2026/03/18
葬儀は人類にとって重要な営みである。人類の文明も文化も葬儀を通じて確立してきた。葬儀が文化の核としてあるからこそ人類は発展を遂げてきた。人間性という概念を発見したのは葬儀のお陰なのではないだろうか。
さて、ここ数年、東京の火葬を危ぶむ声が大きくなっている。東京都下に9か所ある火葬場のうち7か所が民間事業者によって運営されているが、うち6か所は東京博全が経営しており圧倒的なシェアを取っている。東京博全は印刷事業大手の広済堂ホールディングスの子会社である。広済堂HDの筆頭株主であった麻生グループが2021年に広済堂の保有株を手放したことを契機に東京の火葬場騒動が巻き起こる。
麻生グループが放出した広済堂HD株を取得し、さらに市場から広済堂HD株を買い進めたのが「グローバルワーカー派遣」と「R&Lホールディングス」である。両社を合計すると25%もの株式を取得し圧倒的な筆頭株主となっている。この両者を率いるのがラオックスの経営者でもあった中国人実業家の羅怡文氏である。麻生グループの撤退後に実質的に経営に強い影響を及ぼす存在となった羅怡文氏は子会社である東京博全の料金を一気に5万9千円から9万円にまで引き上げるに留まらず廉価な区民葬の提供を中止した。
東京都議会で都側は「法律では特別区の地域は区が火葬場の指導監督を行うことになっている」という答弁に終始してきた。ところが都議会第3回定例会において小池百合子知事はこれまでの主張を覆し、料金を含む火葬場の経営管理に対する指導が適切に行えるよう法の見直しを国に求めること、(火葬場の)実態を把握した上で火葬能力の強化に向けた取り組みを検討することを表明した。
これまで墓地埋葬法に関して都は、火葬場を運営するのは自治体であることが前提となっており、民間事業者の運営方法や体制に関して管理監督を行う権限を有しないという認識であった。この認識に大きな違いはないものの、安定的な火葬体制を確保するための法改正を国に求めることに言及している。
実質的な中国企業による仮想事業の独占に対する批判的な世論の高まり対して小池知事がこれまでより一歩踏み込んだ方針を示したのは確かであるが、周到な逃げ口上とも取れなくもない。都が本腰を入れて中国企業による火葬事業の独占と価格高騰の是正に取り組むのであれば条例の制定によって対応すればよい。場合によっては条例も必要とせずに是正することも不可能ではない。東京博全を見限って都や区が公設の火葬場を設置し従前の価格で火葬を提供すれば済むことだ。日本全国にある火葬場の9割以上は公営である。都が公営で火葬場を設置することに違和感もなければ異論もないだろう。併せて、火葬事業の認可条件に放送法のような外資規制を導入するべきである。極めて文化性、公共性の高い火葬事業を外資規制することは当然ではないか。さらには、火葬事業と葬儀事業は切り離し、火葬事業者の葬儀葬祭事業は協業できないように認可条件に附することも重要だ。

火種をつくった麻生グループは麻生太郎自民党副総裁が代表取締役を務めたこともある家系企業。小池百合子都知事は二階俊博元自民党幹事長を後ろ盾にして都民ファーストの会や希望の党を立ち上げた。そもそも麻生氏と二階氏は決して快い仲ではない。麻生氏と小池氏は共に自民党総裁選を戦った間柄でもある。まさかとは思うが小池都知事を見限った麻生氏が東京博全による葬祭事業を恣意的に手放したということはないだろうか。そうだとすれば華麗なる一族のご乱心に他ならない。
(坂本雅彦)
TIMES
政治•経済








