連載•小説 第30回 椎野礼仁のTANKA de 爺さん
第30回 椎野礼仁のTANKA de 爺さん
連載•小説

2025/11/03

 寺山修司「時代はサーカスの象に乗って」

先週は、「寺山修司の言葉を借りて」と題して、寺山の短歌や戯曲、詩などから片言隻句を借用した歌を掲載した。短歌では「本歌取り」という手法が確立されている。よく知られた短歌の言葉を用い、元歌の情緒に少し味つけした歌のことだ。だが先週の提出歌に、まるでパクリの作品が生まれてしまった。

コーラ瓶の中で太った蜥蜴ども底を破って出てはこれまい

この歌の元は、実は一昨年、旅立ってしまったPANTA(頭脳警察)が絶唱「時代はサーカスの象に乗って」を歌う時、時折、前説のように語る芝居の長ゼリフのようなものから、言葉を借りたものだった。しかしこれは寺山の芝居「時代はサーカスの象に乗って」のまさに語りだった。

中学校の頃、公園でトカゲの子を拾ってきたことがあった。コカコーラの瓶に入れて育てていたら、だんだん大きくなって、でられなくなっちまった。コカコーラの瓶の中のトカゲ、コカコーラの瓶の中のトカゲ。おまえにゃ、瓶を割って出てくる力なんてあるまい、そうだろう、日本。

参ったなと思っていたら、先週の末尾に熱烈な寺山フォロワーとして歌評を求めた伊藤裕作から連絡があった。

「下の句“底を破って出てはこれまい”では何のドラマも起きてこない。私なら“底”ではなく“そこ”にすることで、読み手を“そこ”にダブらせたのではないか?」

次に発表するときは、そうさせてもらいます。

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