第33回 椎野礼仁のTANKA de 爺さん
連載•小説
2025/11/24
福島師のダメ出し Ⅱ
心臓に小さな鞴(ふいご)の音やまず初めて覚えた肉体の恐怖
先週、上の歌を冒頭に掲げた。NHKカルチャー青山教室「福島泰樹の実作短歌入門」講座の連作の一つとして提出し、他の数人の受講生からはおおむね好評だったと書いた。だがしかし、そこで福島師からダメ出しが入った。
ここまでが先週の大意である。さて、どんな歌評があったのか。「上の句の心臓音をフイゴに喩えたまではまあいい。それにつけた下の句『初めて覚えた肉体の恐怖』が単なる観念の吐露に終わっている」とのことだった。
なるほどと納得するところはあった。しかしさらに師はこう続けた。「今日の他の提出歌から、どの下の句でもいい、持って来てみろ。歌が鋭くなる」。“エエエ、どういうこと?”と思った。ちなみにこの日の他の提出歌は以下のようなものだ。
かの時にけだものくさき俺はいたか赤いメットに恃んでいたか
美しい無念だなんて信じないズタズタになってひっそり生きた
ゴールデン街へ繰り出す彼等を見送って少し疲れて妻へと帰る
売に行く数十冊の本のうち きみにメモした我が歌がある
師に従えばこうなる。
心臓に小さな鞴(ふいご)の音やまず赤いメットに恃んでいたか
心臓に小さな鞴の音やまずズタズタになってひっそり生きた
心臓に小さな鞴の音やまず少し疲れて妻へと帰る
心臓に小さな鞴の音やまずきみにメモした我が歌がある
どういうことを指摘されたのか。あれからずっと考えている。
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