2025/02/23
不切な取り調べが相次いで発覚した検察が、信頼回復に向けて大きな判断を下した。検察トップの畝本直美検事総長が2月19日、法律で義務付けのない任意の取り調べで録音・録画(可視化)を試行すると表明したのだ。取り調べの可視化が法的に義務化されている検察の独自事件で逮捕・勾留された容疑者などのケースに限らず、可視化の対象を拡大させることで、取り調べの適正化を図る狙いがある。
▼検事総長が「長官会同」で試行方針表明
「取り調べのあり方に批判を受けていることは、深く憂慮すべきだ。不適正な取り調べで得た供述は、たとえ真実に沿うものだとしても組織の公正さを毀損する」
2月19日午前、東京・霞が関で開催された「検察長官会同」で、畝本総長はこう言及し、任意の取り調べで可視化を試行する方針を明らかにした。
長官会同は、全国の高検検事長と地検検事正らが年数回だけ一斉に集い、法務大臣や次官らも参加する厳格な場だ。法務・検察庁にとっては、最も重要な会議体の一つとされ、参加したある検事正は「不適正な取り調べが批判され、逆境に立たされている状況を打開するため、マスコミも注目する長官会同の場で今後の方針を明らかにしたのだろう」と推測する。
▼供述誘導疑惑も発覚
検察の取り調べを巡っては、2019年参院選で元法務大臣夫婦が逮捕された大規模買収事件で、東京地検特捜部の検事が任意の取り調べで地元政治家の供述を誘導した疑惑が判明するなど、最高検が不適切と認定するケースが相次いで明るみになっている。
現在は、検察の独自捜査事件で逮捕・勾留された容疑者のほか、殺人など裁判員裁判対象事件で取り調べの全面可視化が法律で義務付けられている。また、法的に義務化の対象になっていない事件でも、逮捕・勾留したケースでは9割超の事件が現場の運用で全面可視化されているのが実情だ。
ただ、逮捕する前段階の任意の取り調べについては、現状では明確なルールがなく、現場の検事の裁量に完全に任されているという。
このため、任意の取り調べについては、容疑者が自白している場面など、検察にとって都合の良い部分のみ可視化されるケースも少なくないとされ、刑事弁護人らを中心に改善を求める声が根強く上がっていた。
検察が任意取り調べでも全面可視化を目指す方針は、当然に歓迎されるべきだろう。ただ、それだけで本当に取り調べの適正化につながるかは不透明だ。取り調べの適正化の実現にあたっては、組織としてのルールや方針に関係なく、容疑者を起訴するという極めて大きな権限をもった検察官それぞれの能力とモラル次第であることは、言うまでもない。
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