NOと言えない行司に出版OKと言わせた蔦重の自責の念
連載•小説
2025/08/25
山東京伝が課された手鎖という刑事罰は、牢には入らぬものの、両手を瓢箪型の鉄製の手錠で
前に組んだ状態に固定し、そのまま一定期間自宅等で謹慎させる罰。30日、50日、100日の3通
りで、期間中は役人が監視も兼ねて封印を点検しに来る。食事や便所にも人の手を借りなけれ
ばならず、日常生活全般に大きな支障があったという。これは精神的にかなりヘビーなペナル
ティである。
蔦重は、自身の財産を半分没収された。幕府側から見れば唐来参和、朋誠堂喜三二、恋川春町
と3名の札付き戯作者にいかがわしい本を書かせて大儲けした版元とであり、目をつけていたの
は間違いない。蔦重本人もその辺りは重々承知していたはずである。
蔦重は地本問屋仲間に行司を設けよとの幕府の命令の裏をかいて、自分に対してノーと言えな
い行司を選んでおいたのだが、その行司2人は軽追放の憂き目を見る。これは居住地および罪を
犯した地域のほか、江戸10里四方(約20キロ圏内)、京都、大坂、東海道筋、日光および日光
道中への立ち入りを禁じた刑罰だった。
さすがに自責の念にかられたのか、蔦重はこの2人への選別にいくばくかの金子を渡したと言わ
れている。(つづく)
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