連載•小説 浮世絵→錦絵大ブームのルーツは、鈴木春信「絵のカレンダー」
浮世絵→錦絵大ブームのルーツは、鈴木春信「絵のカレンダー」
連載•小説

2025/09/08

浮世絵と聞いて我々現代人がイメージする色彩豊かな図柄は、実は浮世絵一般というわけでは
ない。浮世絵とは江戸時代に描かれたポップな絵すべてを指し、使う色彩も当初は白黒の単色、
もしくは赤と黒と緑の3色程度しかなかった。
ところが1765(明和2)年――蔦重の幼少期だが――、ある版元が出した絵暦、つまりカレンダー
が大変な評判を取った。「夕立」「雪中相合傘」など町娘の日常の一コマを切り取った、それまで
にない多色刷りの美人画だったからだ。その絵の中に、季節や月がぱっと見では分からぬよう織
り込んであるという趣向である。
この多色刷りの浮世絵は「錦絵」と名付けられた。大久保甚四郎、阿部八之進という2人の旗本が
、薬種商の小松屋三右衛門らと協力し、豊富な資金をもとに多色摺りの技術を開発、定期的に開
催する絵暦交換会への出品で人気に火が着いたという。
絵師は鈴木春信。今も世界的な人気を誇る美人画の名手である。これを機に、天明年間に至るま
で錦絵は爆発的なブームとなった。役者絵の勝川春章、鳥居清満、美人画の歌川豊春、そして鳥
居清長など今も名を残す絵師が次々と世に出て腕を競った。
もちろん、蔦屋重三郎もここに手を付けた。というより、彼の後半生は浮世絵とともにあったと
言っていい。いったいどうやって関わっていったのか。(つづく)

TIMES

連載•小説