1998年7月、埼玉・宮代町で、夫婦が取引先の富士銀行(現:みずほ銀行)春日部支店の男性行員(当時31歳)に絞殺されるという事件(無期懲役)が起きた。同行員は、この夫婦から2500万円の債務を負い、返済に窮しての犯行だった。 この事件の遠因として。この行員が地方中堅私大出身者だったことを挙げるメディアもあった。バブル全盛期の人材不足を補うため、これまで採用してこなかったレベルの大学から無理な採用をしたためだという指摘である。いまなら「学歴差別」と糾弾されかねないが。 日の丸投資銀行最強と謳われ、「M&A請負人」を自他ともに認める野村證券。2025年のLSEG(英ロンドン証券取引所グループ)によるリーグテーブルにおいて、同社は公表ベースの関与金額が23兆円超を叩きだし1位に輝いた。 ただし国内では圧倒的首位の野村證券だが、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなどバルジブラケット(グローバル投資銀行)との戦いでは後塵を拝している。そして、金融業界への「人材供給源」とヤユされるほどの人材流出でも名をはせている。 その“人材”に問題が生じた。24年7月、同社社員(30)が、多額の借金を抱えた末、顧客の夫婦宅から現金を奪って放火したとして起訴され、強盗殺人未遂と現住建造物等放火の罪に問われている(3月3日判決公判=懲役18年)。 エリートであるはずの一流銀行「富士銀」で起きた事件とディテールズに違いはあれど、犯罪動機に借金が潜んでいることに類似性がある。 野村証券はこの事件を機に顧客訪問時の管理を徹底するなど、不祥事の再発防止策を次々と講じた。こうしたなかで、ある指定信用情報機関を利用して、主にウェルス・マネジメント部門(旧営業部門)社員に信用情報の提出を求める“借金調査”を行ったとされる。 クレジット会社などの信用情報機関は、個人でも情報開示を求めればクレジットやローンの契約内容、支払い状況、残債額、200~800の数値で示される信用指数など自身の信用情報やクレジット・ガイダンス情報を閲覧できる。 同社は事件以降、同部門の部店長や内部管理責任者、担当部長、統括課長、ポスト課長などの管理職へ個人情報の取得を案内し、これら部門の管理職は、すでに信用情報開示報告書の提出を終えたとされる。そして26年1月には、非管理職の営業社員にも厳秘扱いで提出要請が出たとされている。 信用情報機関からは、信用情報の提出を社員に求める会社のやり方に対して警鐘を鳴らしたともいわれ、会社が社員に信用情報の提出を求めることの是非が問われている。(梛野順三)