政治•経済  「対米重視」が招く日中関係の「冷え込み」:高市政権の戦略的ジレンマ
 「対米重視」が招く日中関係の「冷え込み」:高市政権の戦略的ジレンマ
政治•経済

2025/10/31

高市早苗政権の発足は、日本外交の基軸に新たな緊張をもたらしている。高市氏が自身の保守的な政治信条、特に中国を刺激し得る歴史認識や台湾問題への強い発言を抑え、より理性的な対中姿勢を打ち出したとしても、その根幹をなす対米関係重視路線が、結果として日中関係の冷え込みを助長する構造的なジレンマを内包しているのである。

高市政権の外交・安全保障政策は、日米同盟の堅持と深化を最重要課題と位置づける。これは、日本の安全保障環境が厳しさを増す中で、台湾海峡情勢や東シナ海での現状変更の試みに対する抑止力として不可欠な選択である。具体的には、防衛力の抜本的強化、サイバー・宇宙といった新領域での日米協力、さらには経済安全保障の分野での連携強化が柱となる。

しかし、この対米重視は、中国側から見れば、「中国封じ込め」を企図する米国の戦略に日本が完全に組み込まれたと解釈されかねない。特に、経済安全保障分野における日米の連携は、サプライチェーンからの中国排除(デカップリング)や機微技術の流出防止を強く意識したものとなりがちである。

高市氏が提唱する技術的主権の確立や、半導体・AIといった戦略分野への国家投資は、経済の強靭化を謳っているが、その裏側には、特定の国への過度な依存を減らすという対中リスク低減の意図が透けて見える。中国政府は、こうした動きを自国経済への敵対行為、あるいは内政干渉と捉える可能性が高く、日本の経済安全保障政策が深まるほど、日中間の「経済冷戦」の色合いが濃くなるであろう。

中国は高市政権の発足に対し、積極的で理性的な対中政策や戦略的互恵関係の推進を期待するコメントを出している。これは、高市氏の個人的な政治信条の表出を抑え込み、実利的な経済関係を維持したいという意図の表れである。高市政権も、完全に中国との関係を断つことは現実的ではないため、戦略的互恵関係の看板を下ろすことはないであろう。しかし、日本が米国との間で安全保障・経済安保の協力を強く築くことが、この互恵関係を空洞化させる。

日米同盟が強化されればされるほど、中国は日本に対する政治的な相互信頼の欠如を強く感じ、軍事的な警戒感を緩めない。尖閣諸島周辺での活動強化や、台湾有事を巡る圧力の強化といった形で、中国からの報復的な外交・軍事的な刺激が増す可能性がある。これは、高市氏が個人的な信条を抑えても、日本が選んだ外交上の立ち位置が招く必然的な帰結と言える。

高市早苗政権は、対米同盟強化による安全の確保と対中経済関係の維持という、本質的に相反する二つの目標の間で舵取りを迫られる。対米重視路線は日本の国益に適うものの、それは同時に、中国の「核心的利益」に対する挑戦と見なされ、日中関係の持続的な冷え込みという代償を伴うであろう。高市政権がこの二律背反を乗り越え、戦略的互恵の看板を実質を伴うものにできるかどうかは、極めて困難な外交手腕が問われることになる。

(ジョワキン)

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