政治•経済 社会•事件 中国による日本産水産物の輸入再開の背景と地政学的課題
中国による日本産水産物の輸入再開の背景と地政学的課題
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2025/06/10

 中国が日本産水産物の輸入再開を進める方針を明らかにした。この動きは、2023年8月の東京電
力福島第一原発の処理水放出を理由とした輸入禁止措置の緩和を意味する。表面上は両国間の経
済的関係改善の一歩に見えるが、その背景には複雑な政治的・経済的意図が絡む。
 まず、中国が輸入再開を決めた背景には、トランプ米政権の貿易保護主義の高まりがある
。2025年1月に第47代大統領として復帰したドナルド・トランプ氏は、選挙戦中から「アメリカ
第一」を掲げ、対中関税の大幅引き上げや輸出規制の強化を公約してきた。これに対し、中国は
米国との貿易摩擦を緩和しつつ、経済的孤立を回避する戦略を模索している。日本との貿易関係
の強化は、米国依存からの脱却を図る一環と見られる。特に、日本産水産物は中国市場で根強い
需要があり、輸入再開は中国国内の消費者需要に応えると同時に、対日関係の改善をアピールす
る狙いがある。
 さらに、中国のこの動きには、日米同盟に楔を打ち込む政治的意図も透けて見える。日米は安
全保障や経済面で緊密な連携を深めてきたが、トランプ政権の保護主義が日本経済に圧力をかけ
る可能性は否定できない。米国は日本に対し、自動車や農産品の市場開放を強く求めており、対
米貿易黒字を問題視する姿勢を強めている。中国はこうした日米間の摩擦を利用し、日本との経
済協力を深めることで、対米圧力を間接的に牽制しようとしている。輸入再開は、こうした戦略
の一環として、日本に対する柔軟な姿勢を示す象徴的な動きといえよう。
 しかし、日本側から見れば、中国の姿勢軟化は歓迎しつつも、慎重な対応が求められる。日中
間には、尖閣諸島を巡る領有権問題や台湾海峡の緊張など、地政学的リスクが根強く存在する。
尖閣諸島周辺では、中国公船の領海侵入が常態化しており、2024年だけでも30回以上の侵入が確
認されている。また、台湾を巡る中国の軍事的圧力は増しており、2025年に入ってからも人民解
放軍の演習が頻発している。これらの動向は、日本にとって安全保障上の脅威であると同時に、
経済面での中国依存リスクを改めて浮き彫りにする。
 日本経済は、こうした地政学的リスクを背景に、「脱中国依存」を加速する必要がある。サプ
ライチェーンの多元化や、東南アジア・インドなど新興国への投資拡大が求められる。既に日本
企業は、中国市場の不確実性を軽減するため、ベトナムやインドネシアでの生産拠点拡充を進め
ている。この傾向は、トランプ政権の保護主義と中国の地政学的リスクが重なる中で、ますます
顕著になるだろう。
 
 結論として、中国の日本産水産物輸入再開は、トランプ政権の保護主義への対抗策と、日米結
束への牽制という中国の戦略的意図を反映している。日本はこれを経済的機会として活用しつつ
、尖閣や台湾を巡る地政学的リスクを軽視せず、脱中国依存の取り組みを継続する必要がある。
国際環境の不確実性が高まる中、日本経済は柔軟かつ戦略的な対応が求められる。

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