政治•経済 中国による債務の罠に陥るバングラデシュ
中国による債務の罠に陥るバングラデシュ
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2026/01/30

バングラデシュにおける中国による経済的影響力の拡大は、南アジアの地政学を揺るがす重大な懸念材料となっている。中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」の下、バングラデシュは多額の融資を受け入れ、橋梁、発電所、港湾といった大規模インフラ整備を加速させてきた。しかし、この急速な経済接近の裏側には、国家の主権を脅かしかねない「債務の罠」と、経済的依存を足掛かりとした戦略的侵略の影がつきまとっている。

まず、最大のリスクとして指摘されるのが、不透明かつ高金利な中国からの融資である。バングラデシュは、日本の円借款のような低利で長期の支援だけでなく、中国からの商業ベースに近い融資を積み重ねてきた。これにより、対外債務に占める中国の割合が急増し、返済能力を超えたプロジェクトが国家財政を圧迫し始めている。隣国スリランカが債務不履行に陥り、戦略的要衝であるハンバントタ港の運営権を99年間にわたって中国側に譲渡せざるを得なくなった事例は、バングラデシュにとっても決して他人事ではない。インフラという「人質」を取られ、最終的に港湾や鉄道といった重要資産の支配権を奪われることは、実質的な経済的侵略に他ならない。

また、経済的依存は外交や安全保障における「沈黙」を強いる。バングラデシュにとって中国は最大の貿易相手国であり、軍事装備の主要な供給源でもある。この多角的な依存関係は、ダッカの政策決定過程に北京の意向を強く反映させる結果を招いている。例えば、ベンガル湾に面した港湾整備に中国が深く関与することは、単なる経済活動を超え、将来的に中国海軍の拠点として利用される「真珠の首飾り」戦略の一環であるとの警戒が絶えない。インドや米国といった他国との均衡を保つ「綱渡り」の外交が、中国の圧倒的な資金力を前に崩れ、地域全体のパワーバランスを中国優位に固定化させる恐れがある。

さらに、中国企業によるプロジェクト独占や、現地労働者ではなく中国人労働者の大量投入といった問題も、現地の自律的な経済発展を阻害する要因となっている。このように、バングラデシュの事例は、開発資金の必要性と、それを餌にした経済的隷属というチャイナリスクの典型的な構造を浮き彫りにしている。同国が真の独立性を保つためには、支援元の多様化と、融資条件の徹底した透明化、そして持続可能な債務管理という極めて困難な課題に立ち向かわなければならない。

(ジョワキン)

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