2026/01/19
ベネズエラのマドゥロ大統領を捕らえたトランプ政権は、デンマーク自治領のグリーンランドにも食指を伸ばしている。
グリーンランドには、中国が外交カードとして利用するレアアースがある。ジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ガドリニウム (Gd)など、エレクトロニクス製品や兵器生産に必要不可欠な重希土類が豊富にあるという。
トランプ大統領は、第1期政権の2019年にもグリーンランド領有に意欲を示したが、当時はトランプのジョークと思われ、真面目に相手にされなかった。だが、二期目のトランプ政権が、昨年6月のイランへの爆撃、12月のナイジェリアへの攻撃、1月のベネズエラ大統領の拘束と、ピースメーカーどころか、軍事力行使を躊躇しなくなったことで、笑い事では済まなくなった。
欧州7カ国の首脳は1月6日に「グリーンランドの帰属は、グリーンランドの住民が判断すべきだ」とする共同声明を発表。ロイター通信は8日、アメリカ政府が「住民一人当たり、1万ドル~最大10万㌦(約1500万円)、総額約9千億円の一時金を支払う買収案を協議中」と伝えたが、面積216万km2(日本の5.7倍)の世界最大の島の買収には、安すぎる金額だ。

軍事力をチラつかせて買収を提案するトランプ大統領
グリーンランドのイェンス=フレデリク・ニールセン首相とデンマークのメッテ・フレデリクセン首相は、13日にコペンハーゲンで共同会見。「米国かデンマークのいずれかを選択しなければならないのなら、我々はデンマークを選ぶ」と述べた。この発言にトランプは、「大きな問題になる。グリーンランドから立ち去れ」と恫喝した。
戦前、アメリカ議会がアジア系移民の全面禁止法案を可決した際、駐米日本大使が「重大なる結果を誘致すべし」との書簡を送ったのを、軍事的威嚇だと米議会が非難し、排日移民法が成立した。トランプの発言は、NATO加盟国のデンマークに対する軍事力による威嚇と言えよう。
ニールセングリーンランド首相(左)「米国よりデンマークを選ぶ」
グリーンランド住民の85%は北米大陸の先住民イヌイット(エスキモー)と同種族のモンゴロイド系だから、日本人と顔立ちが似ている。
アメリカ先住民にチェロキー族という種族がいる。18世紀のチェロキー族は白人入植者と戦ったが、1794年にアメリカ政府との間に休戦条約を結び、白人の文明を受け入れて「文明化五部族」と呼ばれた。
だが、彼らの居住地(ジョージア州)で金鉱が発見されると、アンドリュー・ジャクソン大統領は休戦協定を破棄して「セミノール戦争」が勃発。チェロキー族は、不毛の地とされたオクラホマのインディアン準州に強制移住させられた。(涙の旅路:Trail of Tears)
オクラホマに強制移住させられるチェロキー族
だが、そこも安住の地ではなかった。石油が発見されると、1889年4月22日にアメリカ政府は白人入植者にオクラホマへの入植を解禁し、早い者勝ちで入植者が殺到したのだ。

一斉にオクラホマへ雪崩れ込む入植者の大群
こうした歴史があるから、グリーンランドの住民が、アメリカの支配を歓迎するとは考えにくい。住民投票のような民主的な手続きでは勝ち目がないから、トランプがグリーンランドを手に入れるには武力併合しかない。ロシアの高官が、「我々がクリミアでやったように住民投票で帰属を決めればいい」というわけだ。
(青山みつお)
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