政治•経済 不確実な台湾情勢と日中関係 在外邦人の安全を考える
不確実な台湾情勢と日中関係 在外邦人の安全を考える
政治•経済

2025/08/26

近年、中国における日本人拘束事件が、日本企業にとって重大な警告となっている。2023年3月、アステラス製薬の日本人社員が「スパイ行為」の疑いで中国当局に拘束され、2025年7月に北京の裁判所で懲役3年6か月の判決を受けた。この事件は、中国でのビジネスにおける邦人拘束の危険性を改めて浮き彫りにした。さらに、台湾海峡を巡る中台間の軍事的緊張が続いており、専門家の間では有事の可能性も活発に議論されている。このような不透明な状況下、日本企業は社員の安全を守るため、平時から具体的な危機管理策を講じる必要がある。

中国では、2014年に施行された反スパイ法が2023年に改正され、ますます厳格化された。この法律は「国家安全」を理由に、曖昧な基準で外国人を拘束するリスクを孕んでいる。アステラス製薬のケースでは、スパイ行為の具体的な内容が明らかにされないまま判決が下され、透明性の欠如が日本企業に不安をもたらしている。中国当局は、経済や技術に関する情報収集を「スパイ行為」とみなす傾向を強めており、通常のビジネス活動が監視対象となる危険性が高まっている。

一方、台湾海峡を巡る中台間の緊張は、日中関係にも波及している。中国は台湾を自国の内政問題とみなし、近年は台湾を包囲するような軍事演習を繰り返し、圧力を強めている。一方、日本は地理的・経済的に台湾と深い関係を持ち、米国と共に台湾海峡の安定を重視している。もし台湾有事が発生すれば、日中関係はさらに悪化し、中国に駐在する日本人社員へのリスクは急激に高まるだろう。このような地政学的リスクは、日本企業にとって見過ごせない課題である。

こうした状況を踏まえ、日本企業は社員の安全を最優先に考える必要がある。まず、駐在員の数を必要最小限に抑えることが求められる。中国での事業展開では、現地採用の社員やリモートワークを活用することで、駐在員のリスクを軽減できる。さらに、駐在員に対しては、中国の法制度や文化的背景に関する事前教育を徹底し、誤解を招く行動を避ける指導が必要だ。例えば、機密情報の管理やSNS上での発言に注意を払うよう促すべきである。

日中関係の不確実性は、今後も続く可能性が高い。米中対立の激化や台湾問題の複雑化により、日本企業は地政学的リスクを常に意識した経営判断が求められる。社員の安全確保は、企業の社会的責任であると同時に、事業継続の基盤でもある。平時から取り組むべきことは多いが、特に強調したいのは駐在員の最適化だ。万が一、台湾有事が発生すれば、中国軍が台湾を封鎖し、民間航空機の運航が即座に停止する可能性がある。これは、2022年8月のペロシ訪台時の状況から得た教訓である。その場合、中国に駐在する邦人の安全リスクも増大する。したがって、今後の地政学リスクを冷静に評価し、ビジネスとのバランスを考慮しながら、駐在員の数を可能な限り削減することが重要である。

TIMES

政治•経済