政治•経済 欧米という言葉は死語になったのか?
欧米という言葉は死語になったのか?
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2026/04/14

 欧米という言葉は、かつて自由民主主義や資本主義という共通の価値観を共有する強固な一帯を指す代名詞であった。しかし、トランプ政権の誕生とその再来を経て、この言葉はもはや国際情勢の実態を反映しない死語へと変質しつつある。米国がアメリカ・ファーストを掲げ、多国間主義から離脱して自国の利益を最優先する姿勢を鮮明にしたことで、戦後の国際秩序を支えてきた大西洋同盟の土台は根本から揺らいでいるのである。

トランプ政権下での米国は、NATO(北大西洋条約機構)を互助組織ではなくコストとして捉え、欧州諸国に対して防衛費増額の圧力を強めるなど、同盟関係を商取引の論理で塗り替えた。これに対し、欧州側、特にドイツやフランスは、もはや米国を無条件で信頼できる安全保障のパートナーとは見なせなくなった。欧州諸国が提唱し始めた戦略的自立という概念は、米国への依存から脱却し、独自の防衛・外交路線を歩もうとする意志の表れであり、それは米国との間に生じた亀裂が単なる一時的な政策の不一致ではなく、不可逆的な構造変化であることを示唆している。

かつての欧米は、冷戦期における共産圏への対抗軸として機能していた。しかし、現在の国際社会において、米国が保護主義を強め、欧州が多国間協調や環境規制を重視する中で、両者の利害関心が一致する場面は劇的に減少している。デジタル課税や通商政策、中東情勢への対応を巡る対立は、大西洋の両岸で共有される価値観がいかに空洞化しているかを物語っている。米国は内向きなナショナリズムへと傾斜し、欧州は独自の統合体としての生存戦略を模索しており、もはや両者を一つの西側として一括りに論じることには無理がある

結局のところ、欧米という枠組みは、米国が世界の警察官として欧州を庇護し、欧州がその指導力に従うという特権的な時代背景が生んだ幻想に過ぎないのかも知れない。トランプ政権がもたらした衝撃は、その幻想を冷酷に打ち砕いている。現在の国際情勢において必要なのは、米国と欧州を画一的なブロックとして捉える古い認識を捨て、それぞれが独自の力学で動く個別の主体であることを認めることである。欧米という言葉が響かなくなった現実は、私たちが多極化し、より複雑化した新しい世界の入り口に立っていることを象徴している。

(ジョワキン)

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