天才絵師・東洲斎写楽の作品群が「ヒットした」証拠とは
連載•小説
2025/11/20
蔦重のプロデュースによって突如現れた天才絵師・東洲斎写楽。その作品として多くの人がまず思い浮かべるのは、『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』であろう。
盗賊の頭・江戸兵衛に扮した目の隈取りも鮮やかな三代目鬼次が、口をへの字に曲げたままもろ肌を脱ごうと両手をパッと前に開いているポーズ。これが写楽本人の肖像と勘違いしていそうなくらいよく知られた傑作である。
『市川蝦蔵(えびぞう)の竹村定之進』は大きな鷲鼻に二重アゴ、橙色の紋付き姿が鮮烈だ。女形の肖像画であるにも関わらず、太い首に大きな顎と役者が男であることをわざわざ強調したかのような『二代目小佐川常世の一平姉おさん』もまた、一目で写楽だとわかる作品である。
リアルともグロテスクとも言える写楽作品は本当に売れたのか。具体的な数字は残っていないが、推測は可能だ。浮世絵は初版(初摺り)のほか重版分が残っているのが人気作の証である。重版(後摺り)は初版に比べ、版木の摩耗で線がぼやけたり、色の鮮やかさや精度も低下する傾向があるから見分けがつく。落款・印章などの状態や摺り方の細かい違いも識別の手がかりになる。
今も重版分が少なからず残っている写楽作品は、売れた、ヒットしたと言って差し支えないようだ。(つづく)
(西川修一)
TIMES
連載•小説






