政治•経済 失われた30年の真犯人 異常な低金利政策が続く理由を考える
失われた30年の真犯人 異常な低金利政策が続く理由を考える
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2025/11/06

植田日銀総裁は、10月30日に政策金利を現行の0.5%程度に留め置き、利上げの先送りを決めている。

かねてより日本経済は、「流動性の罠」の状態に陥っているのではないか? と言われてきた。

まずは「流動性の罠」という経済用語を理解する必要がある。

「流動性の罠」とは、異常な低金利下では、金融緩和でも金利がこれ以上下がらず、金融政策が経済を刺激する効果がない経済状況であり、中央銀行がいくら資金供給を増やしても、景気回復につながらない状態。投資による儲けが期待できないので、現金が好まれるようになる。ゼロ金利政策の下でマネタリーベースを増やしても、健全な投資を増やす効果は弱く、過剰な資金は投機に向うようになる。

経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、「ジョンブル(イギリス人のこと)は、たいていのことは我慢するが、2分の利子率には我慢できない」と述べ、2パーセントを下回る利子率の債券は、売れ行きが極端に悪くなると指摘した。

 

 日銀金利は、90年代前半に2%をきってから、一度も2%を超えたことはない。30年以上低金利が続いている。なぜ、このような政策が取られたのか。その理由は、バブル崩壊の後始末を、当時の大蔵官僚たちが護送船団方式で金融機関を潰さずに乗り切ろうとしたからだ。つまり低金利で不良債権を抱え込んだ金融機関の負担を減らそうと彼らは目論んだ。有り体に言えば預金者(国民)の犠牲によって、官僚の天下り先でもある金融機関を救済しようとしたのだ。

 

 だが、大蔵官僚の目論見は脆くも崩れる。97年にタイバーツを皮切りに始まったアジア通貨危機は、アジア地域の経済に大混乱を引き起こし、この地域に投資してきた国内金融機関にも波及して金融機関の連鎖破綻となった。日債銀や長銀をはじめ、破綻した金融機関や不良債権が、ハゲタカファンドにただ同然で売られた。時を同じくして、98年には大蔵省接待汚職事件が発覚。大蔵官僚が銀行から接待された“ノーパンしゃぶしゃぶ”や“女体盛り”は、海外メディアもこぞって報道した。

 

 それでも低金利が続くのは、利上げは国の借金の利払いが増えるので、財務官僚が嫌がるのである。また多くの官僚やエコノミストが、低金利こそが経済成長を促す政策である、と信じているのだ。

 

 確かに低金利政策は、通常は景気刺激策として有効な経済政策だが、“過ぎたるは及ばざるがごとし”というのが、「流動性の罠」なのである。

 

 

(青山みつお)

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