政治•経済

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マーケットでは既に織り込み済みの「TACOトレード」。ディールがない場では、相変わらずの強者ぶり
マーケットでは既に織り込み済みの「TACOトレード」。ディールがない場では、相変わらずの強者ぶり

 世間一般はともかくとして、「TACOトレード」は間違いなく今年のマーケットでの流行語大賞の有力候補だろう。そしてその気分屋ぶりは相変わらずだが、数多あるTACO発言でもしかしたら最速を記録するかもしれない発言で、またマーケットを混乱に陥れた。 「かねてからトランプ大統領は政策金利の引下げに慎重なパウエルFRB議長を批判、その度に『解任』を示唆してきましたが、アメリカメディアがホワイト筋からきちんと確認を取った上で16日に『早期解任の可能性が高い』と報道したわずか30数分後に、当のトランプ大統領が解任を否定。そのわずかな時間にドル円の為替相場が1円も上下したのです」(経済部記者)  この急変ぶりに、SNSのマーケット観察者からは、「アメリカ政府は相場操縦やり放題」と呆れた声が上がるが、一方でトランプ発言を巡るマーケットの数字の上下動きは「月単位くらいのスケールで見る必要があるのだと過去半年で思うようになった」との声もあって、したり名言だ。  実際、トランプ大統領が日本の25%を含め、12カ国に関税引き上げの書簡を7月7日に送って以後も、「どうせTACOだろ」と言わんばかりに、マーケットは驚くほどおだやかに推移している。 ディールがない場では、臆面の無さをフルに発揮 「その後さらにカナダに35%の関税を、また医薬品に最大200%の関税を課すと打ち出しましたが、マーケットは狼狽えるどころか、ナスダックとS&P総合500は最高値を更新。トランプ大統領のチキンぶりはもうマーケットでは織り込み済みというのが常態化しつつあります」(同)  一方、傲岸不遜ぶりを示したのが、もともと縁がなさそうなサッカーの舞台で発揮された。この頃アメリカではサッカー・クラブ世界一を決める「FIFAクラブワールドカップ」が開催されていたのだが、日本時間の14日に行われた決勝戦後、開催国大統領として優勝チームへのトロフィー授与の場に立ち会ったトランプ大統領はそのまま居座り、選手らがトロフィーを形容する場のほぼ真ん中に映り込んだのだ。  その場の場違いぶりをCNNは、26年ワールドカップはアメリカ・カナダ・メキシコが共催するが、「次はもっと大がかりで、もっと異様な展開になる可能性がある」と伝えた。しごくもっともだ。

男女共同参画のナショナルセンターは必要か その3 ゴールを見失った男女共同参画事業
男女共同参画のナショナルセンターは必要か その3 ゴールを見失った男女共同参画事業

 男女雇用機会均等法、育児休業法、パートタイム労働法、育児・介護休業法、男女共同参 画社会基本法、ストーカー規制法、配偶者暴力防止法、次世代育成支援対策推進法、少子化 社会対策基本法、改正次世代育成支援対策推進法、女性活躍推進法、民法の一部を改正する 法律(再婚100日)、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律、働き方改革関連 法など性差や女性に関する法律は1986年以降に矢継ぎ早に次々と施行されてきた。これら の法整備を受けて、教育の機会均等や男女共学、男女同一賃金の原則や女性労働者の保護 、結婚の自由、財産の均等相続、国籍法の父母両系血統主義、雇用分野における男女の均 等な機会や待遇の確保、子を養育や家族の介護を行う労働者の雇用の継続、ストーカー行 為の処罰、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護、女性の職業生活における活躍の推 進、婚姻開始年齢を統一など多くの性差を解消し女性の社会参画を後押ししてきた。 本当に世の女性のマジョリティはまだ支援が足りない、まだジェンダー差別が多い、ま だ女性であることで不利益を強いられている、と思っているのだろうか。省庁や諮問委員 会、役所や議員、民間企業の管理職や役員などあらゆる場面で男女差を問われ偏りを指摘 される。民間企業の管理職や役員は男であろうと女であろうと経営陣とステークホルダー の自由である。公務員も民間も男女差があるのは男女差別や不公平があるとは限らない。 人事は適材適所でおこなっているだろうし、本人の希望も加味されているだろう。単なる 統計で指摘できることではないはずだ。男女比率で人事を評価することこそ男女差別であ る。人物評価と本人希望が重要なのであって男女差の比率を整えるために行う人事は表面 的であり画一的になる。かつて筆者が選挙に立候補するために公認を得た政党支部は公認 料として男性は30万円、女性は50万円と資材費全額補助であった。公認の判断基準も39歳 以下の女性を優先すること公言していた。明らかなジェンダー差別であるがこの政党はジ ェンダー問題をイコール女性差別、女性参画の障壁だと決めつけている。これまでの行き 過ぎたウーマンリブの弊害なのではないか。差別されたり障壁があるのは女性だと勝手な 思い込みをするように長年刷り込みを行われてきた帰着がこの状態。女性を差別する法律 の撤廃、議員定数の半分を女性に割り振るクオーター制の導入、国政選挙の立候補者の 35%以上を女性にする党方針など女性に対して下駄を履かせすぎてことでジェンダー平等 は崩壊している。これは政党に限ったことではなく社会全体がそのような状態に陥ってい るにも関わらずそれが正義であると思い込んでしまっている。男女共同参画事業はゴール を見失っているのではないか。ゴールだけでなく正義をも見失い利権の影すら感じてしま う。腐敗が進む前に立ち止まるべきなのでは。行き過ぎたジェンダー問題への取り組みが 新たな差別を生む可能性もある。何事もほどほどが一番、一張一弛を心すべき。(参議院 議員政策担当秘書 紅 良作)

最低賃金引き上げへ国の議論スタート 全国で1000円超は必須
最低賃金引き上げへ国の議論スタート 全国で1000円超は必須

 今年度の最低賃金(時給)の改定額の目安を決める中央最低賃金審議会(通称・中賃=厚生労働相の諮問機関)の議論が今月11日、始まった。現在、最低賃金が1000円を超える都道府県は16に上っており、全国平均は1055円。政府は「2020年代に全国平均1500円」との目標を掲げており、過去最大の引き上げが実現するかや、全国一律で1000円超となるかに注目が集まる。 ▼毎年夏に決定  最低賃金は、都道府県ごとに決められている時給の下限額だ。毎年7月に開かれる中賃の議論で、労使の代表と大学教授ら公益委員が、物価や賃金の上昇率、企業の業況などを考慮し、引き上げ額の目安を示す。その後、各都道府県の審議会がこの目安を参考に実際の引き上げ額を8月中をめどに決め、新たな最低賃金が10月以降に適用されることになっている。  物価高を背景に、賃上げを求める声は全国各地に広がっており、参院選でも各党が重要な公約に掲げている。ただ、石破政権の「2020年代に全国平均1500円」との目標は高く、達成するのは容易ではない。2025~29年度の改定で毎年、全国平均で7%程度の高い引き上げが不可欠となるためだ。過去最大級の引き上げとなった昨年度が5・1%のため、7%がいかに高い数字化は明白であり、毎年のようにそれを実現するハードルは低くないはずだ。  それでも政府が「物価高を上回る賃上げ」と銘打って大幅賃上げを目指すのは、最低賃金の水準が海外と比べて低いことも影響している。経済協力開発機構(OECD)のデータでは、フルタイムで働く正社員ら一般労働者の賃金中央値に対する最低賃金の比率で、2023年は日本が46%に対し、ドイツは51・7%、英国は59・6%などで、海外との開きは大きい。 ▼中小企業支援を  現在の経済事情などを踏まえれば、今年度の中賃で過去最大級の引き上げが実現する公算は高いだろう。ただ、7%を超える急速な引き上げが進んでいけば、特に中小企業への影響が大きくなるのは必須で、配慮が必要となる。最低賃金を確保するために従業員の値上げに迫られ、廃業に追い込まれる中小企業も出てきかねない。  労働者側からも懸念の声は根強い。ある連合関係者は「大幅の賃上げは絶対に必要」としながらも、急速な引き上げによって中小企業が追い込まれて廃業してしまえば、従業員が食を失うことになるとの危機感を示す。この関係者は「大幅賃上げの影響で会社が倒産したら従業員も守られず、本末転倒だ」と強調しており、慎重かつ丁寧な議論を求めている。 政府は賃上げに加え、中小企業の支援も含めた総合的な経済対策に取り組むべきだろう。

男女共同参画のナショナルセンターは必要か その2 ウーマンリブ活動の末路としての男女共同参画事業
男女共同参画のナショナルセンターは必要か その2 ウーマンリブ活動の末路としての男女共同参画事業

 1970年代初頭にウーマンリブ活動が世間を圧巻した。ウーマンリブ活動とはアメリカや ヨーロッパで女性活動家たちが「男女は社会的には対等・平等であって、生まれつきの肌 の色や性別による差別や区別の壁を取り払うべきだ」とジェンダー平等を訴える活動のこ と。日本でも朝日新聞が積極的に取り上げたことからベトナム反戦運動に参加した女性活 動家たちが全共闘運動に女性差別があったとしてウーマンリブ活動に傾倒していった経緯 がある。女性活動家たちが革命家きどりの男性活動家が女性に電話番や炊事役を押し付け る姿を見て古い男たちと何ら変わりないと幻滅したことがきっかけだという。そんな左翼 、新左翼の女性活動家の行きついたのがウーマンリブ活動。マルクスの旧来型思想では社 会は代えられなかったがウーマンリブ活動で女性差別や賃金格差、労働条件や環境などを 改革していった。確かにそれは大きな功績であるかもしれない。だからといっていつまで ウーマンリブ活動を続けるのか。女性を取り巻く社会の改革と国民の意識改革を凡そ成し 得た後のウーマンリブはもはや既得権益でしかない。女性特権社会でも作ろうと言うのか 。共産主義者は革命によって国家体制を転覆させ権力を得ることを否定しない。権力を得 た革命家は例にもれず腐敗する。革命を成し遂げた後は権力も地位も既得権益となる。権 益はほぼ例外なく体制の腐敗を生む。 全共闘時代の活動家も現在ではその多くが後期高齢者となっている。現役の生産世代と して社会をリードしているのは団塊ジュニア世代である。つまり、ウーマンリブが流行っ た団塊の世代を超えて次世代に到達している。時代遅れのウーマンリブにいつまでしがみ つくのか。フェミニストのカリスマ上野千鶴子氏は「私は、嘘はつかないけど、本当のこ とを言わないこともある」と発言している。本当のことを言わない私が悪いのではなく、 私に騙される情弱が悪いのだと言わんばかり。現在のウーマンリブの実情こそが上野千鶴 子氏の正体になぞらえることができよう。(参議院議員政策担当秘書 紅 良作)

木を見て森を見ず!石破総理の「なめられてたまるか」発言
木を見て森を見ず!石破総理の「なめられてたまるか」発言

7月9日、石破総理は日米関税交渉について、「国益を懸けた戦いだ。なめられてたまるか」と威勢よく吠えた。  ところで防衛省は、東シナ海の公海上空で警戒監視中だった航空自衛隊の情報収集機に対し、中国軍の戦闘爆撃機が約30㍍の距離まで異常接近したと7月12日に発表している。こうした中国機による異常接近は6月にも太平洋上空で行われた。 中国によほど舐められていると思うが、同国には腰が引けているから“遺憾砲”を発射するなど自粛に留まっている。 日米関税交渉について経済オンチの石破総理は勘違いしている。その理由は、米国が最も懸念する違法薬物フェンタニル問題について、日本は無関心だからだ。 「6月26日の日本経済新聞は、『中国から米国に流入している違法薬物フェンタニルの中継拠点が日本にある』と報じています。同日、駐日米国大使はSNS上で、『密輸には中国共産党が関与しており、日本経由の不正取引を防ぐべき』と投稿しました。ところが、これに対する日本政府の反応は皆無です。今月1日に、パンダハガー(親中派)の岩屋外相はワシントンで、ルビオ国務長官と会談しましたが、そこでも現在米国が頭を抱えているフェンタニル言及していません。しかも米国からの防衛費増額要求を事実上拒否しました」(国際ジャーナリスト)  この会談直後に、トランプ大統領は、日本に「30%か35%、もしくは我々が決めた数字の関税を払ってもらう」と断言している。つまり米国の態度を硬化させたのは、関税交渉ではなく、日本の対中姿勢なのだ。  中国(パンダ)に抱かれて(ハガー)喜んでいる石破政権に対して発した最後通牒が、7日の日米関税交渉に関する書簡だったのだ。それを逆切れで応じたのはとんだ筋違いである。 日本は日米交渉で国益を守り抜かなければならない。同時に、関税を巡る日米の対立が激化し、同盟が揺らぐようなことがあれば、中国に足元を見られかねず、日本だけでなく米国の国益も損なわれる恐れがあることを米側に伝える必要がある。 日米同盟は、故安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」を実現するための中核でもあることを反安倍だった石破首相は分かっていないようだ。  

政治•経済

2025.07.15

中国が日本産牛肉の輸入再開へ:トランプ関税下での日米関係に楔を打ち込む狙い
中国が日本産牛肉の輸入再開へ:トランプ関税下での日米関係に楔を打ち込む狙い

中国政府が日本産牛肉の輸入を24年ぶりに再開する方針を固め、近く日中間の協定が発効する 見通しとなった。この決定は、2001年のBSE(牛海綿状脳症)問題を理由に中国が日本産牛肉の 輸入を禁止して以来、初めての動きとなる。表面上は両国間の経済協力の進展と見えるが、その 背後には、トランプ大統領の強硬な関税政策と日米貿易交渉の行き詰まりを背景に、中国が戦略 的に日米関係に楔を打ち込む狙いがある。  2025年1月に発足したトランプ米政権は、「アメリカ・ファースト」を掲げ、貿易赤字削減を目 指して高関税政策を次々に打ち出している。日本に対しては、7月7日にトランプ大統領が石破茂 首相宛てに書簡を送り、8月1日から日本からの輸入品に25%の関税を課すと通告した。これは、4 月に公表された24%から上乗せされた税率であり、自動車(25%)や鉄鋼・アルミニウム (50%)への品目別関税とは別枠で課されるものだ。  日米貿易交渉は、トランプ政権の強硬姿勢により難航している。トランプ氏は「アメリカは世 界中の国から金を奪い取られ利用されてきた」と主張し、日本に対して貿易障壁の撤廃を強く要 求。日本の自動車産業や部品メーカーは、既に4月から課されている10%の一律関税に加え、新た な関税の影響に直面しており、コスト増が懸念されている。 日本の経済界では、関税交渉が長期 化し、日本企業がさらなる打撃を受ける可能性が懸念されている。  このような中、中国がこのタイミングで日本産牛肉の輸入再開を決めた背景には、単なる経済 的思惑だけでなく、地政学的な意図がある。中国は、トランプ政権による高関税政策に直面して おり、4月には中国からの輸入品に最大145%(現行では30%に引き下げ)の関税が課されるなど 、米中間の貿易戦争が激化している。 中国も報復として米国製品に125%の関税を課す方針を表 明したが、5月にそれぞれ115%税率を引き下げることで合意し、今日に至っている。  この米中貿易摩擦のさなか、中国が日本との関係強化に動くのは、戦略的な意図が透けて見え る。中国は、米国との対立が深まる中、日本を自陣営に引き込むことで、日米同盟に揺さぶりを かけ、トランプ政権への圧力を間接的に強めようとしている。Xの投稿でも、「中国のしたたかさ 」「日米関係を悪化させる策略」といった声が上がっており、タイミングの意図を疑問視する意 見が目立つ。  日本産牛肉の輸入再開は、中国にとって経済的メリットも大きい。中国国内では高級食材への 需要が高まっており、日本の高品質な和牛は富裕層を中心に人気がある。日本の牛肉輸出額は 2024年に前年比10%あまり増の648億円を記録し、米国向け輸出が中心だったが、トランプ関税 による米国市場の不確実性が高まる中、中国市場は新たな輸出先として魅力的な選択肢となる。 中国側は、日本との協定を通じて経済的な結びつきを強化し、日本企業に米国市場以外の選択肢 を提供することで、日米関係の間に楔を打ち込みたい狙いがある。  中国の動きは、日本にとって経済的な機会であると同時に、外交上の難しい判断を迫るものだ 。米国との同盟関係を維持しつつ、中国との経済協力を進めることは、綱渡りのような外交手腕 が求められる。仮に、中国との経済関係を再び強化していったとしても、台湾や尖閣の問題で中 国との政治的緊張が高まれば、そういった経済・貿易分野はすぐに経済的威圧の対象となる。日 本としては、中国が常に何を考えて日本に接近しているか、戦略的に考える必要がある。

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2025.07.15

女性客が「日高屋で飲(や)ろうぜ」で業績ウハウハ
女性客が「日高屋で飲(や)ろうぜ」で業績ウハウハ

 熱烈中華食堂・日高屋を運営するハイデイ日高は、2025年2月期決算で、売上高556億円、純利益41億円と、共に過去最高を記録した。 同社の青野敬成社長は、メディア向け発表会の席上、好調な業績の理由に、コロナ禍が明けて客が戻ってきたことを挙げた。 また「女性同士が飲み会に利用したり、子供連れの家族が食事に訪れたり、客層が変わってきている」とコメントした。これは、かつての男性中心の顧客層から年齢、性別関係なく、より多様な層へと広がりを見せていることを示している。 いまや客全体の35%が女性だという。BS-TBSの人気番組「町中華で飲(や)ろうぜ」に登場する女性タレントが、真昼間からビールなどなんでもござれで、ガンガン飲ることへの影響が大なのだろう。 「女性客増の背景には、2020年のオリンピックを機に東京都内の喫煙ルールが変わり、店舗が完全禁煙化(一部喫煙ルーム設置)されたことが挙げられます。たばこの煙を気にして来店を控えていた女性客や家族層が新しく入ってくるようになったのです」(飲食業界ライター)  鉄板支持層の男性客のつなぎ止め策も実施する。7月4日から8月下旬にかけて「日高屋」全店で「生ビールvsハイボール祭」として両ドリンクを通常価格から20円値下げするキャンペーンや砂肝を使った期間限定メニュー「コリ旨!砂肝」を210円で販売するなどの「ちょい飲み」層へのサービスを打ち出したのだ。 関東に422店を展開する日高屋が、この夏のキャンペーンを通じて、どのような賑わいを見せるのか、今後の動向に要注目だ。

香港国家安全維持法の施行から5年 香港はどうなっているのか
香港国家安全維持法の施行から5年 香港はどうなっているのか

2020年6月30日、中国政府は香港国家安全維持法(国安法)を施行した。この法律は、国家分 裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を禁じる内容で、香港の政治・社会状況を一変させ た。2019年から2020年にかけての激しい抗議デモや治安当局との衝突は記憶に新しいが、5年後 の2025年、香港は大きく変貌している。 抗議デモの終息と「中国化」の進行  2019年、逃亡犯条例改正案に端を発した大規模な抗議デモは、香港の若者や民主派を中心に自 由と自治を求める運動として世界の注目を集めた。しかし、国安法の施行により、これらの運動 は急速に沈静化した。国安法は曖昧な条文で広範な行為を規制対象とし、最高で終身刑を科す可 能性があるため、市民の言論や集会の自由は大きく制限された。デモ参加者や民主派の活動家は 逮捕され、著名な活動家やメディア関係者の多くが投獄または国外へ逃亡した。  現在、香港の街頭では反中国的なスローガンや抗議活動はほぼ見られなくなった。かつての「 光復香港、時代革命」の叫び声は過去のものとなり、公共の場での政治的発言は自己検閲される ようになった。香港政府は国安法を活用し、民主派の政治団体やメディアを解散させ、独立系の 新聞社「蘋果日報(Apple Daily)」も2021年に閉鎖に追い込まれた。これにより、香港の報道の 自由度は急落し、国際的な報道自由度ランキングでも大幅な後退が見られる。  さらに、教育現場でも「中国化」が進んでいる。学校のカリキュラムは中国の歴史や価値観を 強調する内容に改編され、愛国教育が強化されている。若者たちがかつて掲げた民主主義や自由 の理念は、公式な場ではタブー視されるようになり、香港のアイデンティティは中国本土のそれ に近づいている。 市民の海外移住と人口の変化  国安法の施行後、香港市民の海外移住が急増した。特に若者や高学歴層、専門職の人々が英国 、カナダ、オーストラリアなどへ移住するケースが目立つ。英国は2021年にBNO(英国国民海外 パスポート)保有者向けの特別ビザ制度を導入し、数十万人の香港市民がこれを利用して移住し た。  一方、香港への中国本土からの移住が増加している。中国政府は香港への経済的統合を進める ため、本土からの投資や人材流入を奨励している。香港の住宅市場やビジネス環境は本土出身者 にとって魅力的であり、新たな移民が香港社会に新たな影響を与えている。しかし、これにより 香港独自の文化や広東語の使用が希薄化し、市民の間でアイデンティティの喪失感が広がってい る。 経済と国際的地位の変容  香港はかつてアジアの金融ハブとして繁栄したが、国安法施行後の政治的抑圧は国際的な信頼 を揺らがせた。多くの外資系企業は香港での事業継続に慎重になり、一部はシンガポールや東京 へ拠点を移した。香港証券取引所は依然として重要な市場だが、投資家の間では地政学的リスク への懸念が高まっている。  それでも、中国政府は香港を「一帯一路」構想や大湾区計画の要として位置づけ、経済的な中 国化を推進している。本土企業による投資やインフラ開発が進む一方で、香港の経済構造はます ます中国依存を強めている。この結果、香港は国際的な金融都市としての独自性を一部失いつつ あるが、中国経済圏内での役割は強化されている。 社会の分断と沈黙の文化  香港社会は現在、深い分断を抱えている。国安法に反対する市民は声を上げることが難しくな り、沈黙を強いられている。一方で、中国政府を支持する層や現状を受け入れる市民も存在し、 意見の対立は家庭や職場での摩擦を生んでいる。ソーシャルメディア上でも、国安法違反を恐れ て政治的発言を控える傾向が強く、かつての活発な議論は影を潜めた。  若者たちの間では、将来への不安が広がっている。自由を求めて海外移住を考える者もいれば 、香港に残り現状に適応しようとする者もいる。しかし、共通するのは「香港らしさ」が失われ つつあるという感覚だ。広東語の使用が減り、中国本土の文化や価値観が浸透する中で、香港の 独自性が薄れていくことに、多くの市民が複雑な思いを抱いている。 香港の未来  国安法施行から5年、香港は中国化の道を突き進んでいる。かつての自由で多様な都市は、政治 的抑圧と人口流出により大きく変貌した。国際社会は香港の状況を注視し続けているが、中国政 府の影響力は揺るぎない。香港市民の多くは、新たな現実の中で生きる道を模索しているが、そ の過程で失われた自由とアイデンティティを取り戻すのは容易ではない。香港の未来は、中国と の関係性や国際社会の動向に大きく左右されるだろう。金融ハブとしての地位を維持しつつ、独 自の文化と自由をどの程度守れるのか。2025年の香港は、その岐路に立っている。

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2025.07.12

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