連載『俺の名前は三遊亭はらしょう』vol.83『アンツル~その2』
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2026/02/01
昭和の演芸評論家『安藤鶴夫』を知る方に話を伺うことができた。
所が、
「アンツルさんは落語のことあまり知らなかったと思うよ」
と首を傾げられた。
聞けば、評論家にしてはしょっ中聴きに来なかったのだという。
「では、あの観察眼は何なのでしょうか?」
そんな俺の疑問に、その方はあっさりとこう答えた。
「作家だから、うまく書けたんだろうね」
なるほど。確かにそれはあるかもしれない。
当時は、動画や音源の収録などが一般的ではない時代だ。そこに、生の落語を記録する手段は速記のみ。さらに評論となると、会場の空気を読者にどう伝えるかは事実よりも、真実。アンツルの視点がすべてである。少ない情報を膨らませエンタメ化していたのだとしたら、まるでアンツル本人が芸人みたいな人だったのではないか。
アンツルの本によって、この先も昭和の落語の国の空気はきっと残っていく。
アンツルの描いた落語の世界は浮世絵のようなものだったのかもしれない。
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