連載•小説 独走スクープ連載 『我が国の砲身はどこに向けられているのか』~知られざる防衛前線を追う~ 第2回
独走スクープ連載 『我が国の砲身はどこに向けられているのか』~知られざる防衛前線を追う~ 第2回
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2025/11/21

 先日、本サイトにて報じた『我が国の砲身はどこに向けられているのか』~知られざる防衛前線を追う~記事について、さっそくというべきか驚くべき反応があった。それはこの記事の被取材者を通してもたらされた。被取材者によると『記事を見た』と言って防衛省外郭団体関係者を名乗る某人物が問い合わせをしてきた、というのだ。記事だけで被取材者の存在などわかるわけはない。あまっさえそれをピンポイントで問い合わせしてきたというのはにわかには信じ難いことだが、実際それはあったようだ。問い合わせの内容については守秘義務のこともありここには記さないが、勝手な想像をすれば関係者にとってはあの記事は急を要するデリケートなものであったのかもしれない。

それはそうとして、青森県下北郡東通村猿ヶ森である。この広大で渺茫たる砂丘が防衛装備庁の弾道試験場(下北試験場という名称)であることは先の記事にて報じた。そこに施設はあるがこの砂丘全体が防衛省あるいは防衛施設庁のものであるかといえばそうではない。確かに防衛相名義になっている箇所も散見されるが、この砂丘には地権者が少ないながらもいる。ただその数は多くはなくそのほとんどが地元住民である。おそらく先祖代々よりその土地を所有しているのであろう。防衛施設庁がそうした地権者にどのような契約形態かはわからないが賃貸料のようなものを支払っていると想像される。賃貸料の多寡も全くわからない。このような特殊な土地を売買するような奇特な商売人などいない。

この一世紀ほど十年昔日のごとくこういう状態であったのであろう。そしてそういう状態はこれから先も変わりなく続くであろう。数少ない地権者にしてもやっぱりそう考えているに違いない。

 ところが、である。今年に入って猿ヶ森にこれまで経験したことのない〝動き〟が出てきたのだ。

「春先だったかな、背広着た男がふたりやってきてね、砂丘の外側に当たる土地に太陽光の施設をつくるというだべさ、砂丘は防衛省のものだからねえそんなことは土台できないだろうが、その外側というならばねえできんでもないだろうがねえ。それにしても猿ヶ森の土地を買うという人が出てくるというのは初めてのことだ。びっくりしただよ」。

やせた土地で細々と農業を営む鰐淵得二郎(仮名)はこう話す。鰐淵は猿ヶ森砂丘の数少ない地権者に一人なのである。

「(猿ヶ森の土地を買いたいと申し出た人は)この百年いなかったはずだよ。それがわしの代になって来たとはね、びっくらしただ」(鰐淵)。

何事ないことがあたりまえの猿ヶ森に2025年に入り世紀を超えて初めての動きが出てきた。(つづく。敬称略。フリーランスライター廣田玉紀)

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