない。オウム真理教後継団体主流派「アレフ」について、公安調査庁は7月22日、教団の教祖・麻原彰晃元死刑囚(本名・松本智津夫、2018年に刑執行)の次男が運営を主導していると認定。こうした実態を報告しなかったなどとして、団体規制法に基づき6回目となる再発防止処分の継続を公安審査委員会に請求した。アレフの運営について次男の関与を公安庁が指摘したのは初めてで、今後も厳格な対応が不可欠だ。 公安庁の発表などによると、松本元死刑囚は1995年5月に逮捕された後、次男を後継者に指名した。同庁の調査によって、次男が2014年頃からアレフの意思決定に関与していたことが確認され、遅くとも2017年頃からは「2代目グル(宗教指導者)」を自称して組織運営を主導していたとされる。 ■遅い国の認定 後継団体には2000年以降、団体規制法に基づき、構成員や資産状況などを公安庁に報告することが義務付けられているが、アレフは次男が構成員であることなどを報告しなかったといい、同庁は「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難」と指摘した。 今回、公安庁が次男によるアレフの主導を認定した意義は大きいが、2017年頃からは既にグルと自称していたことが事実であれば、認定は遅すぎると言わざるをえない。この間にもアレフは若者を中心に新たな信者を獲得、松本元死刑囚の教えを説き続けてきたわけで、公安庁は猛省すべきだろう。 ■7億円の資産隠し 後継団体は被害者への賠償責務を果たしておらず、公安庁はアレフが差し押さえを逃れるために関連法人に資産を分散させ、少なくとも7億円の資産隠しをしたと推計している。 今回、2代目グルとなった次男の存在を鮮明にしたのを契機に、国は賠償金を立て替えてアレフから回収する仕組みを構築するなど、厳格な措置を取ることが求められる。 危険な後継団体の資金源を断ち、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を排除するため、生ぬるい対応は許されない。
2025.07.28
レスリング五輪選手も輩出している名門・山梨学院大学(甲府市)レスリング部で、「大麻クッキー」を巡る衝撃的な騒動が起きた。同部の10歳代の男子部員が今年5月、大麻成分を含むとみられるクッキーを食べ、寮の2階から飛び降りて頭の骨などを折る重傷を負っていたことが判明したのだ。「リラックス効果があると思った」という男子部員3人がインターネットでクッキーを購入後、食べたこの部員が急に異常なテンションになり、飛び降りたという。現状、警察の捜査で違法成分は検出されていないようだが、人体に有害性がある可能性もあり、厚生労働省が調査に乗り出している。 ■安易な購入はNG 近年、違法ではないものの、大麻の違法成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」と化学構造の似た成分を含む食品が次々と販売され、問題となっている。大麻クッキーのほか、「大麻グミ」もインターネット上や店頭に出回っている。 これらの食品は、有害性が確認でき次第、医薬品医療機器法上の規制対象に追加することで、所持や使用を禁止するような手立てが取られているが、規制されるとまた新たな製品が登場して規制が追いつかないという「いたちごっこ」の状態が続いているのが現状だ。 このため、警察関係者は「インターネットで怪しい商品は出回っており。製品のパッケージに書かれている成分もそのまま信用するのは危険。『リラックス』といった単語にも気を付けるべきで、安易な購入は控えるべきだ」と強調する。ネット上で誰もが安易に買えるため、消費者側の注意が不可欠となっている。 ■早期の規制が必要 山梨大学関係者によると、山梨大レスリング部のケースでは、男子部員は頭の骨を折る大けがを負ったにもかかわらず、飛び降り後に再び2階に戻って飛び降りるしぐさをみせるなど異常行動を取っていたという。 部員が食べた「大麻クッキー」には、人体に悪影響をもたらす成分が入っていた可能性も高く、本来は警察や厚労省が詳細な商品名も公表し、注意喚起すべきレベルだ。 今後、厚労省の調査で悪影響や有害性が確認されれば、国は規制に乗り出すとみられるが、規制対象となるまでにまた同様の事故が起きないよう、早期の対応が求められる。
2025.07.27
2025.07.26
再審で冤罪が晴れたところで、失われた長き人生を取り戻すことはできない。1986 年に福井市で起きた女子中学3年生殺害事件で、逮捕・起訴された逮捕時21歳の元被告 ・前川彰司さん(60)の汚名がやっとすすがれた。殺人罪で懲役7年が確定し、服役し た前川さんの再審公判で、名古屋高裁金沢支部が7月18日、1審・福井地裁の無罪判決 を支持して検察側の控訴を棄却し、「再審無罪」とする判決を言い渡した。長期にわたり 司法判断に翻弄されてきた前川さんに対する国による補償や謝罪は当然だが、長すぎる再 審の制度改革も急務となっている。 ■物的証拠なし 関係者証言頼み 事件を巡り、前川さんは1987年に逮捕されたが、一貫して無罪を主張。物的証拠も 乏しい中、福井地裁は無罪とした一方で、2審・名古屋高裁金沢支部が「事件後に血のつ いた前川さんを目撃した」とする知人6人の証言を根拠に逆転有罪とし、最高裁で確定し ていた。 今回の再審無罪を決めた名古屋高裁金沢支部の判決は、有罪の決め手となった6人の証 言の信用性を否定。警察が「不利益な利益供与」によって関係者の供述を誘導し、検察が 故意に証拠を開示しなかったことを認めた上で、「刑事司法全体に対する信頼を揺るがし かねない」と断じた。ここまで捜査機関の「不正」を裁判所が認定するのは異例のことで あり、警察や検察は猛省すべきだろう。 ■証拠の迅速化開示が不可欠 前川さんが長年にわたり司法判断に翻弄されてきた背景にあるのは、再審の証拠開示に 法的義務がないといった再審制度の「欠陥」だ。名古屋高裁は2011年にいったんは再 審開始を決めたが、検察の異議申し立てを受けて取り消した。2度目の再審請求が昨年に 認められ、今回の無罪につながった。 今回の事件では、有罪立証の柱となった目撃証言の矛盾を示す重要な証拠があったのに 、検察が開示したのは2度目の再審請求中のことだった。刑事事件の捜査は、国民の税金 を原資に行われており、検察が証拠を独占する現行法の不備を露呈したともいえそうだ。 1966年の静岡県一家殺害事件で死刑が確定後、再審無罪となった袴田巌さんのケー スでも、検察はなかなか証拠を開示せず、無罪に結びつく証拠開示までは最初の再審請求 から約30年も要した。 冤罪で長年にわたり苦しめられた袴田さんらの事件を踏まえ、再審制度改革に向けた議 論が法制審議会(法務大臣の諮問機関)で進んでいる。だが、論点は多岐にわたり、取り まとめには時間がかかるとみられている。 ただ、冤罪は誤って罪に問われた人の人生を狂わせるだけではなく、真犯人を長年にわ たり見過ごしたことにもなり、社会にとっても不利益は小さくない。 国はできるだけ早く再審制度を改め、迅速な審理を可能とする仕組みを構築すべきだ。
2025.07.25
2025.07.24
上場時の2014年「わくわくするSHIFTになるため、売上高を1000億円にする」。ソフトウェアのテスト事業を展開するSHIFTの丹下大社長はこのような目標を定めた。当時の売上高は約20億円だった。 それから約10年で、品質保証のためのテストがメインだった事業領域は、ソフトウェア開発やコンサルまで広がり、25年8月期に1300億円を見込む売上高を30年頃には2倍強の3000億円まで伸ばす目標を掲げるまでに成長した。14年に30億円だった時価総額は、今140倍の4200億円まで膨らんだ。 同社の急成長を支える大きな柱がM&Aだ。今ではグループ全体の売上高のうち約4割を買収した企業が稼いでいる。 19年頃から事業継承に課題を持つSIerや大型プライムベンダー、プラットフォーム事業の会社を対象とするМ&Aに力を入れてきた同社は、「ソーシング(買収先探索)」や「エグゼキューション(契約手続き)」を担う要員約20人を抱えるM&Aの専任部署を立ち上げ、22年には、M&A専用の子会社「SHIFTグロース・キャピタル」を設立し、本体が大型案件を、グロース・キャピタルやグループ会社が中小規模の案件を担い、スピード感と柔軟性を持って投資判断を下している。 「上場から21年4月末時点までにSHIFTTが実施したМ&Aは15件ですが、うち4件は19年上半期(1月~6月)の実施で、これは同期間において東証上場の企業が実施したМ&Aの件数としては最多となっています」(ソフトウェア業界専門紙記者) ソフトを扱う硬派な企業、それがSHIFTだ。
フリーランスを悪用した島村楽器のビジネスモデルが明らかに 6月30日、島村楽器(東京都江戸川区)が公正取引委員会に摘発され勧告を受けた。フ リーランスの音楽講師に対して優越的地位を濫用し、顧客に対する訴求としての無償レッ スンを開催する際にフリーランスの講師にも無償でレッスンに当たらせていた。そもそも 島村楽器はフリーランスの講師に取引条件の明示義務を怠っており、報酬の額、報酬の内 容、支払い時期などは書面でもメールでも知らされていなかった。それでも約100名のフ リーランスが応じて労務に就いていたのだからいかにフリーランスの立場が弱いものかと 窺い知れよう。 公正取引委員会の公表により島村楽器のフリーランス法に違反する行為が明らかになっ たのだが、明らかになったのは違法行為だけではない。島村楽器のビジネスモデルの一端 も明らかになった。楽器の無料レッスンを広く告知して、その応募者に対するレッスンは フリーランスの音楽講師に無料で請け負わせる。この時点で島村楽器は告知費用以外のリ スクはない。応募者へのサービスはフリーランスの音楽講師に全て負わせている。フリー ランスの音楽講師も無料レッスンの応募者が正式にレッスンを申し込めば仕事と報酬を得 ることができるので一見合理的なように思えるが実は違う。島村楽器はフリーランスに無 料レッスンを提供させることでノーリスクの販売促進を行っている。そして、無償レッス ンの受講者が正式レッスンを申し込むとフリーランスの講師に支払うレッスン単価との差 額を得る。このスキーム上、島村楽器はノーリスクだがフリーランスの講師は正式レッス ンの申し込みがなかった場合は島村楽器へ労務を無償で提供しただけとなる。要するに発 注者である島村楽器は「仕事が欲しければ自分で努力して得ろ」という立ち位置にあり、 フリーランスの音楽講師を実務的にも精神的にも優越した関係を利用することで成立する ビジネスモデルを構築していたことになる。また、島村楽器は労働に対する報酬の支払時 期が60日を超える条件に設定していた。このことも違法行為として勧告されている。 昨年11月から新フリーランス法が施行されている。コロナ化を経て在宅ワークなどが普 及し働き方の多様が進んだ。無論、フリーランスの事業者も増加している。企業と比較し てフリーランスやフリーランスの事業者は弱い立場に立たされることが多いことから新フ リーランス法が整備された。取引条件を明示する義務、60日以内の支払期日、買いたたき ・返品の禁止、報酬減額の禁止、購入・利用の強要の禁止、不当な労務の提供の強要の禁 止、変更や受領後のやり直しの禁止、虚偽の募集の禁止、育児や介護等への配慮義務など が規定されている。違反して勧告を受け従わない場合は罰金が科される。企業にとって罰 金を支払うことよりも違法行為を公表されることによる悪評が広がることの方がダメージ が大きい。社会的に認知されている企業ならば新聞やテレビ、ネットで報道されることも 考えられる。世の中、仕事を得るために無償で行う仕事がいかに多いか、取引を継続する 為に如何に理不尽な要求を受け入れてきたか、発注者は身に覚えがあろう。「ついでにこ れやっといて」「やっぱりいらなくなった」などというセリフに怯える日々からフリーラ ンスが解放されると良いのだが。(世良 直)
2025.07.22
コンビニ業界の王者セブン‐イレブンが、カナダのコンビニ大手ACTからの買収提案への対応に忙殺される中、鬼の居ぬ間になんとやら…ローソンが、2025年2月期に売上高に相当する営業収益が過去最高を更新する勢いを見せている。 この勢いで、地方でも安定した需要が見込めると目論み、出店戦略を広げようと、人口の少ない過疎地に相次いで新規出店している。 「従来は半径354㍍、人口2000人が出店の目安でしたが、2000人未満の過疎地にも出店できるようになったのです」(流通記者) 北海道稚内市では物流の課題を抱えていたが、4カ月連続の店舗出店により配送効率を確保し、備蓄スペースの拡大や店内調理設備を導入することで安定供給を実現させた。 この成功体験に基づき今年7月4日には、同じ宗谷地方にある人口約7000人の枝幸町に「ローソン枝幸新港町店」をオープンさせている。 ローソンはこうした過疎地などへの出店を「地域共生コンビニ」と位置づけた。 「良い場所があれば、今後は年間新規出店数の1~2割を『地域共生コンビニ』にしたいと営業本部は考えているようです」(同) コンビニをインフラとして機能させつつ、本体事業の成長も図るという構えだ。 業績好調の背景に商品構成の改革が挙げられる。新型コロナの影響を受けた2020年、ローソンは大変革実行委員会を立ち上げ、内食や日用品など顧客のニーズを徹底分析した。 その結果商品構成を見直し、結果的として全国のほとんどの店舗を改装し、飽和状態といわれた国内市場でも、改革により出店余地を拡大させることができた。 その結果が、先に述べたような小さな商圏人口の地域でも出店が可能になったことだ。地域貢献で成長しようと、過疎地に青いローソンが増えていく。
2025.07.19








