政治•経済 試されるエネルギー安保:ホルムズ封鎖と脱中東への道標
試されるエネルギー安保:ホルムズ封鎖と脱中東への道標
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2026/04/03

 2026年2月末、米国・イスラエル軍によるイラン攻撃とそれに続くハメネイ師の死去という激震は、中東情勢を一気に沸騰させた。これに対するイラン側の報復、そしてホルムズ海峡の「事実上の封鎖」は、日本のエネルギー安全保障が抱える致命的な脆弱性を白日の下にさらしている。日本が輸入する原油の約9割以上が同海峡を通過するという異常な現状において、我々は今、石油の「脱中東」をスローガンから生存戦略へと昇華させなければならない。 

まず直視すべきは、日本が長年掲げてきた「調達先の多角化」がいかに困難を極めてきたかという現実である。かつての石油危機以降、日本は東南アジアや南米、ロシアなどからの調達を模索したが、品質やコスト、産油国の内情などの壁に阻まれ、結果として中東依存度は93%にまで上昇した。この硬直した構造を打破するためには、従来の市場原理のみに頼る調達ではなく、日米首脳会談で調整が進むアラスカ産原油の増産協力のように、強力な外交的・政治的枠組みを通じた非中東圏での権益確保が不可欠となる。北米やアフリカ、豪州といった代替供給源との長期契約を加速させ、有事における「第二、第三の航路」を実効化することが急務である。

同時に、石油そのものへの依存を低減する「エネルギーミックスの再定義」も待ったなしの状態にある。現在、日本の発電部門における石油の割合は約7%まで低下しており、電力供給そのものが即座に崩壊する事態は免れている。しかし、産業用燃料や物流を支えるガソリン・軽油は依然として石油が主役である。この分野において、再生可能エネルギーの導入加速はもちろんのこと、水素や合成燃料(e-fuel)といった次世代エネルギーへの転換を、単なる脱炭素の文脈ではなく「安全保障の盾」として強力に推進すべきである。  

加えて、緊急時における「備蓄の質」の再考も求められる。政府は2026年3月、ホルムズ海峡の封鎖を受けて国家備蓄の放出を決定したが、備蓄日数の多さに安住してはならない。専門家が指摘するように、放出プロセスの迅速化や、製油所の稼働維持といったサプライチェーン全体のレジリエンス(復元力)を強化しなければ、タンクの中に油があっても国民の手元には届かない。

ホルムズ海峡の緊迫は、日本に「中東依存」という宿痾を克服するための最後通牒を突きつけている。供給源の抜本的な多角化と、化石燃料に依存しない社会構造への転換。この二段構えの改革を完遂することこそが、地政学的リスクに翻弄されない強靭な国家を創る唯一の道である。

(ジョワキン)

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