政治•経済 マダガスカル・クーデターの背景:慢性的な国民の不満と大統領の孤立
マダガスカル・クーデターの背景:慢性的な国民の不満と大統領の孤立
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2025/10/21

2025年10月に東アフリカ沖の島国マダガスカルで発生したクーデターは、アンドリー・ラジョエリナ大統領の政権を崩壊させた。このクーデターの直接的な契機は軍の一部による権力掌握宣言だが、その背景には、長年にわたる国民の生活苦と大統領の統治に対する不満が深く関与している。

クーデターに先立ち、2025年9月下旬から大規模な反政府デモが首都アンタナナリボを中心に発生していた。デモの主要な原因は、国民生活に直結する慢性的な停電や断水といったインフラの問題である。マダガスカルは世界最貧国の一つであり、国民は貧困と劣悪なインフラに苦しんでいる。特に都市部の若者世代が主導となり、政府の対応の遅れや無策に対する強い怒りを表明した。これらの生活苦に起因するデモは、当初は平和的な抗議活動であったが、次第に規模を拡大し、政権への直接的な圧力となっていった。

デモが激化する中で、国内の治安維持にあたる軍の一部が反政府デモに同調する動きを見せた。軍は大統領を支持する勢力と、反政府デモ側に立つ勢力に分裂し、ラジョエリナ大統領との間で深刻な権力争いが勃発した。この軍の分裂は、大統領の権力基盤が揺らいでいることを示しており、クーデター成功の決定的な要因となった。軍幹部は、クーデター後に「最大2年の移行期間を設け、新憲法制定や選挙を実施する」と宣言し、民政移管を約束している。

ラジョエリナ大統領自身、過去に不法な政権交代を経験しているという経緯も、今回のクーデターを理解する上で重要である。彼は、2009年のクーデターで当時の大統領を辞任に追い込み、軍の支持を得て暫定大統領に就任した。しかし、国際社会はこれを「不法な政権交代」として非難している。こうした経緯を持つラジョエリナ政権は、本質的に不安定な政治基盤の上に立っていたと言える。長引く経済の低迷と生活環境の改善が見られない中、今回のインフラ危機をきっかけに、国民の不満が爆発した。そして、軍の一部が国民の不満を背景に権力掌握に踏み切ったことが、今回のクーデターの最も明確な背景である。大統領は旧宗主国フランス軍の支援を受け、国外へ脱出している。

マダガスカルのクーデターは、慢性的なインフラ問題と貧困に端を発した大規模な反政府デモに対し、軍の一部が同調して大統領から権力を奪取したという構図だ。国民の生活苦と、それに応えられない政権への不満が、軍部を動かす決定的な力となり、政権交代という結果を招いた。

(ジョワキン)

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