政治•経済 分裂するアメリカの保守派とトランプ後のアメリカ
分裂するアメリカの保守派とトランプ後のアメリカ
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2026/01/26

 1月にアメリカの世論調査は、トランプ政権の支持率が過去最低を記録したと伝えており、支持率と不支持率の差が広がり、このままでは11月の中間選挙で共和党の大敗が予想されている。

 

トランプの支持者には、Qアノンのような極右的な陰謀論者が多く存在する。彼らは、トランプを米国の政治家やメディアを操っている悪の組織『ディープ・ステート』を倒す為に神から遣わされた救世主だと信じてきたのだ。

 

 ところが、セレブ相手に少女買春組織を運営、少女への性的暴行や人身売買容疑で逮捕され、拘置所内で謎の自死を遂げたジェフリー・エプスタイン事件の記録『エプスタイン・ファイル』に対するトランプ政権の不明瞭な対応が、トランプの岩盤支持層MAGA派を動揺させ、トランプ政権に疑義を挟む者が増えている。

 

 またエプスタインがユダヤ系だったことから、反ユダヤ感情やユダヤ陰謀論が、アメリカの保守派に広がりつつある。ディープ・ステートは、ユダヤ人に操られた政治家やメディアのことであり、トランプもまた、その片割れだと思われたのだ。

 

 親イスラエルとされるアメリカのキリスト教右派も、最初からユダヤ人に好意的だったわけではなかった。アメリカのキリスト教徒にも、ヨーロッパのキリスト教徒と同様に根強い反ユダヤ感情があったのだ。

 

 ウッドロウ・ウィルソンが大統領だった1915年8月16日、白人少女のレイプ殺人事件で有罪判決を受けたユダヤ人が減刑されたのに腹を立てた暴徒が、刑務所から後にえん罪とされた被疑者を拉致してリンチした「レオ・フランク事件」が起きた。同事件は、反ユダヤ主義に対抗する「名誉毀損防止同盟」(ADL)が創立される契機となっている。

 

白人少女のレイプ殺人容疑で裁かれたユダヤ系アメリカ人・レオ・フランク

 

 アメリカ人の親イスラエル感情は、ユダヤ系メディアの宣伝活動の賜だった。イスラエル政府の支援で映画『エクソダス』(Exodus)が1960年に制作され、ユダヤ人は「自由と独立のために戦う勇敢な市民」、イスラエルは「ホロコーストの惨禍から不死鳥のように蘇ったリベラルな民主国家」のイメージを広めた。

映画「栄光への脱出」(1960)

 

 だが、ガザの惨状や、ヨルダン川西岸のパレスチナ人の土地を浸食する入植者の存在が認識されるようになった結果、そうしたイメージは修正されつつある。イスラエルは、リベラルな民主国家から、アパルトヘイト(人種隔離・差別政策)国家のように見られるようになった。

 

トランプの政策に大きな影響を与えるユダヤ系のスティーブン・ミラーが、白人至上主義に同調し、国際法よりも弱肉強食の論理を主張するのは、世界が弱肉強食のルールで支配されれば、パレスチナ問題も目立たなくなるからだろう。

 

 だが、トランプ政権には、大統領就任式でナチス式敬礼をして物議を醸したイーロン・マスク元大統領上級顧問や、副大統領のジェームズ・ヴァンスのように、ユダヤ系に警戒心を持つ者もいる。

 

彼らをまとめているのがトランプだが、トランプ後にアメリカの保守派が分裂すれば、アメリカの政治は今以上に予測の付かない情勢になる。

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