社会•事件 価格競争に勝つのはどこか 外食業界に訪れた選別の嵐  業界大異変その2
価格競争に勝つのはどこか 外食業界に訪れた選別の嵐  業界大異変その2
社会•事件

2024/12/26

サイゼリヤにみる価格戦略

 そんな一方、同じ外食にあっても好調なのがサイゼリヤだ。同社が9日に公表した24年8月期決算では、売上高が22・5%増、純利益は58%増の81億円で、過去最高の数字を叩き出しているので、まさに絶好調とでもいう勢いだ。

 サイゼリヤと言えば、周辺環境がどうなろうと「値上げをしない」ことでデフレ経済の象徴的存在としてよく話題となってきた。22年には、その手頃感がデートで用いるにはどうかと、「サイゼリヤのデート論争」なるものまで起こったほどだ。だがそれぐらい、頑なに値上げを拒んできた同社の姿勢はファンの心をつかみ続けてきた。ただ何もしないままでは到底通用しないので、値段は据え置きながらサイズダウンを行ったり、7月10日には優待を廃止したことで、株価が急落するなどということもあった(もっとも廃止と同時に増配が行われているのだが)。

「同社はコスト高に対し、メニューや内容量の見直しで対応。その上手さについては、顧客離れにつながるどころか逆に、『それでも安い』といったお得感で、『量が減った分はほかの注文をしても……』と顧客に思わせ、結果、複数のメニューを頼む顧客を囲い込むという効果によってむしろ、客単価を毎年引き上げることに成功しています」と、同社推しの証券マンも感心する。

 だがそれだけでは、過去最高益とはなかなかならない。そこには別の大きな理由がある。実際、国内に限れば営業利益は約15億円の赤字なのだが、これをカバーして余りあるのが、中国、台湾・シンガポールのアジア事業だ。特に約500店舗を展開する中国を中心に、会社全体の約8割にも当たる約116億円の営業利益をこの地域で稼ぎ出しているのだ(前期比約37%プラス)。中国と言えば世界的なインフレとは別に、コロナ禍からの立ち上がりが悪かったところに、不動産バブルの崩壊もあって個人消費が大幅ダウン。「貧乏人セット」なる、3元(約60円)の朝食に人気が出るほど、デフレ経済真っ只中だ。つまり同社は、インフレにも価格据え置きで対応し、デフレならば独断場とばかりに強みを発揮しているというわけだ。

 そしてこの追い風の下、さらなる勝負を仕掛けようとしている。「中国では1000店舗の出店を目標に、広州の工場建設は既に着工されています。また国内でも、岐阜県で新工場を稼働させるべく、10月17日には地元の地権者などと覚書を交わしました。同社は23年5月に青森・五所川原市に初出店したかと思えば、既に5店舗を展開するなど、地方の出店攻勢に出ています。岐阜の工場建設では、まだまだ手薄な東海・北陸の出店を増やし、10年後には現在の1000店舗から1500店舗にするとしています」。

 インフレの厳しい経済環境の下、捨てる神あれば拾う神もあるといったところか。(以下、続く)

TIMES

社会•事件