社会•事件 アーバン・ベアの次に大量のアーバン・ディアが街にやってくる
アーバン・ベアの次に大量のアーバン・ディアが街にやってくる
社会•事件

2026/04/14

 アーバン・ベアの次に大阪の都心にアーバン・ディアが現われた。その正体は国の天然記念物に指定されている“奈良のシカ”だ。その証拠は「角きり」された痕のあるシカがいたからだ。角きりされるのは奈良のニホンジカだけだ。

 奈良県の山下真知事は「(奈良のシカだったとしても)奈良公園を出たら天然記念物ではなく野生動物」と、捕獲したシカを奈良公園に運んで放すことを断った。奈良公園もシカが増えすぎて1頭でも減らしたからだ。

現在全国に生息するシカは、エゾジカも合わせると推定300万頭を優に超える。毎年80万頭以上が駆除されているが、減少する気配は見えない。すでに中山間地では、シカこそ農地を荒らす最大の害獣として防御や駆除に追われている。

昨年クマが市街地に多数出没して問題になったが、シカも続々と街に出てくる可能性がある。クマのような人身被害の心配はあまりないが、それでもダニやヒルを人里に運ぶし、下手に近づくと蹴られたり角に刺されたりするかもしれない。

クマによる2025年度の被害者数は今年2月までに237人に上り、過去10年で最多。死者数は北海道(ヒグマ)や東北(ツキノワグマ)を中心に計13人で初の2桁となった。

環境省はクマについては、都道府県で対策を作成する際のガイドラインを改定した。基本方針を「保護」から「管理」へと見直すもので、対策は大きな転換点を迎えている。

 被害が増大した背景には、餌であるブナやドングリの凶作、森林荒廃による里山の消滅などが挙げられているが、その原因を作っているのが、森林を食べ尽くす北海道のエゾジカと本州のニホンジカだ。

アーバン・ディア対策に最も有効なのは、それを主食とするオオカミの導入だ。成功例は米国の「イエロストーン国立公園」とドイツなど欧州各国だ。この2つのケースに共通なのは、当該地のオオカミは絶滅したが、米国の隣国カナダにはシンリンオオカミが。ヨーロッパに隣接するロシアなどにはタイリクオオカミが生息していることだ(2種は同種)。

奈良のシカの移動に県境がないように、オオカミに国境はないから移植は人間様に工夫があればある程度可能だが、日本にかつて生存していたニホンオオカミはすでに世界のどこを探してもいない(エゾオオカミはタイリクオオカミの亜種)。

日本でも「人と森との共存目指す~一般社団法人日本オオカミ協会」が、オオカミ移殖を目指して啓蒙活動に励んでいる。「オオカミを日本の森に放ったら人を襲うのではないか」。これを“赤ずきんちゃんシンドローム”というが、このオオカミへの恐れは根強い。

オオカミ協会は「これは誤解」と説いて回っているが、「前例がないことはやらない」行政が、この主張を受け入れるとは考えられない。日本産の農作物を食べたいならシカを減らすシカないのだが…(梛野順三)

 

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