社会•事件 カスハラで勤務先を提訴 企業は早期の対策必須
カスハラで勤務先を提訴 企業は早期の対策必須
社会•事件

2025/11/13

顧客らから著しい迷惑行為を受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を巡り、被害を受けた従
業員の遺族が勤務先を訴えた。勤務先がカスハラを放置したなどとして、安全配慮義務による損害
賠償を求めているという。取引先や顧客によるカスハラから社員を守ることは、会社にとって重要な
責務であることを改めて認識させる訴訟と言えそうだ。
 今回の訴えは、栃木県の営業所で勤務していた農業機械販売会社の男性社員がカスハラにより
精神疾患を発症したが、勤務先がカスハラ対策を講じなかったなど安全配慮義務違反があったと
して、男性(昨年、別原因で死亡)の妻が10月23日に宇都宮地裁に起こした。
 カスハラについては、今年6月、企業に対策を義務付ける改正労働施策総合推進法が成立。来
年中には施行され、対策が強化される見通しだが、改正法の施行を前にして、勤務先の安全配慮
義務違反が素長で問われるのは極めて珍しい。

▼カスハラで精神疾患の労災は108人
訴状などによると、男性は同社の栃木県の営業所の所長として勤めていた2006年、取引先との
トラブルに見舞われ、金銭を要求されたり、退職を迫られたりした。男性は上司に相談したが、会社
からは「警察や弁護士に相談するな。お前の将来はない」などと取り合ってもらえなかったといい、
会社が「従業員の心身の健康を損なわないよう注意する義務に違反した」などとして、カスハラを放
置したと主張している。
 男性は当時50歳代。一連のカスハラによって精神疾患を患った後に労災認定を受け、別の病気
で昨年死亡したという。厚生労働省の統計によると、カスハラが原因で精神疾患となって労災認定
される労働者は増えており、2024年度は計108人に上った。過去にはカスハラが原因で自殺した
ケースも確認されており、職場の安全確保は重要な課題となっている。

▼「夫の人生狂わせた」
今回の提訴に踏み切った男性の妻は記者会見を開き、「必要な支援や配慮を欠き、夫の人生を
狂わせた。全ての企業が職場の安全とメンタルヘルスケアを最優先とする意識改革を促す一助と
なることを心から望みます」と訴えたという。古い事案で、企業がカスハラを放置したことの立証の難
しさなどを考慮すると、今回の訴訟で原告が勝訴するのは容易ではないかもしれない。
ただ、妻の悲痛な叫びが、多くの企業に届くことにこそ、今回の訴訟に意義があるといえよう。来
年の改正労働施策総合推進法の施行を見据え、企業には早期のカスハラ対策が不可欠だ。

TIMES

社会•事件