2025/12/09
国による生活保護費の基準額の引き下げを違法だと認めた6月の最高裁判決を受け、厚生労働省が、減額分の一部を全生活保護受給者に支給する方針を決めた。最高裁では、引き下げの手続きに過誤があったと判断されたため、厚労省は専門委員会での議論を踏まえ、違法とされた方法とは別方法で引き下げるという。ただ、再び引き下げは実施されるため、引き下げ前との差額の全額補償を求めていた原告代理人弁護士らからは批判が噴出。原告以外の受給者が新たな訴訟を起こす可能性などもあり、紛争の長期化が避けられない模様だ。
今回の最高裁判決で問題になったのは、厚労省が2013~15年、食費や光熱費などの「生活扶助」の基準額を最大10%引き下げた措置。物価下落率を反映させた「デフレ調整」により約580億円、一般低所得者との均衡を図る「ゆがみ調整」により約90億円、計約670億円が削減された。
■最高裁は金額そのものではなく手続きを問題視
最高裁は、このうちデフレ調整による4・78%の引き下げ率は、厚労省が専門家に諮らずに独自算出したことなどには合理性がないとして問題視。「「引き下げの判断の過程や手続きに過誤、欠落があった」と認めて違法と判断し、減額処分を取り消した。
一方、最高裁はゆがみ調整は適法とし、厚労省の専門委員会の議論でもゆがみ調整を再度実施することは妥当とされたため、ゆがみ調整は行われる。
厚労省はデフレ調整に代わり、当時の低所得世帯の消費実態に基づいて改めて算出した2・49%の引き下げ率を適用。違法とされた4・78%よりも引き下げ幅を小さくすることで、全受給者に減額分の一部を補償することにした。さらに、長期に及んだ訴訟の負担などを踏まえ、原告には特別給付金も追加支給し、違法な減額分については全額補償する。追加支給される保護費として、今年度予算案には1055億円が計上された。
■合理性のある対応
違法な減額分は全額補償されるものの、原告側は原告以外も含む全受給者に対して引き下げ前との差額を全額補償するよう求めてきた。このため、厚労省が今後の対応について方針を示した直後、原告代理人弁護士らは11月21日夜、厚労省の決めた方針に猛反発し、改めて引き下げ前との差額の全額補償を訴えた。
最高裁は、引き下げ自体を違法としているわけではなく、それを決める手続きに瑕疵があったとしており、厚労省が専門家委員会をたちあげて議論を進め、全体では一部補償とはいえ、違法減額分については全額補償するとした対応方針には合理性があるように伺える。
原告代理人弁護士らは、このまま一部補償に納得せず、「全額補償」を求めて戦い続けるつもりなのか。専門委員会の議論を経た上で政府として「一部補償」を決めたのだから、いったんはそれを受け入れた上で今後の戦略を検討すべきではないだろうか。紛争が長期化すれば、一部支給の実施すら先送りになる恐れもあり、最低限の暮らしを保障するための生活保護制度の根本にも関わりかねない。(桜田亮)
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