社会•事件
国による生活保護費の基準額の引き下げを違法だと認めた6月の最高裁判決を受け、厚生労働省が、減額分の一部を全生活保護受給者に支給する方針を決めた。最高裁では、引き下げの手続きに過誤があったと判断されたため、厚労省は専門委員会での議論を踏まえ、違法とされた方法とは別方法で引き下げるという。ただ、再び引き下げは実施されるため、引き下げ前との差額の全額補償を求めていた原告代理人弁護士らからは批判が噴出。原告以外の受給者が新たな訴訟を起こす可能性などもあり、紛争の長期化が避けられない模様だ。 今回の最高裁判決で問題になったのは、厚労省が2013~15年、食費や光熱費などの「生活扶助」の基準額を最大10%引き下げた措置。物価下落率を反映させた「デフレ調整」により約580億円、一般低所得者との均衡を図る「ゆがみ調整」により約90億円、計約670億円が削減された。 ■最高裁は金額そのものではなく手続きを問題視 最高裁は、このうちデフレ調整による4・78%の引き下げ率は、厚労省が専門家に諮らずに独自算出したことなどには合理性がないとして問題視。「「引き下げの判断の過程や手続きに過誤、欠落があった」と認めて違法と判断し、減額処分を取り消した。 一方、最高裁はゆがみ調整は適法とし、厚労省の専門委員会の議論でもゆがみ調整を再度実施することは妥当とされたため、ゆがみ調整は行われる。 厚労省はデフレ調整に代わり、当時の低所得世帯の消費実態に基づいて改めて算出した2・49%の引き下げ率を適用。違法とされた4・78%よりも引き下げ幅を小さくすることで、全受給者に減額分の一部を補償することにした。さらに、長期に及んだ訴訟の負担などを踏まえ、原告には特別給付金も追加支給し、違法な減額分については全額補償する。追加支給される保護費として、今年度予算案には1055億円が計上された。 ■合理性のある対応 違法な減額分は全額補償されるものの、原告側は原告以外も含む全受給者に対して引き下げ前との差額を全額補償するよう求めてきた。このため、厚労省が今後の対応について方針を示した直後、原告代理人弁護士らは11月21日夜、厚労省の決めた方針に猛反発し、改めて引き下げ前との差額の全額補償を訴えた。 最高裁は、引き下げ自体を違法としているわけではなく、それを決める手続きに瑕疵があったとしており、厚労省が専門家委員会をたちあげて議論を進め、全体では一部補償とはいえ、違法減額分については全額補償するとした対応方針には合理性があるように伺える。 原告代理人弁護士らは、このまま一部補償に納得せず、「全額補償」を求めて戦い続けるつもりなのか。専門委員会の議論を経た上で政府として「一部補償」を決めたのだから、いったんはそれを受け入れた上で今後の戦略を検討すべきではないだろうか。紛争が長期化すれば、一部支給の実施すら先送りになる恐れもあり、最低限の暮らしを保障するための生活保護制度の根本にも関わりかねない。(桜田亮)
青森県下北半島の太平洋側に広がる国内最大級砂丘猿ヶ森。この地をめぐって防衛上の動きが日を追って高まっている。そのことを本サイトでは追っている。渺茫としたこの地にいったい何が起きているのか。 高市政権において防衛というキーワードは最重要視されている。なんでも『防衛費増額のための財源として想定されている所得税の増税について、政府・与党は2027年から実施する方向で検討に入った。国民からの反発も予想されるが、防衛力の裏付けとなる財源を安定させることを優先する考えだ。~以下後略~』(朝日新聞on-line12月5日付記事より抜粋引用)、ということなのだ。一に防衛、二に防衛、三四がなくて後に防衛、といったところだろう。非難囂々の増税という蛮行を断行してまでそれを防衛費増額に充てようとしているのだ。 そこでひそかに進行している猿ヶ森での動き。地元住民の声を丹念に集めてみるとどうやら防衛省が自ら進んで猿ヶ森を取り巻く〝地べた〟を買い進めているらしい。本連載でここは防衛省直属の弾道試験場あることを述べてきた。そのことを前提に目下起きている動きを考え併せるとさらなる大規模な施設というべきか拠点のようなものがここ猿ヶ森に構築されようとしているのではないか、ということに想像は漂着する。必然である。 前回お伝えしたように防衛省は全国62か所に、長距離ミサイル量産にともなう弾薬庫の新設を予算化している。ところがそのほとんどは予算化されているものの弾薬庫そのものはつくられていないという現状なのだ。資金はあれど一向に使われていない、ということになる。これはいったどういうことなのか。その一方で猿ヶ森を中心とした一帯の土地を買い占めようとする動きがある。猿ヶ森地権者の一人、蟹ヶ谷久一(78 仮名 林業)は自分が所有する土地を買いに来た防衛省関係者からこんな話を聞いたという。 「それがな、こういうわけだよ。その男が言うには『(防衛省は)日本全国各地に弾薬庫を造るためにえれえたくさんの金を持っているんだとよ。ところがその金はどうしてか使われていないんだとよ。おっかしな話もあるんだべな、と聞いていたら、こう言うんだべな。『そのたんまりある予算を使ってこのあたりの(猿ヶ森周辺の)土地を買い込むんだ』とよ。そんなに大きなカネはいらんべな、と思っていたら、土地をたんまり買うだけじゃねえ、(猿ヶ森に)すっげえ拠点を造るということだべさ。オラはそれ聞いてびっくりしただよ』。 そんな話を聞かされりゃ蟹ヶ谷でなくとも仰天するだろう。 防衛省はここ猿ヶ森をどうしようとしているのか。取材を進めるうちにさらなる奇っ怪な事態が見えてきた。我が国の防衛最前線猿ヶ森でのレポートを続ける。(つづく 敬称略)フリーランスライター 廣田玉紀
2025.12.08
大会を前に法整備に尽力した議員とは 11月15日から26日まで東京で聴覚障碍者のための世界規模の総合スポーツ競技大会であるデフリンピックが開催されていた。日本チームは当初の目標であるメダル31個の獲得を大きく上回る51個のメダルを獲得する偉業を遂げた。観客動員数も当初の目標であった10万人を遥かに超えて28万人を動員した。日本チームの大躍進は選手たちの限界を超えた努力とコーチやスタッフたちの献身的な支えの賜物だといえよう。また、観客の声援も後押しになったに違いない。 さて、デフリンピック開催を前に国会では「手話に関する施策の推進に関する法律」(手話推進法)が成立した。議員立法として主体的に取り組んできたのは今井絵理子参議院議員である。今井議員のご子息が聴覚障害者であることから当事者としての経験も踏まえての取り組みである。手話推進法の基本的施策は *機器やサービスの開発や規格の標準化や使用者の入手支援 *防災、防犯および緊急通報の為の仕組みや情報収集の為の機器設置の推進 *障害者の自立生活や社会生活における意思疎通支援者の養成や確保 *障害者への情報提供、相談の対応 *国民の関心や理解を推進する活動や広報 *調査研究の推進 の6項目と必要な予算措置を講じることが盛り込まれている。 今井議員からは「手話で育てたい、学びたいっていうお子さんに対して、どう対応していくか、ずっと課題だった」と話す。今井議員は2020年にも「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」を議員立法で成立させている。この法整備によって聴覚障害者が手話通訳や文字通訳を通じて電話を利用できるようになりバリアフリー化が進んだ。 二期目の議員が議員立法を2本も成立させられることは非常に稀である。やはり、強い想いと使命を抱いて当選した議員は一種の凄みがある。ましてや今井絵里子議員は自身のご子息が当事者である。今まさに自分が直面する諸課題に取り組んできた。道中、SNS投稿が問題視されるなどバッシングにもあってきた。人気グループ出身のタレント議員だと揶揄されることも多い。そのような中で政治家として結果を出せていることは賞賛に値する。予算がどうだの、対象の人数がどうだのと言わず、法律とは弱い者の味方であって欲しいものである。 (坂本雅彦)
山上徹也被告の初公判が10月28日に始まってから、一月以上が経過し、12月2日で既に12回目を数える。その間の証人尋問や被告人質問で事件の全容がほぼ解明されつつあるのに、いまだにSNS上に山上被告以外の狙撃手がいたはずだとか、山上被告を使嗾した組織がいる、といった風雪が流され、一定の支持を集めている。再生回数目的のユーチューバーが適当なことを言っているのではなく、元新聞記者やジャーナリストを名乗っている人物が、もっともらしく解説するので惑わされる人がいるのも無理もない。 その代表的なのものに、安倍晋三元首相が狙撃された2022年7月8日の前日7月7日、小野田紀美・現経済安全保障担当大臣の演説会場に応援の為に岡山市を訪れていた安倍元首相を狙って、山上被告も、岡山市に来ていたが、1時間53分の山上被告の行動が不明の謎の時間がある。山上被告がアジア系外国人と接触していたという政治関係者もいる、といった話だ。 つまり、公判で岡山市での山上被告の行動を、防犯カメラの映像を使って分刻みで説明してきた検事が、1時間53分に渡って説明しなかった時間があるのが不審であるというのだ。 この場合、考えられるのは二つしかない。山上被告がその間の行動を供述しなかったのか、検事の方が思惑で説明しなかったのかのどちらかだ。 山上被告が供述しなかったのなら確かに不審ではあるが、例えば風俗にでも行っていたのなら、体裁が悪いと考えたのかも知れない。元首相の暗殺を認めているのに体裁するのも変だが、山上被告には女性ファンも多いから、彼女たちの手前も言い難かったのか。テロリストやヒットマンが、決行前に風俗で遊ぶのは、諸外国はいざ知らず、日本の伝統と言って良い。 だいたい大日本帝国の初代総理大臣の伊藤博文からして、御殿場の英国公使館焼き討ち前、維新の志士として今日でも尊敬されている高杉晋作らと品川宿場の妓楼として知られる土蔵相模で遊んでいたのだ。 しかし、検事の思惑で説明をしなかった可能性もある。その場合、世間の反応を検事が気にしたことが考えられる。例えば、未遂に終わった岡山での暗殺決行前、山上被告が桃太郎伝説のモデルとなった吉備津彦命や、姉の倭迹迹日百襲姫命(第7代孝霊天皇皇女)を祀っている岡山神社で暗殺成功を祈ったが、警備が厳しくて決行できなかった。気落ちして帰る途中、翌8日に安倍元首相が近所の大和西大寺で演説するのを知り、日本の神が願いを聞き届けたと思って決行した、などと供述していたら、検事も公表するのを躊躇うのではないか。 上記のような、勝手な憶測や陰謀説が残ることのないように、捜査当局は全ての証拠や事実を公開するべきだし、メディアも不審な点があれば、得心がいくまで取材して、正確な報道を心がける必要があるのだ。 (高田欽一) 【安倍暗殺 山上被告裁判】『謎の1時間53分とは?』『アジア系外国人とは?』元産経記者 三枝氏の解説。
中小企業を守る「下請け代金支払遅延等防止法」(通称・下請法)が20年ぶりに抜本的に改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払い遅延等の防止に関する法律」(通称・中小受託取引適正化法)に生まれ変わる。本来は下請け業者を守る法律として、長年にわたり効力を発揮してきた法律だが、常につきまとっていた「下請け」という負のイメージを法改正によって払拭するとともに、厳罰化によって悪質な発注者側の規制を強化されることが期待される。 名称変更以外で改正の柱となるのが、発注者側が受託業者との価格協議の過程で、一方的に代金を決める行為を禁じる規定を新設したことだ。立場の強い発注者側が協議に応じず、受託する中小企業が泣き寝入りすることを防ぐ狙いがあり、発注者と受託者の間で適正な価格設定が進むことが図られる。 名称変更には、法律を所管する公正取引委員会と中小企業庁の強い意向が働いているようだ。刑法の性犯罪について、強姦罪が強制性交罪、不同意性交罪と、告訴要件や処罰要件の変遷に伴って罪名変更されたケースがあるが、法改正に合わせて法律の名称を大幅変更するのは極めて異例である。 これまで下請法で取り締まられるケースで多かったのが、立場の弱い受注者や労働者らに著しく低価格を押しつける「買いたたき」。買いたたきによって商品やサービスの価格を据え置くことは、適正な競争を阻害することにもなり、許されない。公取委は立場の弱い受託企業を守るために奔走している。公取委が2024年度に、下請法違反で再発防止などを求める勧告を出したのは21件。前年の13件から8件増加し、平成以降では最多となった。 下請法の改正は、公取委による取締強化の追い風になるのは間違いないだろう。ただ、大事なのは、法改正によって当事者である発注者側と受注者側への啓発である。発注者が法律に違反するような買いたたきなどに走ることは当然許されないが、立場の弱い中小企業もしっかりと声を上げる勇気を持つことが大切になるだろう。 (桜田亮)
2025.12.02
2025.12.02
2025.11.29
2025.11.29
商品を製造することも販売することもなく、大したサービスも提供しない、付加価値はほぼ皆無なのに否応なく収入は入ってくると言う事業体がある。お察しの通り、税務署である。税務署は政府の徴税権を担い日本に住まう個人や法人から一手に税の収納を任されている。よほど過大な人員配置や経費の無駄遣いがなければ税務署が赤字になることはありえないと考えるのが普通。ところが不思議なことに全国には赤字の税務署が結構存在する。 愛知県豊田税務署は5075億円の赤字、神奈川税務署は1419億円の赤字、広島県海田税務署は1303億円の赤字、京都府右京税務署は678億円の赤字、大阪府浪速税務署は325億円の赤字、愛知県刈谷税務署は252億円の赤字、等々赤字の税務署は多数存在し枚挙に暇がない。 それではなぜ多くの税務署が赤字になってしまっているのか。それは輸出企業に対する消費税の還付金が高額であるからだ。豊田税務署はトヨタ自動車に6102億円、神奈川税務署は日産自動車に2283億円、海田税務署はマツダに1714億円、右京税務署は村田製作所に762億円、浪速税務署はクボタに566億円、刈谷税務署はデンソーに1058億円の消費税を還付している。収納した税収よりも消費税の還付金の方が高額であるために税務署の収支がマイナスになっているのだ。(2023年データ元・全国商工新聞2024年9月23日より) 収めた消費税を返すだけなのになぜ赤字になるのかと疑問に思う人いるだろう。輸出業者に対する消費税は0%だからそもそも輸出商品に対してトヨタや日産などは消費税を支払うことはない。しかし、トヨタや日産などには多額の消費税が還付されている。では還付されている消費税はどこから徴収した消費税なのか。実はトヨタや日産が商品を製造するにあたって必要とする経費や仕入れなどが発生するバリューチェーン全体に係る消費税が輸出者であるトヨタや日産に一括して還付されている。つまり、輸出商品に対して消費税を1円も負担していないトヨタや日産に下請けや仕入れ先など背後で関わったすべての企業が支払った消費税が全額還付されているという仕組みである。国全体で事業者が収めた2022年度の消費税は約20兆2千億円、そのうち還付金は約7兆1千億円で約35%にも上る。ちなみにトヨタは売り上げの80%が輸出であり、輸出還付金が大きすぎて本来納めなければならない国内売り上げに係る消費税を納めずに還付金と相殺している。相殺してもなお足りずに還付されているのが6102億円なのだ。このことにからも消費税は預かり金ではない。消費税は商品価格の一部であり直接税である。預かってもいない税を還付することはあり得ないことだが、消費税は預かり金ではないから実質的に輸出補助金として交付しているのと何ら変わりない。消費税にはゼロ税率と仕入税額控除があるために輸出を行う大企業に巨額の還付金が生じるのである。おかげでナショナルメーカーを抱える地区の税務署が赤字になることは珍しくない。(坂本雅彦)








