社会•事件 アジア系初のNY市長の「富裕層課税」でユダヤ・WASP去りいきなり試練?
アジア系初のNY市長の「富裕層課税」でユダヤ・WASP去りいきなり試練?
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2025/11/29

米国で4日に実施されたニューヨーク(NY)市長選、ニュージャージーとバージニアの両州知事選の選挙で、反トランプを掲げる首長が当選した。3つの選挙戦で当選者が掲げたのが、生活問題。有権者の最大の関心は、生活費を含む経済問題だったことが浮き彫りになった。

NY市長に選出されたゾーラン・マムダニ氏(34)は、初めてのアジア系(インド)市長である。といっても生まれはアフリカ・ウガンダで、多様なアイデンティティを戦略的に打ち出した。ただし、黒人系有権者からの支持は限られている。

マムダム氏は、「家賃の値上げ凍結、バス・保育の無料化、公営スーパーの運営、生活必需品・生鮮食品の価格抑制などを公約に掲げ、財源の一部は富裕層課税で賄う」と表明した。

 反共産主義を掲げるトランプ大統領にとって、マムダム氏の公約は「共産主義者の証」ということになるが、生活費の高騰に悩むNY市民の多くは同氏の公約を支持した。マムダム氏に対する「共産主義者」、「民主党極左の政治家」といった懸念に対して、多くの有権者は余り関心を示さなかった。

民主党が圧倒的な勢力を持つニューヨーク市議会では、マムダニ氏の競合相手は、共和党候補のスリワ氏よりも元々民主党ながら無所属で立候補したクオモ氏だった。

クオモ氏は、黒人有権者や高齢有権者の支持は固めていたので、相当手強い候補で、有効投票の約40%は取ったが、マムダニ氏が競り勝った。

 米大統領選で共和党に大敗した民主党は2つ州知事選、そしてニューヨーク市長選を制したことで、2026年11月3日に実施予定の中間選挙に希望の光が射したとの声も聞こえる。

だが、トランプ陣営は、「大統領はこの3つの選挙地では元々不人気だった」とあまり意に介していない。その一方で、「トランプ氏の反移民政策は多くのアフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人から敬遠された。大多数の有権者は、トランプ氏の移民政策は行き過ぎたと考えている」とマムダム氏当選は順当な結果だとする向きもある。

トランプ氏も昨年11月の大統領選でインフレ対策など労働者の不満を吸収する選挙作戦を展開して勝利した。同様にマムダニ氏も有権者に密着した生活問題をアピールして勝利した。その意味で、両者の選挙作戦は酷似している。

さてマムダム氏は共産主義者だろうか。第2次世界大戦後の冷戦下では、ファシズムや共産主義に反対する層によって「民主社会主義」という言葉が普及した。かつては「社会民主主義」と同義で使われたが、現在は「社会民主主義の左派」を指すものと受け取られている。

いうなれば、「民主社会主義」は 社会民主主義よりも左派、あるいはより急進的な社会変革を目指す立場といえる。米国では、バーニー・サンダース上院議員のように、社会民主主義的な政策を支持する人々が自らを「民主社会主義者」と称している。マムダム氏は、この範疇に入るだろう。

ニューヨーク市では、WASP(ワスプ=英系プロテスタントの子孫)は4割を切り、減り続けている。アジア系はヒスパニック、黒人に次ぐ第4勢力だが、中国系を筆頭に勢力の伸長は著しい。

マムダニ氏が自身の政治信条を重視し、連邦政府との対立も辞さない強硬政策を行けば、富裕層であるWASPやユダヤ人がニューヨークから去っていくだろう。そうなれば、市の財政も苦しくなる。来年1月に就任するマムダニ氏は、いきなり試練に立たされるかもしれない。(梛野順三)

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