社会•事件 不妊治療巡る「特定生殖補助医療法案」が廃案 批判根強く見直しが必須
不妊治療巡る「特定生殖補助医療法案」が廃案 批判根強く見直しが必須
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2025/08/08

 第三者の精子や卵子を用いた不妊治療のルールを定める議員立法の特定生殖補助医療法案について、6月に閉会した先の通常国会では審議入りが見送られ、廃案となった。国内で最初の提供精子による不妊治療が1948年にはじまってから半世紀以上が経過し、不妊治療のルール整備求める声が高まってきている一方で、法案の柱とされた子供の「出自を知る権利」の保障が不十分だとの指摘や、法律婚を前提とした法案の規定への批判が殺到したことが要因だ。新法成立に向け、中身の見直しは必須で、各党は早急な対応に迫られている。

18歳になった後に開示

特定生殖補助医療法案は、自民党、公明党、国民民主党、日本維新の会の4が今年2月、参議院に共同で提出していた。

 柱となった出自を知る権利の保障は、精子や卵子の提供者から提供時に同意が得られた「身長、血液型、年齢等」の個人を特定しない範囲の情報について、子供が18歳になった後に開示できるとの内容で手当された。

 だが、生殖補助医療で生まれた人らで結成する自助グループなどは、「子供のための法案になっていない」と反発。子供が18歳になるまでは提供者の情報が開示されないため、提供を受けた親側反対も強まった。さらに、法律で守られる対象が法律婚の夫婦に限られたことから、同姓カップルらからは「子供を持つ道を法律が閉ざすようなものだ」などと批判ヒートアップした。

法整備は急務

 従来、第三者からの精子提供が始まった1948年当時は、提供者は匿名で、生まれた子供には精子提供などについて告知しないのが大前提だった。

だが、生まれた子供らの知る権利への配慮が進み、「知りたい」との意思を尊重すべきとの声が高まっていき、厚生労働省の部会が2003年に法整備を行うべきとの報告書をまとめた。その後、2020年には不妊治療に公的医療保険を認める方針も掲げられ、生殖医療補助の定義や生まれた子の親子関係を明確にする法律も成立したが、出自を知る権利の議論は先送りされてきた経緯がある。

 先の国会で法案を提出した国会議員側は、「親による告知前に子が先に知ってしまうなど、法律が想定しないことが起こりうる」などとして情報開示の対象を18歳以上に限った。だが、家族のあり方や子供の福祉に関する考え方がこの半世紀で大幅に変化してきていることを踏まえると、反対意見が根強いのはもっともだ。

 一方で、厚労省の部会が法整備を提言してからもう20年以上が経過しており、法整備が急務となっている。次回の国会に向け、各党は改めて当事者らの意見を聞き取るなどして議論を深め、法案を精査する必要がある。

 

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