高市早苗内閣総理大臣は、3月18日から3月20日までアメリカを訪問し、ワシントンにおいて、トランプ大統領をはじめ、トランプ政権の面々と日米首脳会談等を行った。ホワイトハウスに到着するなり、握手で出迎えようとしたトランプに駆け寄り、ハグするパフォーマンスを見せた。東アジアの国家元首としては珍しい振る舞いだから海外メディアも取り上げていた。若い頃、アメリカに渡り、著名なリベラル・フェミニズムの政治家のパトリシア・シュローダー下院議員の事務所で働いたこともある首相にとっては、それほど奇異な振る舞いではないかも知れない。 好意的に解釈すれば、ここはトランプに取り入るのが御国の為、と真面目に考えた上でのことかも知れない。本人はジュリアスシーザーとの会見に臨んだクレオパトラの心境かも知れないが、むろん高市はクレオパトラではないし、トランプもシーザーではない。 ホワイトハウスのレセプション会場でノリノリに踊る高市首相 もともと高市首相には女を武器するところがあった。首相の背がもう少し高ければ、ハグだけでなく、トランプにキスしかねなかっただろう。 古い永田町の政治家ならよく知っていることだが、1996年に高市首相が新進党から自民党に鞍替えした際に、自民党の重鎮への取り入り方が凄まじく、永田町に娼婦がいるといった怪文書を撒かれたこともある。テレビ番組でジャーナリストの田原総一朗から「あんたのように下品で無知な人にバッジ付けて靖国の……」と罵倒されもした。戦中派の田原にとって、森喜朗のような右派政治家に取り入ろうとした若かりし高市首相の姿に我慢がならなかったようだ。田原に謝罪会見をさせた日本連合の元総裁から筆者が聞いた当時の真相である。 とは言え、概ね今回の首相の訪米は、国内では高評価がつけられている。辛口の外交評論家の佐藤優(元外務官僚)でさえ、満点に近い評価をつけていたぐらいだ。 「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけだ。私は諸外国に働きかけて、しっかりと応援したい」の発言も、プーチンのような猜疑心の強い相手なら嫌味に受け取られそうだが、トランプならそのまま喜んでくれる。そもそも戦争を始めたのは、ドナルドなのだから、戦争を止めて平和を回復するのもドナルドにしかできないし、首相の発言に間違いはない。 だが、あえて言わせてもらうと、今回の高市外交の成功は、アメリカをイランとの戦争に深入りさせる決定打になってしまったのではないか? と懸念されるのだ。 高市首相がスペインのサンチェス首相のように「これは不必要な戦争だ。我々は協力できない」と言ったらどうなったか。 もちろんトランプは激怒したに違いない。2025年3月1日のゼレンスキー・トランプの会談のように、首相はアメリカで非難されただろう。 だが、トランプに美徳があるとすれば、この人物は根に持たないことだ。あれだけ罵倒したゼレンスキーのウクライナにさえ、状況が変わればドローン技術の支援を求める厚顔ぶりだ。交渉中に最高指導者を暗殺した交戦中のイラン政府にさえ、どこまで本気かわからないにしろ、停戦交渉を呼び掛けるぐらいだから、並みの神経の持ち主ではない。 トランプも「一撃しさえすればイランの革命政府はすぐにも倒壊します」とイスラエルのネタニヤフ首相や、ユダヤロビーに焚きつけられて始めた戦争が意外に長期化しそうなので、後悔していた。日本の高市までが非協力を表明したら、早期終結を真剣に考えていた可能性が高い。同盟国の非協力を理由に戦争の停止を決意したと思われるのだ。高市首相は平和の女神として世界中から賞賛されたことだろう。アメリカ国内でも時間がたてば「A true friend would advise you.」(本当の友達ならばあなたに忠告するだろう)と、考えてくれたに違いない。 アメリカ政府内で戦争継続を望んでいる勢力は「ホルムズ海峡の封鎖が続けば、アジアやヨーロッパの非産油国の同盟国は、我々に泣きつくしかなくなる。それまでの辛抱です」トランプを焚きつけている。 困ったことに、石油を国内で自給できるアメリカや、ホルムズ海峡に依存していないイスラエルは、戦争が長期化しても戦争経済を維持できる。 国内メディアの評論家や解説者たちの「アメリカでもガソリン価格が高騰して支持率も落ちているから、トランプも停戦を望んでいるはず」といったコメントは、気休めか、希望的観測と思うべきで、イラン戦争の長期化と、石油輸入ルートの長期間の遮断という最悪の状況を想定して、その対処を今のうちに考える必要があると言いたい。 ホワイトハウスのバイデン大統領の肖像画?を見て笑う首相 3か月以内にイラン戦争が終結すれば杞憂になるが、戦争が続くならば、イランを支援する大国が現れる、と警告しておこう。 バイデン前大統領だけ自動署名機の写真が飾られていた (青山みつお) オバマ米大統領にキスされるのを嫌がったミャンマーのスー・チー女史