2025/12/22
加藤保典「夢幻泡影」より
アレクサに竹内まりや流してと口笛吹きて野菜を刻む
花器の名は「川の流れのように」です膨らみはじめたヤマザクラ挿す
水汲みに行くための靴学校に行くための靴あったらいいなぁ
(再掲)
小上りのおじさんたちは肩叩き叩かれ返しまた肩叩く
初デート宮下公園あるあるはみんながみんなみんなをみてる
カーテンを閉めれば暖色電球が夕餉の南瓜食べよと照らす
先週は加藤さんのこの歌集「夢幻泡影」(むげんほうよう)がいかに類例のない工夫に満ちた“歌集”であるかの紹介に急で、肝心の歌については掲出にとどまった。いかに革命的な仕掛けがあったとしても、歌集であることは紛れもない事実なので、やはり作品に触れてみたい(みてほしい)。
再掲出の三つの歌のうち、最初のものは「夢幻泡影」あとがきp204に書かれているように、2023年に書いた550首の中から友人・知人が選んだベスト3のトップに選出された作品だ。僕も1位に選んだ。結句「野菜を刻む」に惚れた。この一言が、作者像をいっぺんに鮮やかにする。そして上の句に反射して、「口笛吹いて」鼻歌まじりで生活を楽しんでいるふうを的確に描写している・・・だろうか? 僕はあえて、そう思わない解釈を取りたい。現状に満足していない人間像をそこに見たい。願望であるが、短歌の世界の有名な言葉を置いて、この項の末尾とする。「短歌は誤読する権利がある」。(この項、続く)
「夢幻泡影」の情報は http://www.instagram.com/yasunori_kato1007
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