連載•小説 『大阪ロマンボーイズ』 坂本雅彦
『大阪ロマンボーイズ』 坂本雅彦
連載•小説

2024/11/02

第一章 甲南遊園地の日々

プロローグ ~1990年春~

俺は大学2年生。麻は同学年ではあるが短大に通っていたので俺より早く卒業時期を迎
えていた。俺と麻はバイト先のコンビニで出会った。麻は所謂、流行りの女で梅田の
MAHARAJAの丸ビル店やRADIO CITYによく出入りしていた。紫系のボディコンのような
スーツをまとい、ケバい化粧をして良く出かけていた。俺はというと大学の野球同好会に
所属し、小学生の頃からしていた野球をなんとなく続けていた。大学に入って覚えたこと
と言えば酒とたばこと海外旅行と麻くらいもの。とりわけ麻は刺激的で一緒にいるとトレ
ンディドラマの中に生きていると錯覚することもあった。
麻は俺と同棲してからはすぐにコンビニバイトを止めて夙川駅前のワンダフルバーとい
う店にバイトに行くようになっていた。バーとは名ばかりで実際にはボックス席が中心の
ラウンジのような店だった。今でいうキャバクラに近い。まだバブル経済が続いていた最
中であったことから効率よく稼ぎたかったことと、もう一つ理由がある。麻は酒が大好き
だった。そして、酒に強かった。酔いつぶれたところを見たことが無かった。確かに麻は
コンビニバイトより水商売でのバイトの方が向いている。飲んで遊んで買い物して、流行
と娯楽に明け暮れる麻には女子大生という免罪符が与えられている。その女子大生が流行
を牽引し、景気を左右する存在であった。つまり、麻は時代の最前線にいて、俺は麻を通
じて流行の端くれにしがみついていたに過ぎない。未熟な俺にとって麻は1990年を生きる
大いなるモチベーションになっていた。

TIMES

連載•小説