2025/11/15
青森県の北東部、下北半島のなかほどにあたる地域に猿ヶ森(さるがもり)という場所がある。太平洋に面しているそこは砂丘地帯である。グーグル地図でみてもそこには何もない。地図上のその一帯はただただ白く人工物の表記ひとつ見出せない。正式な地名は青森県下北郡東通村猿ヶ森という。猿ヶ森の大半を占める砂丘猿ヶ森砂丘は約3000ヘクタールあり我が国にある砂丘の中で無双の広さを誇る(※国内最大級砂丘といわれる鳥取砂丘は545ヘクタール)。
ところでこの猿ヶ森砂丘には私たちは一歩たりとも立ち入ることはできない。それはなぜか。この砂丘のほぼ全域が防衛装備庁下北試験場(弾道試験場)だからである。筆者はそこを訪れたが足を踏み入れるどころかそこにある砂丘を目に知ることすら叶わなかった。砂丘を隠すように針葉樹林が、まるで原発施設を覆う高い擁壁のように林立しているのである。防衛装備庁の通り一遍の資料眺めると日々砂丘上では爆弾やらミサイルやらが飛び交っているようなのだ。ここが弾道試験場というからには至極あたりまえのことなのだろうが、それは非日常の風景であることは間違いない。有事でもないのにバンカーバスター(地中貫通爆弾)のような最新兵器が飛んで炸裂しているのだ。太平洋を望むと真一文字に引かれた水平線が空の青と海の青を線引きしている。雄大なパノラマである。このような特殊な地帯が本州の北辺にあるとは多くの人は知らない。
猿ヶ森では今、ひそかにある事態が進行している。日本の防衛前線の実態を追う。(つづく。フリーランスライター 廣田玉紀)
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