政治•経済 激化する中東情勢 中国はどう捉えているのか
激化する中東情勢 中国はどう捉えているのか
政治•経済

2026/03/10

 2026年3月現在、中東情勢はイラン指導層を標的とした大規模な軍事攻撃や、それに伴う地域全域への戦火の拡大により、かつてない激動のさなかにある。この深刻な事態に対し、中国は「責任ある大国」としての外交的地位の確立と、自国の経済的利益の保護という二つの側面から、極めて計算高いスタンスを貫いている。

中国政府は、米国とイスラエルによるイランへの軍事行動に対し、一貫して「主権の侵害」であるとして強い非難を表明している。王毅外相は、サウジアラビアやイラン、さらには欧州諸国の外相と相次いで電話会談を行い、いかなる理由があろうとも民間人を巻き込む無差別な武力行使は受け入れられないと強調した。中国にとって、中東の安定は単なる平和への願いではなく、国家戦略である「一帯一路」構想の要所を守るための必須条件である。そのため、軍事行動の即時停止と対話による解決を強く求め、中東問題に関する特別特使を現地に派遣するなど、調停者としてのプレゼンスを急速に高めている。

しかし、中国の動向を読み解く上で欠かせないのが、冷徹な経済的リアリズムである。中国はイラン産原油の最大の買い手であり、ホルムズ海峡の封鎖やエネルギーインフラの破壊は、自国の経済成長に直結する。特に、AI開発のためのデータセンター増設に伴う電力需要が急増している現在の中国にとって、中東からのエネルギー供給の途絶は致命傷になりかねない。興味深いことに、中国はイランへの政治的支援を口にする一方で、実際の行動においてはサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸諸国との連携を強化している。これは、イランの既存の権力構造が揺らぐ中で、リスクを分散させ、どの勢力が台頭しても自国のエネルギー調達ルートを確保しておこうとする全方位外交の表れといえる。

さらに、中国はこの混乱を米国のリソースを枯渇させる絶好の機会とも捉えている。米国が中東の泥沼に足を取られ、高価なミサイルや弾薬を消費し続けることは、米国の視線がアジア太平洋地域から逸れることを意味する。中国のメディアやシンクタンクからは、米国の軍事力が中東という「二次的な劇場」で消耗されることを歓迎するような論調も見え隠れする。

中国は現在の中東情勢を、自国の外交的影響力を誇示する舞台として活用しつつ、実利面では最大限の自制を保っている。米国を「混乱の元凶」として非難し、自らを「平和の推進者」と定義することで、グローバルサウス諸国からの支持を取り付ける狙いがある。だが、その根底にあるのは、戦火が自国のエネルギー安全保障を脅かさない範囲で、米国が疲弊していくのを静かに見守るという、極めて戦略的な静観の姿勢である。

(ジョワキン)

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