政治•経済 社会•事件 茨城県が不法就労外国人の情報に報奨金制度を検討
茨城県が不法就労外国人の情報に報奨金制度を検討
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2026/03/22

 茨城県が導入を検討している「不法就労通報報奨金制度」が議論を呼んでいる。市民から不法就労の情報提供を募り、摘発につながった場合に約1万円の報奨金を支払うという仕組みだ。制度の是非をめぐり「実効性のある対策だ」と評価する声がある一方、「密告制度ではないか」「外国人差別を助長する」といった懸念も広がっている。議論の背景には日本社会が抱える外国人労働問題の複雑さがある。出入国在留管理庁の統計によれば茨城県の不法就労外国人は2024年に3452人と全国最多で3年連続で1位となっている。農業が盛んな同県では外国人労働者の存在が不可欠である一方、制度の隙間を突いた違法就労も一定数存在する。違法状態が放置されれば、真面目に働く外国人や適正に雇用する企業が不利益を受けるという問題が生じる。行政として対策を強化する必要性は理解できる。

しかし、通報に報奨金を付ける制度には慎重な議論が欠かせない。市民の監視を促す仕組みは、運用を誤れば疑念や偏見を拡大させる危険を伴う。外国人を一括りにした疑いの目が広がれば、地域社会の分断を招きかねない。県側は個人情報を受け付けないなど人権侵害につながらない制度設計を検討しているとしている。個人ではなく不法就労の疑いがある事業者の情報を通報の対象とする方針だという。制度の趣旨は、違法行為を是正し、適正な雇用環境を守ることにあると説明する。

不法就労は個人の問題だけではなく、労働力不足や技能実習制度の歪みなど構造的要因とも深く関わっている。違法雇用を生む事業者側の責任や外国人労働者が不安定な立場に置かれる制度そのものにも目を向けなければならない。違法を見逃さない姿勢と正当な外国人労働者を守る施策、この二つをどう両立させるかが問われている。報奨金制度が社会の分断を深めるのか、それとも公正な労働環境を守る手段となるのか。行政には透明で慎重な制度設計と丁寧な説明が求められる。

(坂本雅彦)

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