連載•小説 1カット8800万円で落札された歌麿の大傑作『深ク忍恋』
1カット8800万円で落札された歌麿の大傑作『深ク忍恋』
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2025/10/20

歌麿の代表作と言われている傑作『歌恋之部』は、『当時三美人』と同じ1793(寛政5)年にリリースされている。年齢も・身分・境遇も異なる5人の市井の女性たちが恋にふける姿を、1人1人リアルに描いた作品である。

この中の『深忍恋』はキセル片手にお歯黒、つまり既婚の女性が不倫を想像させる恋心を抱く様を、『物思恋』はやはり眉のない既婚女性(ないし後家)が頬杖をつきながら物思いにふける姿を、『夜毎ニ逢恋は恋人から来た手紙を開きながらときめく若い女性を、『稀ニ逢恋』はうつむきがち滅多に会えぬ相手を想う女性『あらはるる恋』はうつむいたまま、胸元がはだけているのにも気づかず思い詰めたような女性を……と、いずれも女性の内面に深く入り込ん表現が目を引く

2015(平成27)年にフランスで行われたオークションでは、このうち『深ク忍恋』が74万5800ユーロで落札された。円換算すると当時の相場で8800万円超これは2023(令和5)年3月にニューヨークで葛飾北斎『神奈川沖浪裏が約280万ドルで落札されるまで浮世絵の落札額としては最高だったという。

黄表紙、狂歌に代わって、歌麿の錦絵という新たなドル箱を創り出した蔦重第2の全盛期と言っていいだろう。しかし、一方で幕府は一度目を付けた相手の監視を怠ってはいなかった。(つづく)

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