2025/07/01
人の命を奪う極刑の死刑が6月27日午前、白石隆浩死刑囚(34)に執行された。法
務省が死刑執行に踏み切ったのは、2022年7月に執行した秋葉原無差別殺傷事件の加
藤智大死刑囚(当時39歳)以降、2年11か月ぶりだ。法務省が執行の事実と人数を公
表するようになった1998年11月からみると、最長の停止期間を経て再開された死刑
だが、臨時記者会見を行った鈴木法務大臣は「慎重の上にも慎重な検討を加えて執行を命
令した」と歴代法相とほぼ同じ説明をするにとどまり、なぜ106人もいる確定死刑囚の
中から白石死刑囚を選択したかについて明確な理由は述べなかった。
■男女9人を殺害
白石死刑囚は、2017年に神奈川県座間市のアパートで男女9人の遺体が見つかった
事件で、被害者をSNSで誘い出した上で性的暴行を加えて殺害し、現金を奪ったなどと
して強盗殺人などの罪に問われ、2021年1月に死刑が確定した。自殺願望者をSNS
で探し出し、自己の性的、金銭的要求を満たすために犯行に及んでおり、当時は凶悪事件
として社会を震撼させたのはまだ記憶に新しい。ただ、死刑囚が起こした事件は全て凶悪
犯罪に変わりはなく、今回の事件の背景事情などについては、多くのマスコミが既に言及
しているため、本稿では法務省の情報開示に後ろ向きな姿勢を深掘りしていきたい。
■106人の死刑囚から選択も理由説明なし
6月27日午前に臨時記者会見に臨んだ鈴木法相は、「本件は裁判で十分な審理を経た
上で死刑判決が確定した」「死刑は人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であり、当然、慎重
な態度で臨んで行かなくてはならない」「一方で、法治国家として、裁判で確定した計の
執行は厳正に行わなければならない」などと説明した。
確定死刑囚だった袴田巌さんが2024年12月に再審で無罪になり、再審法の見直し
に向けた議論も進んでいない現状で、なぜ約3年ぶりの執行を決断したのか。そして、な
ぜ白石死刑囚を選んだのか――。鈴木法相の会見で、各マスコミはこうした点に注目した。
だが、結局のところ出てきたのは、過去の死刑執行時に別の法務大臣がした答弁と同様
の説明しか出てこず、さらには「慎重に慎重」という毎度おなじみの回答だった。
呆れた司法記者も少なくなく、ある大手新聞社の司法記者は「死刑は、刑事訴訟法で死
刑判決確定から6か月以内に執行するよう定められているのに、ただでさえ原則が守られ
ていない。なぜ106人もいる死刑囚の中から確定から日の浅い白石死刑囚が選ばれたの
か、本来はもっと具体的に説明すべきだ」と指摘する。
■なぜ未執行が100人超?法務省は説明責任果たせ
白石死刑囚の前に死刑が確定した死刑囚は100人ほどおり、犯人性に全く争いのない
事件も少なくない。残る105人の確定死刑囚のうち、再審・裁判のやり直しを求めてい
るのは49人で、死刑が確定した上で何も争っていない死刑囚については、執行を先延ば
しする理由は本来ないはずだ。ただ、ある法務省幹部は「高齢の死刑囚は人道的観点から
執行しにくい」と明かし、中には50年以上、確定死刑囚のまま拘置所に入っているケー
スもある。
死刑執行を免れ続け、拘置所の中で衣食住を確保しながら生き続ける死刑囚たち。もち
ろんその生活費用の原資は国民の税金である。大切な家族を失った被害者遺族らにすれば
、法治国家でありながら100人以上の刑が執行されない現状は異常にうつるだろう。
なぜ未執行の死刑囚が100人超にまで増えてしまったのか。法務省は死刑執行の運用
を見直すと共に、執行時には国民が納得できるよう説明責任を果たすべきだ。
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