政治•経済 トランプはなぜグリーンランドを狙うのか
トランプはなぜグリーンランドを狙うのか
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2026/01/28

トランプ大統領が世界最大の島、グリーンランドの買収や保有に強い執着を示す背景には、単なる不動産ビジネスの延長ではない、冷徹な地政学的計算と資源戦略が潜んでいる。かつては氷に閉ざされた不毛の地と見なされていたこの島は、今や21世紀の覇権争いにおける最前線へと変貌を遂げている。

第一の理由は、国家安全保障とミサイル防衛における圧倒的な地理的優位性である。北極圏に位置するグリーンランドは、北米大陸と欧州、そしてロシアを結ぶ最短経路の中間に位置する。トランプ氏は、米国本土を弾道ミサイルの脅威から守る「ゴールデン・ドーム(ミサイル防衛構想)」を推進しており、その早期警戒システムや迎撃拠点を展開する場として、同島を「不可欠な土地」と位置づけている。すでに北部のピトゥフィク宇宙基地(旧トゥーレ空軍基地)は米軍の重要拠点となっているが、島全体の主権、あるいはより強力な管理権を握ることで、北極海におけるロシアの軍事増強や、中国の進出を封じ込める「北の盾」を盤石にする狙いがある。

第二の理由は、気候変動がもたらした「資源の宝庫」としての価値である。地球温暖化によって氷床が融解し、皮肉にもこれまで困難だった地下資源の採掘が現実味を帯びてきた。グリーンランドには、ハイテク産業や防衛産業に不可欠なレアアース(希土類)をはじめ、石油、天然ガス、ウランなどが大量に埋蔵されていると予測されている。現在、世界のレアアース供給の大半を握る中国に対し、トランプ氏は強い警戒感を抱いている。米国内のサプライチェーンを強化し、中国による資源の武器化を防ぐためにも、グリーンランドの豊かな鉱物資源を米国の管理下に置くことは、経済安全保障上の極めて合理的な選択肢となるのである。

さらに、北極海の氷が溶けることで生まれる「新航路」の存在も無視できない。アジアと欧州を繋ぐ北極海航路が一般化すれば、既存のスエズ運河経由よりも大幅に距離を短縮でき、世界貿易の勢力図が激変する。この物流の要衝に睨みを利かせることは、将来の海洋覇権を握ることに直結する。

トランプ氏にとって、グリーンランドは単なる領土ではなく、軍事、経済、そして対中・対露戦略のすべてを満たす戦略的資産に他ならない。デンマーク側や現地住民が主権の売買を拒絶し続けているにもかかわらず、彼がこの主張を繰り返すのは、北極圏がもはや無視できない巨大な利益を生む舞台となったことを彼特有のビジネス的な直感とアメリカ第一主義のレンズを通して見抜いているからである。

(ジョワキン)

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