2026/03/29
日本経済が長期停滞からの脱却を模索する中で積極財政という言葉は政治の中核概念として繰り返し用いられてきた。高市早苗政権、石破茂政権、そして岸田文雄政権の三者の予算を比較すると日本の財政運営が拡張から選別、そして戦略へと変容していることが見えてくる。
まず岸田政権である。同政権は「新しい資本主義」を掲げ分配と成長の両立を標榜した。コロナ禍対応や物価高対策として大型補正予算を編成した。その結果として歳出規模は拡張したがその内実は給付金や補助金といった短期的措置が多く構造的な成長投資は限定的であった。財政規律にも一定の配慮を残し、積極財政とは言いながらも実態は景気下支え型の限定的拡張にとどまった。
次に石破政権は地方重視・防災重視の色彩を強め、公共投資やインフラ整備に一定の重点を置いた。一見、積極財政の強化に見えるが財源論や歳出の効率化にも強い関心を示し無制限な国債発行には慎重であった。よって、石破政権の特徴は選別的積極財政である。必要分野には厚く配分するが全体としては財政規律との均衡を崩さない姿勢が際立った。
これに対し高市政権はより明確に積極財政へと舵を切った。防衛費、エネルギー安全保障、半導体・AIといった戦略分野への大規模投資を打ち出し、財政出動を成長戦略の中核に据えている点が特徴的である。単なる景気対策ではなく国家競争力の再構築を目的とした支出であり規模も過去政権を上回る水準にある。従来型のばらまきとは異なり高市政権は複数年度での投資管理や成長効果を見込んだ財政設計を志向し、債務残高の制御にも一定の意識を残している。したがって、その本質は単純な拡張ではなく戦略投資型の積極財政と位置付けるべきであろう。
三政権を総合的に比較すればその違いは明確だ。岸田政権は短期安定型、石破政権は選別均衡型、高市政権は成長戦略型である。積極財政の度合いという観点では、岸田 < 石破 < 高市、という順序が妥当である。重要なのはその財政支出が将来の成長と税収に結びつくかどうかである。積極財政はそれ自体が目的ではなく手段にすぎない。もし投資の選択を誤れば残るのは膨張した債務だけである。高市政権による成長投資によって財政拡張と規律維持を両立できることが期待されている。
(坂本雅彦)
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