政治•経済 中国による経済的侵略 パプアニューギニアのケース
中国による経済的侵略 パプアニューギニアのケース
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2026/02/14

 オセアニア地域において最大の領土と資源を誇るパプアニューギニア(PNG)が、今、中国による経済的侵略とも呼ぶべき静かなる攻勢の最前線に立たされている。中国が国家戦略として推し進める広域経済圏構想「一帯一路」の旗印の下、この島嶼国には巨額のインフラ投資が次々に注ぎ込まれてきた。一見すると、発展途上にある国家を支える慈悲深い支援の形をとっているが、その内実を精査すれば、経済的依存を足掛かりに国家の主権をじわじわと侵食する、極めて巧妙な地政学的戦略が浮かび上がる。

中国の影響力行使における核心的な手法は、いわゆる債務の罠である。PNG政府は、近代的な高速道路や大規模な港湾整備、さらには国家基幹通信網の構築といった野心的なプロジェクトを実現するため、中国の輸出入銀行などから莫大な譲歩的融資を受け入れてきた。しかし、これらの建設事業の多くは中国の国営企業が元請けとなり、資材から労働力に至るまでが中国国内から持ち込まれる。その結果、現地への技術移転や雇用創出といった経済波及効果は極めて限定的なものに留まっている。一方で、積み上がった債務の返済負担はPNGの国家財政を容赦なく圧迫し対外債務における中国のシェアは他国を圧倒する水準にまで膨れ上がった。ひとたび返済が滞れば、戦略的要衝である港湾の長期運営権や、国内に眠る莫大な天然資源の採掘権が担保として事実上接収される懸念があり、近隣の島嶼国が辿った「主権の譲渡」という悪夢が現実味を帯び始めている。

また、経済的依存は政治的な沈黙を強いる強力な武器となる。中国はインフラ支援をレバレッジとして、PNGに対して警察・治安維持分野での協力案を提示するなど、オーストラリアや米国といった伝統的な安全保障パートナーとの間に楔を打ち込もうと画策している。液化天然ガス(LNG)や金、銅といった資源が豊富なPNGにとって、中国は最大の輸出先であり、経済の生命線を握られているに等しい。このような弱みを握られた状態では、南シナ海問題や人権問題といった国際的な議論において、中国の振る舞いに異を唱えることは極めて困難となる。結果として、PNGの外交政策は自律性を失い、北京の意向を忖度せざるを得ない属国化の危機に瀕している。

さらに、中国による通信インフラへの浸透は、安全保障上の深刻なリスクを孕んでいる。政府の重要機関が使用するネットワークが中国企業の技術によって構築されることで、情報の窃取やサイバー攻撃に対する脆弱性が懸念されている。経済支援という美名に隠されたこの侵略的アプローチは、パプアニューギニアを対等なパートナーとしてではなく、自国の戦略的利益を最大化するための駒として扱うものである。インフラが外見的な近代化を遂げる一方で、国家の意思決定の自由という最も尊い権利が奪われていく現状は、他国にとっても決して対岸の火事ではない。パプアニューギニアが直面している苦境は、無批判な経済的依存がいかに容易に「国家主権の切り売り」へと転じるかを物語る、現代国際政治における痛切な教訓である。

(ジョワキン)

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