第42回 椎野礼仁のTANKA de 爺さん 福島
連載•小説
2026/02/09
カタカナでフクシマと書くときその場所は此岸と彼岸、隣あう地
あの日から葉に置く露のひとつひとつ 汚されたると思う慄然
もう前と同じ気持で暮らせない なにもできない俺であっても
言い知れぬ恐怖孕みてこの夏よ 暑さの意味がまったく違う
言い知れぬ不安を通奏低音に次の価値観突き詰めてゆく
食物に水に大地に大空に無垢な気持ちを持てぬ くやしい
露をおき光をはじく紫陽花のひとつひとつにまがまがしきもの
時事詠はほとんど詠まない。少しの時間、新左翼運動に身を置いた自分にとっては、異議申し立てや鼓舞であっても、直截な言葉でアジテートすることにためらいがある。運動から身を引いた身にあっては、資格がないような気がする。こうやって書いていること自体、本当は、せいぜいよく言って、野暮だと思っている。
そんな中で、上掲の作品群は、精一杯の僕なりの時事詠と言えるかもしれない。15年前の作品だが、三月が近づいてきたので、ほこりを払って虫干ししてみた。
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